起章 《入学!中央軍事学校》





中央軍事学校とは、中央、北西、南部、カフカス、沿ヴォルガ、ウラル、シベリア、極東の8つある軍事学校で、首都にある学校である。毎年の定員数は500名、ABの上位約200、CDの下位約200、そして補欠のE約100名が入学を許される。これは他の学校も基本同じである。だが、中央軍事学校は2点だけ他の学校とは違う点がある。一つ目はSクラスの設置である。他のはAまでである。二つ目は特殊作戦部隊科である。これも中央軍事学校のみ設置している。この学科は普通は選択することが出来ない、その代り極秘に指名されるのだ。



入学式…


「これより、皇立中央軍管区付属軍事学校の入学式を開始いたします」


入学式の席順は前方から表彰者…普段は五人だが、今回は異例のため七人に増員、その後ろはSクラスの六人、その後ろはAクラスで、最後列はEクラスとなっている。


「初めに、生徒会会長挨拶。生徒会長、マリア・イ・コンスタンティア、お願いします」

フワフワとカールした藍色のロングヘアーの美少女が壇上に立った


「新入生の皆さんご入学おめでとうございます。我々、生徒一同はあなた方の入学を心より歓迎いたします・・・・




「次に、新入生祝辞。新入生総代、アリシア・シェ・ウィンコット。よろしくお願いいたします」

アリスが壇上に立ち祝辞を読み上げる




「引き続きまして、試験優秀賞授与式に移ります。受賞者はご起立をお願いいたします」



「入学試験、第五位、アントニウス・ル・カッサンドラ・ウィンスター」


「はい」

名前を呼ばれ、空色の髪をしたイケメンはステージ上り、壇上前に立ち、生徒会長からから賞状を貰った。


「おめでとう!頑張りましょうね!」

男は顔を真っ赤にしていた


「入学試験、第四位イズミ・カセン」


「はっ、はい!」

前髪で顔を隠した小柄な少女が同じように賞状を受け取り、席につく。ちなみに前髪の奥はミラーレンズを着けた眼鏡をかけてるため、表情を一層見ることが出来ない。


「入学試験、第三位、ヴィクトーリア・ヒ・サンドニア」


「はいっ!」

女性にしては大柄な赤髪ポニーテールの少女も同じく賞状を受け取る


「入学試験、第二位ユリウス・アンぜルム」


「…はい」

ユリウスはため息を吐きながら同じようにする


「そして、入学試験、第一位エレオノーラ・ル・ユースタシア、アリシア・シェ・ウィンコット、ユリア・アンゼルム」


「「「はい!」」」


生徒会長はニコニコしながら賞状を手渡す

「よく頑張りましたね!これからも頑張りましょう!」


その後、いろんな挨拶を終え、入学式が終了した。


そして、アリスはイライラしていた。なぜなら、Sクラスの席が一つ空いていたのだ。勿論…


「お兄様~なぜ、妹の晴れ姿を見なかったのですか~」

この場にいない兄を恨む妹であった。




時を少しさかのぼり、入学式…


俺は屋上でタバコを吸っていた。ちなみに、会場の様子は映像でリアルタイムで見ている。

頭上から声が響く


「お~い、新入生は入学式に出ないといけないぞ。ついでに、校内は禁煙だぞ。しかも屋上は昼休み以外は入るのは禁止だし、君が吸ってるのは魔薬だな。校則以前に法を順守しなきゃならないな」


俺は頭上を振り向くと真っ黒な服を着た。真っ黒な髪をストーレートに太ももまで伸ばした女性がいた。しかも髪は全てきれいに切り揃えられている。

「よく、俺を認識することが出来たな。俺を認識できるのは全世界を見渡しても一握りだけだぞ」


女性は嗤う

「その鬱陶しい鈴の音をやめなよ。あとはこの臭い臭い。あと目がチカチカするよ」


俺はポツリと

「親衛隊か…」


女性は嗤う

「先輩と呼びなよ~後輩~これでも現役の学生だぞ」


俺はタバコを深く吸う

「フ~、あとそこら辺にいる親衛隊の奴らも出て来い」


覆面をした男女が5人出てくる


女性はシルバーアクセサリーを出してもてあそぶ

「初めまして、後輩君…いや、クロード・ウィンコットと呼べばよいのかな?私はホノリア・イルディカ・グズル」


俺は眉をひそめる

「グスル…聞きなれない姓だな。東方の異民族出身か…」


ホノリア先輩はクスリと笑う

「グスル族のイルディカという女性の娘ホノリアという意味だ」


「女性上位の民族か」


ホノリアは面白そうに顔をゆがめる

「いや、どこの部族も男性優位だよ。ただし、自分は父方を名乗ることが出来ないのでね」


俺はピーンと来た

「選帝侯カーン家の一族か」


ホノリアは困ったように言う

「うーん、カガンが正しいのかな?帝国はハーンと呼ぶし、極東はハンと呼ぶね…私は今の…こっちではカーンか、カーンの70番目の妻の娘なんだよね」


「奥さんは何人いるんだ?」


「さぁ、200は確実にいるよ。この間だと9歳の女の子が妻となったね」


俺は冷や汗をかく


「で、わざわざシベリアから中央まで来た理由は」


ホノリアがふふんと笑う

「特殊作戦部隊科に入りたかっただけだね…ちなみに史上初の満点をを取ったのは私だ。これでも4年生だ。よろしく後輩君」


ホノリアは続ける

「そこの子たちも同じ科の生徒だ。規則上顔を隠さないといけないのでね。そこの男2人と女1人のペアは3年生、そこの男女一人ずつのペアは2年生だ」


俺は聞く

「先輩は顔を隠さなくてもいいのか?」


先輩は胸を張る…デカい

「私は顔がわれてるからな。身にかかる火の粉は自分で掃える」


会場から拍手が響く、どうやら終わったようだ



「我々は今回お前に託された任務を助けるよう。ドーラ様から命令された」


「ドーラ?」


「上級親衛隊の背の高い女性だ」


ああ、俺を連れてくれたあの女性か…


「任務とは皇女の護衛か?」


ホノリアは首を振る

「皇女が入学したという情報と護衛の情報はもう流したぞ。いまごろ世界を駆け巡ってることだろう」


俺は無表情にいう

「これからよろしくお願いいたします。先輩」



入学式会場…


ここは3階VIPルームである


アナスタシアとドーラが座っていた


アナスタシアが微笑む

「エレナちゃん入学おめでとう。これからの試練頑張ってね♪これから大変になるんだろうなぁ~楽しみ」


アナスタシアはドーラの方を向く

「ねぇ、アレクサンドラ・・・・・、自分の娘の晴れ姿見て何を思う?」


ドーラは抑揚のない声で言う

「意外と何とも思わないんだな…あの死で私は闘争の渇望以外の感情が抜けてしまったようだ」


アナスタシアはフッと笑う

「前までは…私と一緒に寝たのに最近はそっけないのね」


ドーラは無視する

「娘の情報は裏にも流した。少し経つと彼女に危害を加えるものも出るだろう」


アナスタシアはドーラの覆面を取り…そこには痛々しい傷が走っていた…唇にキスし舌を差し込む。胸に手をあて優しく揉む




俺は<NovyiMir>と<SECT>から貰った資料に目を通す。


一枚目は学校に存在する派閥だ。派閥は中部、東部、南部、西部、北部の5つの貴族会である。

貴族会とは勿論、貴族が参加するサロン及び、自治組織であるが、最近ではほとんどの貴族会が平民を受け入れ始めた。

東部貴族会…貴族と婚姻して貴族位になった新興貴族で構成される派閥。メンバー全員が御曹司。金持ちということに鼻をかけ、貧しい生徒が多い西部貴族会とすごぶる仲が悪い。学校に多大な寄付を行ってるため、校内に特別に自分たちの寮を持っている。平民はお金持ちなら入会できる。代表は貴族会の中で唯一役職無し


南部貴族会…全貴族会中最多の構成員を抱える派閥。貴族よりも準貴族が多い。他の派閥よりもいち早く平民を受け入れたため、メンバーは皆お人好しな性格をしている。最近は授業料が払えない子の援助や、退学した生徒の復学を画策しており、学園外グループと緊密に連絡を取っている。メンバー数は全貴族会のうち45%を占める。代表は生徒会長


西部貴族会…スポーツ系のクラブのメンバーで構成される派閥。貴族は皆帯剣貴族出身。南部の次に平民を受け入れており、南部の次に、平民が多い。生徒の大半は奨学金を受けてるが、基本脳筋が多いため、頭があまりよくない。代表はクラブ連盟会頭


北部貴族会…成績上位のインテリ集団で構成される派閥。貴族は皆、法服貴族出身。東部と同時期に平民を受け入れた。頭脳こそが全てというコンセプトをとっているため、メンバーは皆マジメだが、固い。メンバーはほとんど、Aクラス出身。スポーツ系の多い西部貴族会とは仲がすごぶる悪い。代表は生徒会副会長


中部貴族会…元々一つであった貴族会の源流を組む貴族会。メンバーは皆伝統貴族、つまり霜の一族で構成される派閥。全貴族会の中では最も人数が少ない。皆血統主義者のため、常に平民を差別をしており、平民どころか人間の下位貴族の加盟すら認めてない。だが、皆貴族の自負があるためか、序列意識がとても激しく、貴族会の会則がガチガチに厳格であることは有名。基本全派閥と仲が悪いが、伝統的に南部とは物凄く仲が悪い。代表者は風紀委員長


その他の小規模のグループは、Eクラス出身で構成されるグループ、不良化したグループ、南部貴族会と仲が良い学園外のグループなどがある。


二枚目は学校の主要な執行委員たちのリストだ。

生徒会長 南部貴族会 3年 戦略参謀科 マリア・イ・コンスタンティア 公爵家


生徒会副会長 北部貴族会 3年 兵器研究開発科 イザベル・キ・ゾイ 伯爵家(父は宮廷伯)


クラブ連盟会頭 西部貴族会 3年 特殊部隊科 グスタフ・グ・ギリアン 大公家


風紀委員長 中部貴族会 3年 上級指揮科 テオドラ・リ・ウィンザー 王族


この四人は「四天王」と呼ばれており、家柄だけでなく個人の能力も高い。



俺はソファーに倒れこみ眼を瞑る。ここはいつものウィンコット邸ではない。ここは三重防壁の内側にある準市民区画にそびえ立つ3つの高層ビルの内、北部自治政府ビルと呼ばれるビルの中にある事務所の一つだ。



毛布が掛けられる


「ありがとう。シュルヴィア…」


屋敷のメイド長から専属メイドになったシュルヴィアは俺が目を瞑ってるのをいいことに微笑み、ネットリとキスをする



その時、扉が開かれる。二人の男性と二人の女性が入ってきた。黄金の四勢ゴールデン・カルテットと呼ばれる準市民区画の北部を支配する4つのマフィアの大幹部たちである。


ユーロピアに勢力を持つコーサ・ノストラのアンダーボス ダニエル・シュミット

支尼華(帝国東部)帝国に勢力を持つ三合会(トライアド)の香主 スウ・メイリン

中央アジア、中東、アフリカに勢力を持つソマリ・カルテルのボスの一人(ボスは三人いるらしい) アクレーボ

ユーラシア連邦全域に勢力を持つブラザーズ・サークルの大幹部、コードネーム「愛」 スカーレス・カラシャカ



俺は目を覚ます。

「もう時間か…」


四人は黙って頷く

この四人は元々メラの仲間であった。昨夜、自分はメラの弟子であり、六角の一人であることを伝え、従わない奴を殺したら、喜んで傘下に入ってくれた


俺はシュルヴィアに目配せをする。シュルヴィアは資料を四人に渡す。


「皇女が軍学校に入った。これで、安全な王宮から離れたということで、彼女を殺そうと画策するものが増えるだろう」


四人は黙って頷き、スカーレスが口開く

「私の傘下の娼館にそのような話がいくつか聞こえたわ」

金髪褐色のグラマラスな女性だ。服装は何故かベビードールで下着を履いていない…地味に俺を誘惑するな


俺は答える

「情報は全て俺に寄越せ。計画を潰そうとはするなよ。逆に手助けをしてやろうではないか。<演出家>のようにな」


その後、具体的な指示を出して解散し、スカーレスを奥の部屋に連れて行き、抱く。

その後、彼女は散々俺に泣かされ失神する



その後、俺は先程の四人の組織の資料を見ていた


ブラザーズ・サークル ビッグブラザーと呼ばれるボスを中心としてサークルと呼ばれるマフィアグループの連合。ビッグブラザーの懐刀として、内部粛正を行う「愛」、抗争を担当する「平和」、財務管理を行う「豊富」、諜報組織の「真理」の4つのサークルが大幹部として扱われている。スカーレスは「愛」のボスであり、ボスが女性のサークルを束ねて<セブン・シスターズ>と呼ばれる派閥を作っている。この地の主な財源は娼館の営業と人身売買


三合会 本国にいる九人の龍頭(ロントウ/ドラゴンヘッド)通称九頭竜(ナインヘッド・ドラゴン)によって運営される組織。スウは龍頭の一人ラウ・ターロンがボスの劉幇のナンバー4で式典を行う香主。元々は九頭竜の一人だったがラウに負けて傘下に入った。この地の主な財源は金貸しとカジノ


ソマリ・カルテル 中央アジアで取れた原料を中東の工場で精製し、ソマリ沖で各国に密輸する組織。ソマリランドは大小多くのカルテルが溢れ、凄惨な抗争を続けている。アクレーボは大カルテルのボスの一人、地元の抗争が激しすぎるため逃げてきた。この地の主な財源は魔薬(誤字ではない)の密売


コーサ・ノストラ 数百年前からユーロピアに存在する伝統のあるマフィア。数百年間、時の権力者に対抗し、操ってきた。裏切りを禁止する沈黙の掟オメルダが有名。現在のドンは病気のため、跡目争いが勃発しそうな雰囲気である。ダニエルはナンバー3にあたるアンダーボス。ここにくる前、現在の副首領ノウフェイスと副首領の座をを巡って争い、負けたためこの地に赴任した。この地の主な財源はみかじめ料の徴収(他のマフィアの建物も例外なく)、各店舗の用心棒、闘技場の管理及び胴元(三合会から利権を買った)、自動車レースの主催(これも買った)と胴元


現在北部は落ち着いているが、問題は南部だ。二つのマフィアとその他多くのギャングが勢力争いを行っている。二つのマフィア…コーザ・ノストラとヤクザは傘下に収めたが、他のギャングは従わないだろう



ああ、疲れた…明日から授業だが、俺は出なくても大丈夫だろう。教師と生徒は誰も俺を認識できないしな。


携帯端末が鳴る。メール512件、着信128件…全部アリスのだ…怒ってるだろうな…アイツの晴れ姿を生で見ず、しかも家に帰らないとわな



シュルヴィアがメイド服を脱ぎ、下着を脱ぎ、全裸となる。俺は先程スカーレスを抱いたからズボンしか身に着けてない。シュルヴィアは俺の上に乗り、俺の今宵の相手をしてくれるらしい。




俺は鳴り響く携帯端末を手に取る。画面は勿論、アリスだ。俺は通話を押し耳に当てる




「ごきげんようお兄様♪今すぐそちらに参ります♪」

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