第3話 幻想世界から引継ぎ
薄暗い部屋の中、パソコンの画面だけが唯一の光源であり、パソコンにはベットの枕元へと繋がるケーブルが刺さっていた。本来、VRゲームはVRキット単体でアップデート及び通信機能が付いているので普通パソコンにわざわざ接続する必要はない
俺がなぜVRキットにパソコンを繋げているかと言うとパソコンのHDDに入っている幻想世界のアカウント情報を引き継いでいるからである。
wi-fi通信でVRキットへ送ってもいいのだがなんせ幻想世界のデータが膨大で50GBほどにも及ぶため、家電量販店で高速通信ケーブルを購入し現在に至る。
一週間前、幻想世界のゲーム配信が終了する前に運営から届いた一通のメール、現在入手困難であるVRキットと幻想世界のゲームパッケージ、もともとVRキットが高いのに加えて、幻想世界は全国各地売り切れ中でありネット通販サイトを見てもただえさえ高いVRゲームソフトが販売価格の数倍高い値段で取引されているのだ。
今回購入したVRキットFW[ファンタジーワールド]仕様は初期ロット五万台あり、しかも定価20万円という高額でありながら発売開始30分で予約が上限に達した。
いくら割引があるとといえども高いことには変わりない、一応バイト代を無駄遣いで消費していないため買えないことはないが躊躇してしまう値段である。
といってもこの機会を逃したらやる機会なんて当分来ないだろうと思い立ち幻想世界終了してから二日後に注文をして今日の夕方届き、そして今膨大なアップデートと引継ぎが終わったところだ。
夕飯も食べ、大学の課題も終わり洗濯や掃除も全て終えてある。あとはVRキットを頭に装着するだけなのだが・・・・
「仮想世界か・・・」
VRゲームは総じて現実世界と同じように手足体を動かして体感的な操作ができる。言ってしまえばこれからプレイする
今までやってきた幻想世界の操作性はいろんな人から不評ではあったが俺としてはとても使いやすかったし愛着もある。ただ戸惑いがあるだけなのだ。
だがしかし、俺の知っている幻想世界は終わった。今あるのは巷で有名な幻想世界のVR版
「まぁ、せっかくだから楽しもうか」
意を決して俺はVRキットを自分の頭に装着した。初めての仮想世界の体験だから不安も期待も同じ割合である。
幻想世界ではとにかく人が少なくて初めの町で何人かあった程度だ。装備も充実し新たな大陸へと渡ってからはほとんど戻ることもなく出会ったプレイヤーは皆無となった。
プレイヤー同士が戦うPvPコロシアムもあるにはあるのだが実装当初にランクを上げ過ぎたせいか戦えるのは最初に配備されているNPC軍団、一応三階級下のリーグに1リーグ1200人の中唯一のプレイヤーを見かけたことはあるがそれから一週間後のランク更新時には姿を消していた。
という具合で他プレイヤーとの協力プレイに非常に興味がある。協力プレイだけならNPCや召喚獣ともできるが一々号令や命令をしなければならないので本当の意味で協力しているとは言えないからだ。
「では行くか・・・・ゲームスタート」
言った瞬間、見慣れた天井は暗転した。
「ここは・・・」
気が付けばギリシャの神殿のような石造りの建物の中にいた。
俺の恰好は全裸・・・ではさすがにないが中々に露出度の高い服装だ。まぁ、野郎が露出高い服を着ても一銭の価値も無いのだが
『ファンタジーワールドの世界へようこそ、神はあなたを待っていましたよ』
カツカツと足音を鳴らしながらやってきたのは昔画面越しで見たことある天使だった。
幻想世界では最初のキャラクターメイキングと初めの町で行われる始まりの町の情勢によって難易度が変わる謎チュートリアルでのみ出会うことができる。あ、確か去年行われた期間限定イベント『五神の塔』を完全クリアーしたときに眩しすぎて見えない神様と共にいた気がするが
『アカウント情報を取得中・・・・あなた様は過去の世界で冒険していたペガサス様ですね?神様から時渡りの許可が出ていますがどうなさいますか?』
前世?時渡り?俺の幻想世界でのプレイヤー名が出るあたり前世は幻想世界でいいのかな、設定としては
所々変な設定を持ってくる運営は
「はい、時渡りをお願いします」
もちろん俺は時渡りをする。折角引継ぎができるのだ。やるに越したことはない幻想世界では作り切れなかった白騎士シリーズもあるしね
『了解しました。引継ぎということでキャラクターデータ、装備、アイテム、称号など引継ぎを行います。本当によろしいですか?』
最後に俺の目の前にYES/NOが表示され、迷わずYESに手をかざした。
『引継ぎは完了しました。ではこれから始まるFWの世界を存分にお楽しみください』
そして天使はニコッと笑う、決して笑うことのなかった天使が笑う姿に若干の驚きを隠せないまま、魔法陣が俺を中心に広がり回り始めそして光り始めた。
行先は始まりの町、行くのは何年ぶりだろうかやはりプレイヤーは多いのだろうか、様々なことを予想しながら俺は目を閉じ転移を待った。
一瞬の浮遊感の後、一気に重力を感じた。目を開けて自分の腕を見てみれば幻想世界で装備していた黒騎士シリーズが灯火の光に照らされる・・・・ん?灯火?
「おい、まじか・・・・」
なにやら見覚えのある洞窟を出てみると、外は分厚い暗黒に包まれあらゆるところで雷が落ちていた。まるで魔界
遠くには山と同じぐらい大きい単目巨人族最強格『古の巨人』が闊歩していた。うん、ここはゲームを初めて最初に行き着く始まりの町じゃねぇわ
「引継ぎっていっても全部引き継ぐんかい」
多少の特典があって少しだけ有利な状態から始まるかと思っていたため、驚きを隠せない
だが現実はいや仮想世界なんだけどまぁ、現状は幻想世界で居た場所と全く同じ、
仮想世界は時の間のようなゲームの世界の一日は現実世界の一時間に相当するため、ここまで来るのに何年かかるんだ。
今回のFWでは幻想世界ではなかった空腹度なるものもあり兵站もしっかりとしないといけないから遅くなるだろう
「あ、PvPコロシアムに行けばいいじゃん」
確かに暗黒大陸から始まりの町へ行くのは装備を整えた俺でもかなりの時間がかかるからすぐにとは無理だけどPvPコロシアム、及びギルドホームは別空間にあり今すぐ飛ぶこともできる。
「まぁ、俺から始まりの町へと行くとして、まずはコロシアムから行こう」
そこまでして始まりの町に行きたいのかって言われそうだけど俺としてはそこまでして他プレイヤーに会いたいのだ分かってくれ、誰もいないけど
俺はコロシアムへと転移する結晶を取り出し呪文を唱える。
「我を同志がまつ戦いの地へを導け!」
幻想世界の操作方法である魔法の呪文はコマンドではなくタイピングで呪文を打つのだがその呪文はこのFWでも同じらしい
さて、コロシアムにプレイヤーはいるのだろうか
またも俺の意識は暗転した。
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