間章 《私のお兄様♪》
皆さま…初めまして。私はアリシア・シェ・ウィンコットと申します。
元々は、ウィンバードという姓でした。昔、公爵である父が娼館で見つけたとても美しい女性…私の母ですが…と愛を育み、私を妊娠しました。その後、屋敷で妾として勤めておりましたが、私を出産と同時に行方不明に、父は愛してたためか、大変なショックを受けておりました。その後は、妾の子、不義の子などと、義理の母達、兄弟姉妹に迫害される日が続きましたけど父は私を守ってくれました。私は彼らと関係を一刻も早く断つため必死に勉強しました。ある時、勉強の合間に庭を散歩してると、眼の前に美しい女性が出て来たのです。
女性は私にこう言いました
「お久しぶりね…私の娘よ。長らく待たせたわね」
勿論、私は驚きました。父の書斎にあるたった一枚しかない、お母様の写真を見たことがありましたので、目の前の女性が自分の母親であることに少しも疑問を持っておりませんでした。
私は声を振るわせながら
「本当にお母様なのですか…何故、私を捨てたのですか…」
お母様は微笑む
「必要なことだったからよ。名前はなんていうの?」
「アリシア…」
優しく微笑む
「そう…とてもいい名前ね…アリシア、いったん私の胎内に戻りなさい」
私はキョトンとする
「えっ?」
私はお母様に取り込まれた
私はお母様の胎内で、新たなへその緒でつながった。つながった瞬間、莫大な情報がなだれ込んできた。母親は父親以上に愛してる人がいること…今その人と幸せに暮らしてること…そして、私に兄がいること
全てが頭に入り込んできました。それだけでなく、私に新たな顔と、そしてレベル10の魔力やその他の力、これが最も重要なのですが、お母様の願いを授けてくれました。私は瞬時に理解しました。私の役割を…そして、その理由を…
お母様の願いは…兄の心の支えとなれ…お兄様はお母様の想い人メラという女性に愛情を持っている。そして、兄はやや強引な方法で奪った自分の母親を憎み、奪い返そうとしている。それを防ぐために、私が、メラの代わりになれというのが、お母様がこのような願いを私に授けた理由です。
全てを受け取った私は二度目の出産を受けました。新たな私…アリシア・ウィンコットがここに生まれたのです。
その後、貴族試験をパスし、アナスタシア陛下に気に入られ、彼女の力を存分に振るい、<SECT>では班長を、貴族では子爵になることが出来ました。これで念願のウィンバード家と縁を切ることが出来ました。別れ際、父が少し悲しそうな表情をしてたことに若干の罪悪感はありましたけど、後悔は一切しておりません。
その後、仕事に…未成年なので、大した量ではありませんが、こなしてる時に、アナスタシア陛下からお呼び出しを頂きました。彼女の書斎の前にある応接間で待機していると、呼び出しの鈴が鳴ったので入ると
そこには…
一人の少年が…
私は直感でこの人が兄だとわかりました。
そして、首元にナイフを突きつけられました。
正直言って驚きました。何故なら…全く、反応が出来なかったからです。私はお母様によって想像を超える力を頂いたのですよ。その私が反応できないとは…私は兄が、お母様やメラという女性と同じレベルにいるということを痛感しました。
だから、私は言いました。愛情を込めて
「会えて光栄です!お兄様…私はアリシア・ウィンコットと申します。アリスとお呼びください。よろしくお願いいたします。クロード・ウィンロックお兄様!」
正直言って、私は今回の任務はお母様のためにやろうと思っておりました。兄に全く興味が湧かなかったんです。はっきり言って面識がなかったので…
ですが、一瞬の邂逅で全てが変わりました。一目惚れに近いですが恋に落ちてしまいました…ああ、この人にはかなわないと感じました。そして、そのような強さを持ちながらも、心はとても脆く弱いということに可愛さを覚えました。その強さに依存したい、その弱さを守ってあげたい。そう思っているうちに、恋が愛に変わりました。
ああ、お兄様…あなたは何て美しいのでしょう…その強さも…その弱さも…
私は憧れ…違う…敬愛…違う…尊敬…違う…忠誠…違う…崇拝…違う…畏怖…違う…違う…ただ純粋に愛を…
私の頭の中にお母様の存在がどこか遠くに消え失せてしまいました。私にとってお兄様が全てです。私のお兄様を傷つける人は…例えお母様でも…容赦しません。
ですが、悲しいことにお兄様の心はメラさんという存在に支配されてます。消して差し上げなければ…メラさんを失ったとき、あなたは虚無感に襲われるでしょう…けど、安心してください…私で満たして差し上げます
だから私はお兄様の全てが欲しい…私に見せてお兄様の全てを…私の全てを見てお兄様…私の全てを受け取ってお兄様…
その後、お兄様とお話をしました。その間、私の心はお兄様に対する独占欲が膨れ上がっていました。屋敷に着いたとき、メイドのシュルヴィアが出迎えていました。私は彼女を見て、愕然しました。あの鉄面皮の下に潜む女の顔を見てしまったのです。
お兄様が安らかに眠ってる間、私はシュルヴィアに問い詰めました
「シュルヴィア…あなた、メイドの分際でお兄様を狙うとは言語道断よ!」
シュルヴィアはぴしゃりという
「器風情が騒がないでください…あなたに彼の何がわかるというのですか?」
私はその言葉に固まるが、何とか言い返す
「そういう、あなたはどうなのよ…」
シュルヴィアはうっすらと頬を染める
「私はあの方を、生まれたときから見ておりました。ずっと見ておりました。あの方だけを…」
私はシュルヴィアの眼を見て震える
「お前は何なの…」
シュルヴィアは突如、契約紋…私が彼女を召喚したときに付けた物だ…を握りつぶした
「えっ」
私は呆然と言う
「なんで、アフリートのあなたがなぜ…」
シュルヴィアは嗤った
「残念ですがお嬢様…私はアフリートではございません。マリッドの9です。つまり、2番目に強い悪魔です。正確に言えば、昇格したというのが正しいのでしょう。私がアフリートの時、お嬢様の母上に捕獲されまして、このように作り替えられたのでございます」
シュルヴィアは続ける
「お嬢様は、肉体と力を…私は記憶と力を頂きました。シュルヴィアとアリアの記憶が…」
それを聞いて、先程までの恐れが失せ、笑いがこみ上げる
「クフフフフ、そういうことね…お母様…わかったわ。認めてあげる!条件は二つ、一つ目はこのままメイドとして仕えなさい。二つ目は、お兄様は私たちだけのモノよ」
シュルヴィアが無表情に戻る
「畏まりました」
私は嗤う
「あら、聞き分けがいいのね?」
シュルヴィアは無表情に
「私とお嬢様は二人で一つなので、欠けることが出来ませぬゆえ」
私はシュルヴィアの手を握る。
ここに新たな契約が結ばれた。
成績発表の日
私はお兄様と成績表を見て…お兄様は8位…手を抜きましたね…けど、Sクラスなので許してあげましょう。私は勿論!1位!お兄様が撫でてくれました。
その時、声をかけられました。相手は皇太女でした。殺意が湧きました。私がせっかく、お兄様と戯れてる時に…その後、どうでもいい話を聞き、不本意ですが…他の女性の眼には映って欲しくはなかったのですが…お兄様を紹介します。
「わかりましたわ…あと、三方に紹介いたします…隣にいますのは私のお兄様のクロード・ウィンコットです」
3人とも、お兄様が見えてなかったのです。しかも、私の兄の存在がわからなかったのです。つまり、この学園では、私のみお兄様を見て、聞いて、触れて、嗅いで、味わうことが出来るのですね。
歓喜に震えてしまいました。
お兄様の話を聞いる中、お兄様のこの一言に本心を出してしまいました。
この一言に…
「目立たないためだ。わかるだろ?俺は表の人間じゃない…裏でも最も深淵にいる人間だ」
そして、私は…
「では、私もそちらに参りましょう…そして、一緒に落ちましょうお兄様…どこまでも…永遠に…そう永遠に…一緒に…」
お兄様は背を向ける
私は追いかけ腕を組む
愛してます♪私のお兄様♪
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