現世界 《Utzsiyo》
始章 《アルテイスト》
一人の少年がタバコを吸っていた。黒髪黒目で怜悧な面差しをした少年だ。
「クロウィン君」
一人の女性が現れる。赤毛緑眼の人形のような女性だ。
クロウィンはちらりと見る
「ルヴィアか…」
ルヴィアは淡々とい
「お体の調子はどうですか?あなたはあの機械の中では100年の時を過ごしたと思われます。体とは尋常じゃないズレを感じると思われますが…」
クロウィンははっきり言う
「大丈夫だ…ここ数日で調整をしている。ほとんど違和感を感じなくなった」
ルヴィアは相変わらず無表情だ
「では、お伝えします。あなたの体を大分いじらせてもらいました。あなたの意識に合わせて体の筋力、関節、その他諸々を合わせておきました。ですが、急激に体を変化させると大変なこととなりますのでいくつかの細胞やゲノムを移植させていただきました。老化も遅らせております。他に体にいくつかの補助機械も移植しました。本来なら、こちらで作ったアンドロイドにあなたの脳を入れたいのですが、それだと強くなれませんので、サイボーグのまねごとを…」
その他の説明をすべて聞き流す…クロウィンは数日前までいた仮想世界のことを振り返っていた
仮想世界…
「アタシが教えれることはここまでだ…それ以上は知らん!どっかに行きやがれ!たっく、クソッたれが…」
俺は…僕は息を吸ってメラのプログラムにいう
「メラ…」
メラは訝しげな顔をする
「なんだ」
「僕はメラのことが好きだ…今でも…母として一人の女性ととして愛してる。いつか解放してあげるから待ってね」
そして俺は持った剣でメラの心臓を優しく突く
メラは笑う
「おう!待ってるぜ!楽しみにしてらぁ!」
プログラムは消滅した
「俺は…メラを救う…そのためなら、全てを捨てる…」
世界が消滅し、俺は現実世界に戻る
俺は正式に<NovyiMir>の社員になった。階級は幹部候補だ…平社員、主事、主任を飛び越えて、主査の下の階級にいる。
本社長室
ルヴィアは俺に一枚の書類を渡してくる
「そちらは辞令となります…一応あなたはわが社の社員となりますので、仕事はこういう形式をとります。あとは、こちらの書類を人事課に渡してください」
俺はその書類を見てため息をつく
「おい…なんだこの書類は、俺を上級主査に昇進…ってこんなに簡単に上げていいのかよ」
ルヴィアはパソコンを打ちながら淡々という
「ご安心ください。人事課よりも偉いので」
俺はもう一枚の紙を見る
<連邦にクロウィン君を送ってね。アナスタシアより>
俺は脱力する
「なんだ…これは、本当に正式な辞令か」
ルヴィアはパソコンを打ち続ける
「はい、アナスタシア2世からの正式な依頼です」
ルヴィアは一旦止める
「彼女には気を付けてください…この国は、言葉は悪いですが連邦は我々の傀儡国家ですが、彼女は我々の傀儡にならないばかりか、独自に我々に対抗する力を有しております」
「六角に匹敵するのか」
ルヴィアは頷く
「わかった…気をつけよう」
俺は、その後ジェット機でザイールからビザンティウム経由でアナスタシアグラード国際空港に降り立った。。
俺は空港を見渡すが迎えの人はまだ…
「クロウィン様ですね」
後ろにいた。振り返ると黒ヴェールの覆面をし、黒い布を体に巻き付けたスレンダー体系の女性がいた。俺は彼女の服装をよく見る。まるで、アラビアの踊り子のような衣装だ。漆黒のビキニの上に薄くやや透ける黒色の布を全身に、一寸の隙もなく巻きつけている。そのため素肌は目元だけである。だが、踊り子たちと少し違うのは、布が体の輪郭がはっきりわかるように全身きつく巻かれており、素晴らしい体系をこれでもかと自己主張し、透けて見える素肌にドキッとするだろう…他の男は
クロウィンは
「痴女か…お前は。ここは帝国西部ではないんだぞ…真冬は氷獄と化す連邦だぞ…」
女は全身に着けられた黄金のアクセサリーをもてあそびながら言う
「魔法があるので大丈夫です。どうしても寒ければ、少し厚い布を巻くだけなので」
俺は黄金のアクセサリーの中で一種類だけ銀色のアクセサリーを見て言う
「
それは、連邦皇帝が持つ三つの武力、近衛隊、侍従隊と並ぶ親衛隊の女性であった。
俺は彼女が用意した黒塗りの車で移動する
しばらくした後
目の前には連邦の首都冬都ことアナスタシアグラードが見えてきた。代名詞の一つである三重防壁は相変わらず健在だ。
俺は壁を見て言う
「相変わらず…すげぇな」
女性は言う
「高さ30メートル、奥行き15メートルの特殊な石を使った壁が少し間を置いて三つ並べてるだけですよ。まぁ、弱点となる根元付近には暑さ80センチの特殊鋼が張ってありますが、それだけです」
俺は呆れる
「そのおかげで帝国は冬都を落とすことが出来なかったんだぞ…その言い方はないだろう」
女性はシレっと言う
「陛下はちっとも思っておりませんよ」
車はそのまま、奥に進む
冬都は王城を中心として放射状に広がり、上空から見ると複雑な蜘蛛の巣のように見える。帝国の首都は碁盤の目のようだが…
首都の内側から身分の高いものが住み、繁栄している。連邦は三重防壁の他に三重防壁と比べて低く薄い…ユーロピア諸国にとっては最高レベルの城壁で、街を各区画に分けている。この城壁は全部で4つあり、各々の階級はこの城壁の間で暮らしている。
一番内側の城壁は王城となっており、王城常勤者のみが住める特別な地区だ。
その外側から…第二壁の間は貴族区画と呼ばれており、貴族か、貴族に準じる者、または貴族の紹介がないものは入れない。この区画の北部は貴族、騎士などの準貴族、上等民と呼ばれる大富豪などが住んでおり、大規模な邸宅が並んでいる。南部は議会、省官庁、裁判所、大学、大企業本社オフィス、軍施設などの国家の中枢が集まっている。
第三壁から第二壁の間は市民区画と呼ばれており、一般の平民が住んでいる。4つの区画の中で最も広く、人口も多い。戸籍により一人一人が完全に把握され、徴兵、納税、労役の三大義務が生じるが、様々な行政サービスを受けることが出来る。
第二壁から第一壁の間は準市民区画であったが、最近は市民区画へと編入されている。この区画は他国からの移民や貧困者が住む区画である。人口も把握されておらず、三大義務は課されないが、治安などの行政サービスをほとんど受けることが出来ない。だが、戦時などの非常事態になると臨時徴兵や労役のための労働確保、臨時税が課せられる。だが、準市民の中には人頭税を払える余裕のあるものが多くいるため、アナスタシアは多くの準市民を市民に格上げしたのだ。そのため、従来準市民区画だった場所が市民区画になり、準市民区画は強制退去や区画整理の立ち退きなどで年々狭まっており、今では従来の7分の1まで狭まった。
現在準市民は残された準市民区画と三重防壁のそれぞれの間に出来たスラムで暮らしており、他の階級から厳しい差別を受けている。
俺は呟く
「ヒデー所だ。超大国になるとスラムはスゲー規模になるんだな」
女性は笑う
「フフッ、しかも名前もありますよ」
「それは?」
女性は感情を感じさせない声で言う
「
俺は笑う
「ハッ!まるで
女性はクスクス笑いながら続ける
「ほかの国にもありますよ。帝国西部には
そのまま、王城に着き、侍従長の案内でアナスタシア個人の書斎に入る。
世界最強国家の皇帝とは思えないほどこじんまりとした部屋だった。
女性はアナスタシアの隣に立つ。部屋にはアナスタシアと女性と俺の他に5人いた。
皆、黒の服を着ており、銀のアクセサリーを着けている。皆、親衛隊である。
アナスタシアは手を組み、肘を机に付け、ニンマリ笑っていう
「初めまして…クロウィン君…いや、クロード・ウィンロック君ね。狭いと思うけどが好きにかけね」
俺はソファーにかける
アナスタシアはニタニタと笑いながら言う
「早速だが仕事の話をしましょう…今回は<NovyiMir>を通して直接、君個人に依頼をする形式をとったのよ。何故かわかる?」
俺は簡潔に言う
「<アルテイスト>としての依頼か」
アナスタシアは手を叩く
「ピンポ~ン!せぇ~いか~い!けど、あなたは<アルテイスト>なの?名前を変えたと聞いたけど…」
俺は嫌々に言う
「<
アナスタシアはクスクス笑う
「最初のはメラちゃんらしいけど…後の二つはセンスないわね。誰が付けたの?」
俺はぶっきらぼうに言う
「最初のは、メラの遺言だ…二番目はヨシュアが、最後はイリテュムからの手紙だ…そう言えば、奴の手紙からお前経由で贈り物があると…」
アナスタシアはサラッという
「それは後ほどで…仕事の内容は、二つあるわ。一つ目は簡単!私の娘の面倒を見てね」
俺は眉をピクリと動かす
「お前に娘がいたのか…驚きだな。記憶が正しければお前は独身だが…」
アナスタシアは手を振る
「もちろん、養子よ!連邦の皇位継承は知ってる?」
俺は頷く
「ああ、帝室は基本世襲できないんだよな。次期皇帝は5王国の皇太子皇太女から選ばれる。選帝侯と呼ばれる連邦東部を治める第二の皇帝ともいうべき貴族が…」
アナスタシアは頷く
「私の国って封建連邦制を採ってるのよね。連邦は実質、帝国、選帝侯国、5王国、7大侯国、10公国、10侯国、1方伯領、12辺境伯領、4自由都市の51の国と地方で出来てるのよ。皇帝は5王国の王族から選帝侯が一人選ぶ形式をとってるのよ。で、次期皇帝はもう決まったのよ」
「それが、お前の娘か」
アナスタシアは頷く
「そいうこと。ちなみに私の妹の一人娘でもあるのよ」
「<戦乙女>アレクサンドラか…帝国との戦いで英雄となり、終戦間近で非業の死を遂げた悲劇の女。墓にも特殊部隊の母とも呼ばれてますね」
アナスタシアはコロコロと笑う
「あら!巷ではそんな風に言われてるのね。私なんか、女狐、魔女、雌蛆なんて呼ばれてるわよ…羨ましいわぁ」
どこかズレてる…
「話を戻すけど、他の王族はこのことに対してよい感情を持ってないのよ。私の姪っ子だから、私の介入があったと思いこんでるらしいのよ。あの子を亡き者にしようとするバカが大勢いてね。まぁ、面倒を見てくれない」
俺は頷く
アナスタシアはニヤリと笑う
「二つ目は…あの子、自分の母親に憧れたのか、中央軍事学校に入学するって言うのよ」
俺は嫌そうな顔をする
「俺に入学しろと…」
「話はまだ途中よ!焦らない!…あの子を育ててほしいの、あの子に降りかかる災厄をうまく利用してあの子を追い詰めてほしいの」
俺は引っかかりを覚える
「何故だ」
メラは最高の笑顔で言う
「彼女に真理ゲームを参加させるためよ」
突如、書斎が吹き飛ぶ。窓ガラスは割れ、本棚や机が粉々になり、ソファーが潰れる。
原因は俺の殺気だ
アナスタシアは涼しい顔で言う
「流石ね…ただの殺気でここまで干渉出来るなんて…」
突如、後ろの扉が開かれ、剣を抜いた近衛隊長と両手に暗器を持つ侍従長がなだれ込む
「貴様ッ!陛下の御前でっ…」
言葉が止まる
二人の首元にナイフが添えられる。それを実行してるのは、アナスタシアの横にいて、俺をここまで案内した親衛隊の女性だ。
侍従長が怒気を孕ませて言う
「どういうことだ…親衛隊」
女性はシレっと言う
「どうもこうも…あなた達お呼びじゃないわよ」
近衛隊長が言う
「陛下を守るのが俺らの役目だろ…何故、俺らに刃を向ける」
女性は笑って言う
「私たちのは建前だから…別に守る必要はないのよ。私たちの行動原理は、ただ一つ、闘争の渇望よ。戦いの熱にあてられて正気を失った者たち…それが親衛隊よ」
侍従長は歯を食いしばる
「この狂人が…」
アナスタシアが仲裁に入る
「はいはい、そこまで。二人とも申し訳ないけど、出てくれないかな…今物凄く大切な話をしてるのよ」
近衛隊長が反論する
「ですが、陛下を危険にさらすわけには」
アナスタシアの眼が冷たくなる
「このまま居座るなら、悲しいことだけど二人を殺さないといけなくなるの…私は二人のことが好きよ…お願いだから、私に悲しいことさせないで」
二人とも黙って外に出る
俺は言う
「いいのか…あんなこと言って」
アナスタシアはあっけらかんという
「いいのよ」
俺は先程の女性に言う
「お前もいいのか」
女性は肩をすくめる
「アナが死んだらお前と戦える口実が出来る。やってもいいぞ!」
他の五人を見るが誰も動かなかった…動けなかったのではなく…動かなかった
メラに一番近い席に座ってるのは初老の隻眼の男だ…ムチャクチャ出来る執事にしか見えない
その隣は巨漢の男だ。ディエ・エスと同じ3メートルに届くかの巨漢だ。ディエ・エスと違ってその男はお腹がこれでもかとせり出しているが、俺はその腹が全て筋肉で出来てると睨んでいる…まるで、大八洲にいる裸の格闘集団力士(メラ情報)みたいだな。肌は褐色で、頭は禿だ。
反対側で壁にもたれてるのは全身コートの美少年だ。長く伸ばした髪が際立っているが…なんで口元をガスマスクを着けてるんだ
その横ではアルビノの少女がぬいぐるみで遊んでいた…ぬいぐるみ大丈夫か、綿ムッチャ出てるんだけど、首取れそうなんだけど、あっ、眼が落ちた
俺の後ろにはもじゃもじゃの髪を無造作に伸ばした顔中傷だらけの男が腕を組んで寝ている
俺は話を促す
アナスタシアは一枚のカードを出す。そのカードは真理ゲームの挑戦権だった。
「ある時、私と景…先代帝国の皇帝は、夢の中で真理ゲームのゲームマスターに呼ばれたのよ。戦争で勝ったほうにこのカードを渡すと…」
「それで、20数年前連邦と帝国は戦争をしたのか」
メラは力なく笑う
「ええ、おかげで連邦は軍民合わせて1700万人死んだわ。そのうち、民間は1100万人ね…勿論、報復したわ。香皇国は2300万人死んだかしら…けど、香皇国だけだから、帝国全体ではもっとあるんじゃないかしら?」
俺は薄く笑う
「なるほど…お前は5000万の人間を殺したのか…そいつらの命でそのカードを買ったと」
アナスタシアはにやりと笑う
「あなたはそんなこと言うのね。ええ、そうよ。私は敵だけでなく、自国民を殺したわよ」
「けど、挑戦権は得られなかった。貰ったのはカードだけ」
アナスタシアはがっかりしたように言う
「そうなのよ…よく考えたら<六角>て、それぞれ自分の信条を持ってるのよね。<終末の騎士>はシ族を打倒して神によって治める平和を求めた。<黙示録の教団>は平等を押し付ける神を殺し、理性による自由を求めた。<創世の結社>は魔法が使える選民と使えない奴隷に分け、選民が奴隷を管理するシステムを求めた。<NovyiMir>は神族を潰し、かつての威光、繁栄の回帰を求めた。<アルテイスト>はどこにも干渉されない世界の理から外れた真の自由を求めた。<イレギュラー>は一人の人間の愛を求めた…そして、私は思った。私には何もないと、私にとって真理ゲームは唯の暇つぶしだと…だから選ばれなかったのね」
俺はセセラ笑う
「景なら選ばれたかもな…奴の渇望は至高の存在になりたいだから」
アナスタシアは笑う
「そう思うと奴はバカよね…一番になりたいから、他の大国を併合して、連邦を併合しようとしたもんね。けど、併合されたら、巨大な勢力が出来たと思うわ」
アナスタシアは一息をつく
「ということで了承してくれるかしら?」
俺は睨む
「不可能に近いぞ…勢力が無い…俺はメラを引き継いだからな…俺単体で他の勢力と戦える力がある。けど、唯の小娘では無理だ」
アナスタシアはにっこり笑う
「勢力なら大丈夫よ。彼女には連邦だけでなく帝国もあげるもの!しかも、親衛隊もいるしね。親衛隊はもともと、私が真理ゲームに参加するために作ったものだから戦闘力だけは高いよ」
俺は鼻で笑う
「数日前に親衛隊やらと戦ったが、大したことなかったぞ」
アナスタシアはキョトンとなる
「そんな話聞いてないわ」
アナスタシアは親衛隊に確認をとるが皆、反応がない
俺は続けて言う
「確か…奴らは親衛隊選抜の特戦隊と言ってたぞ…全部で12人いたが、4人だけマシな奴がいたが、あれじゃ他の勢力に潰されるぞ」
巨漢の男が自分の禿頭を撫でまわしながらつぶやく
「小隊長にそんな奴らがいたな…」
女性が口を開く
「彼らは下級親衛隊よ…一般の兵士に毛が生えた程度の戦闘力しかないよ。大隊長、つまり上級親衛隊はここにいる6人、中隊長の中級親衛隊は50人程度が真の親衛隊よ。中級以上はアナが直接選抜してるから全く違うわよ」
アナスタシアは頷く
「言っとくけど、下級は懲罰部隊だぞ。構成員は主に、軍規違反者、刑事犯、志願兵などだぞ。中はほとんど、戦闘狂や拷問魔、殺人狂の集まりよ」
女性は続ける
「私たちは普段は督戦隊を務めているよ。奴ら不利になったら逃げようとするから逃亡防止でね」
巨漢の男が言う
「親衛隊の任務は連邦の方針上許されない行為、国際条約に反する不法行為がメインだ。命令違反は、勿論、即銃殺だ」
アナスタシアが大声で宣言する
「親衛隊の中隊長に任命する!明日は入学試験よ!準備しなさい!」
拒否権は無いようだ…
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