始章 《プレゼント》
俺は渋々ながらこの仕事を受けることを了承した。不本意だが…売人の端くれである。仕事はしないとな…
俺は一拍置きアナスタシアに聞く
「ところで、イリテュム…奴からの贈り物は何だ?正直言っていらんがな…」
アナスタシアは懐から小ぶりのベルを出し振る。きれいな音だ…
そして、アナスタシアは扉に向かって言う
「入って頂戴」
扉が開き、俺より頭一つ分低い、黒髪で、頭の片方に花飾りを着けた少女が入ってきた。俺は彼女の顔を見て息をのむ…
何故なら髪と瞳の色は違うが、顔はアリアーデそのものだったからだ
俺はナイフを取り出し、少女の首元に突きつける。首の皮を少し切り、血が滲む
「何者だ…答え次第では殺すぞ…」
少女は微笑む
「会えて光栄です!お兄様…私はアリシア・ウィンコットと申します。アリスとお呼びください。よろしくお願いいたします。クロード・ウィンロックお兄様!」
俺はアナスタシアのほうを向く
「どういうことだ…」
アナスタシアは微笑みながら説明する
「ウィンコット…彼女はあなたと同じ、<イレギュラー>の子供よ。あなたより、1年後に生まれたから妹になるわね」
アリシアはニコニコ笑う
「説明いたしますわ。お兄様。私はつい最近まで、ウィンバード公爵令嬢として退屈な生活をしておりました。ある日、私を捨てたお母様が私の眼の前に現れて、この姿と力を与えてくださったの。その力でお兄様を助けろとね」
俺はナイフを突きたてたまま言う
「信用出来んな…奴の子供たちは奴の操り人形だ…奴の支配からは逃れられない…俺という例外を除いてな」
アリシアはコロコロと笑いながら
「私も例外の一つですよ。お母様によってお兄様のサポートするために生まれ変わりました」
俺は言う
「では、奴の名を言え…例外のみ奴の名を正しく認識できる。奴の子供たちは制約により、奴の名を唱えることができない筈だ」
アリシアはあっけらかんと
「イリテュムですよね?本名はコーデリア・ウィンコットです」
俺は警戒を解いた
アナスタシアはちんぷんかんぷんだ
俺は説明する
「真名は相手を縛る重要なキーワードだ…だから<七賢人>は皆、仮名を使っている。勿論、メラもな…奴は真名による支配を恐れている…俺らの真名を握り、自分のは教えないし、万が一のことを考えて唱えれないようにしてる」
アナスタシアは聞く
「なんで、クロウィン君は言えるの?」
俺は首を振る
「奴は俺を自分に掛けられた封印を解除する鍵にしたんだよ。自分の力を解放するために、どうしても真名を唱えれる奴が必要だった。真名を唱えれる奴…つまり俺だ」
俺はアリスに向かう
「済まなかったな…アリス」
アリスは花が咲いたような笑顔を向ける
「良かった。お兄様が私を呼んでくれた」
俺はアリスに聞く
「お前のその姿は…」
アリスは笑う
「勿論、お母様に取り込まれたときに変わりましたよ…正確に言えば、アリシア・ウィンコットの記憶を持った別人です。ベースはアリアーデ・イ・ルベイがベースとなってるよ。アリアさんはお兄様より、頭一つ分高く、年齢も一つ上でしたけど、私は逆ですね…フフッ、お兄様に甘えちゃいます!」
ベタベタくっ付いてくる。正直ウザイ・・
アナスタシアは手を振りながら見送る
「じゃぁ、よろしくね」
俺は車でウィンコット邸に向かう
車内で俺は純粋に疑問に思ったことを聞く
「お前の姓はアイツと同じ、ウィンコットだが…お前はウィンバードの娘だろ?なぜ、姓が違う…しかもその姓は<七賢人>主席の姓だぞ…」
「霜の一族の祖先はシ族です。その主席は我々の先祖ですよ。上位貴族の内、いくつかは<七賢人>を祖と仰いでます。私の姓が違う理由としては、私が独立貴族になったからですよ。私の母は公爵である父の妾としてしばらくいました。私を生んですぐに消えましたけど…つまり、非嫡子ですね。公爵位を継ぐことはできませんが…伯爵より下の爵位、つまり下位貴族は世襲ではないので、努力次第ではなれるのですよ。私の爵位は子爵です」
俺は驚く
「世襲ではないのか…」
アリスは頷く
「元々、国や領土を持っていた辺境伯や方伯以上の上位貴族は永代世襲ですが…それより下は、中央貴族や地方貴族の下位貴族では、文官を務める法服貴族は3代まで、武官を務める帯剣貴族は5代までしか世襲できません。騎士などの準貴族は1代までしか…しかも、大臣や将軍に任命される宮廷伯は1代のみです」
俺は驚き続ける
「特権階級ではないのか…貴族になる方法は」
アリスは胸を張る…スレンダー体系だが…
「試験です…試験にクリアし続ければ永代まで続きますよ」
俺は疑問をぶつける
「地方貴族と中央貴族とは?」
アリスは懇切丁寧に説明してくれる
「中央貴族とは皇帝直接に仕える下位貴族を中央貴族と呼び、上位貴族に使える下位貴族を地方貴族と呼びます。また、大臣や将軍は宮廷伯と呼ばれる名誉爵位を貰っていますので、宮廷貴族とも呼ばれます。ちなみに、私は父の下から飛び出し、陛下に仕えてますので中央貴族です」
話してるうちにウィンコット邸に着いた。とても広大な敷地と屋敷だ。
俺は言う
「立派だな…」
アリスは胸を張る
「敷地は16000㎡よ」
俺は質問する
「この国は封建制をとっていたはずだ…封土はあるのか?」
アリスは首を振る
「封土は城伯や副伯と呼ばれてる地方の領主しかないわ…上位貴族は自分の国と地方を持ってるけど、下位貴族や準貴族は決められた広さの敷地と決められた額の年金しかもらえないわ」
「年金は?」
「年間15万ペニー(1ペニー=1ドル=100円)よ」
俺は頭を掻く
「通貨には詳しくなくってな…帝国では1ディナール(金)=20ディルハム(銀)=480ファルス(銅)しかわからなくてね」
「同じですよ。お兄様!全世界の通貨は連邦を基準としてますの。連邦では1トロイ=20ペニー=480グレーンをとしておりますの。今の時代は兌換紙幣がメインですけど」
俺は思い返す
「ユーロピアでは未だに計数ではなく秤量だったな…」
アリスは引きつる
「流石に今は違いますよ…けど、自国で作った通貨が全く信用できないため、連邦と帝国の通過を使っております。幸い交換レートも1=1なので、問題は銀行以外は全く問題ありません。一応備蓄用として白金貨幣もあります。12トロイで一枚です。これは市場に出ないし、使えないため名前がありませんけど…あと、ダイヤ1カラット=24トロイということも教えておきます。買ってくださいね」
俺はアリスの頭をなでる
「つまり、お前は平民の15倍の収入と64倍の広さの敷地を持ってるわけだ…3代までだが、十分だろう」
アリスは嬉しそうに笑う
「フフフ、お兄様に撫でられた!フフフ」
俺は足を踏み入れる
「では、入るか」
屋敷の入り口には一人のメイドがいた
俺は彼女を見て、衝撃を受ける
「シュルヴィア…」
こちらはあの時のシュルヴィアと全く変わらない姿でいた…メイド服はフリルは同じだが、彼女が着てる服はなんだか違うが…後に和服というのをシュルヴィアから聞いた。シュルヴィア曰く、大八洲のメイドはこのスタイルだと…
シュルヴィアは頭をかしげる
「失礼ですが、お坊ちゃま、どこかでお会いしましたでしょうか?なぜ、私の名をご存じで」
アリスが言う
「このシュルヴィアはお兄様が知ってるシュルヴィアをベースにして作った精霊だよ。階級はアフリートの9だね」
俺は考えるのをやめた
「そのアフリートとは何だ?」
シュルヴィアが頭を下げながら言う
「僭越ながら、このシュルヴィアが説明させていただきます。精霊とは一言でいえば悪魔です。本物の精霊はアフリカにいますが…太古の存在していた悪魔は魔界と呼ばれる別次元に逃げました。ですが、契約することによって、この世界で生活することが出来ます。私は最近、お嬢様と契約しました。ちなみにここの使用人は皆、悪魔です。精霊と呼ばれてる理由は、悪魔の力の中で闇属性の力が契約によって封印されてるからです」
シュルヴィアは粛々と続ける
「悪魔には階級が大まかに5つあります。上から、マリッド、アフリート、ジン、フォリオット、インプの5つです。そして各階級には更にレベル1~10に分かれております。私はアフリートの9、上から12番目に強い精霊となります」
自慢されてもわからん
「最上級のマリッドは力が強すぎるので基本一人では契約することが出来ません。マリッド1ですら2人が必要です。アフリートより下は一人で出来ます」
アリスが胸を張る…なんでお前が胸を張る、意味が分からん
シュルヴィアはやっと話を終える
「ここにいるのは全てお嬢様と規約した者です。お坊ちゃまの要望も快く聞いてくれるでしょう。何事も申し付けください」
そして俺らは屋敷に入る。木調を基調とした内装だ…気持ちがいい
俺らは書斎に入る
アリスは振り返る
「お兄様!明日は入学試験です。入学試験は筆記と実技しかありませんが、成績でクラス分けを行います。
筆記科目は文法、論理、修辞、幾何、算術、天文(地理も含む)、音楽の7科と医学、神学、哲学、法学の中から2科目の計9科目です。まぁ、お兄様は<NovyiMir>で基本を学んだはずですよね…」
俺は首を振る
それを見たアリスはため息をつき、本棚から一冊の本を動かす。本棚が動き、隠し部屋が現れる
そこには二つのカプセルがあった…仮想世界に入れるアレだ…
俺は後ろを振り返ると、これでもかと素晴らしい笑顔を浮かべるアリスがいた
「お兄様…勉強いたしましょう。この空間なら何年…何十年も…何千年も勉強できますよ…」
俺は…逃げた
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