結章 《絶望》
メラたちは大急ぎで教会の門を閉める
メラが叫ぶ
「オイ!どうすんだよ!アイツやる気満々じゃねーかヨォ!殲滅から戦闘形態に変わりやがったぞぉ!」
ヨシュアが叫ぶ
「見ればわかる!」
フランチェスカは大声で聞く
「ていうか、あなた達…あの化物どうやって倒したのよ…」
メラは修道士に振り向く
「オイ!クソ坊主!この教会は大丈夫なんだろうな?じゃなけりゃ、ぶっ殺してやる!」
修道士は妙に落ち着いて言う
「ええ…大丈夫ですよ」
メラは深呼吸して言う
「1000年前は、アタシ達5勢力が全勢力を奴にぶつけて足止めする。雑魚でも束になりゃぁ、1秒は稼げるな…肉の盾を突っ込ませて、その間にトゥリス…フランチェスカ…お前の先祖が魔法剣でアイツを真っ二つに切り裂き、半身をアタシ達5勢力が全力で作った封印の中に押し込み、その外側をアタシの氷で包み込んだのさ」
フランチェスカは言う
「それ今出来ないの?」
メラががっくりと崩れる
「無理だ…数が足りないし…お前トゥリスの剣出せねーだろ…あと残りの半身の倒し方はもっと不可能だ。残りの半身をアタシとルヴィアが用意したロケットに突っ込み、宇宙空間にぶっ飛ばす。その後、アイツをつき落とす。アイツは空気の摩擦力で燃やされて動けねーから、その間に衛星砲でため込んだ太陽エネルギーを喰らわせる。そうするとオマケでこの星に穴が出来る…そのまま、アイツをマントルまで突っ込ませる。んで、開けた穴を埋めて封印する。なっ、無理だろ?」
フランチェスカは遠い眼をしながら言う
「逆になんでそれが出来たの?」
メラは悔しそうに言う
「そりゃ、アイツを倒すために準備したからな…」
僕はメラに聞く
「じゃぁ…アレは何なの」
修道士が答える
「アレは今から100年前に地中から出たものですよ。900年間身を焼かれて何とか這い出たらしいですよ」
フランチェスカは恐る恐る聞く
「アレは弱ってる?」
修道士は首を振る
「逆に怒っているため、1000年前よりも強いと思われます」
ヨシュアはペトロに詰め寄る
「我が弟子ペトロよ…脱出するぞ…今は多分、結界が張られてると思われるから正攻法では出ることはかなわないでしょう…ですが、天界を通じれば出れると思われます…鍵を使いなさい」
ペトロは大急ぎで鍵を打ち鳴らす
眼前にまばゆい光に包まれた門が現れる
ヨシュアは素晴らしい笑顔で言う
「そこのクソ坊主以外の方はこの門をくぐりなさい…今回は敵味方関係無しでサービスしてあげます」
皆大急ぎでくぐろうとするが、突如修道士がつぶやく
「あっ、教会の結界が破られました」
教会が吹き飛ぶ
メラが左手の中指につけた指輪にキスをして叫ぶ
<軌道衛星”方舟Noah”>完全起動解除…封印鍵第三門開錠…認識パスコード=《
指輪から声がする《ソリ・デオ・グローリア》
メラは答える
「ただ、神にのみ栄光あれ」
指輪から声がする《許可する》
メラの体が光に包まれる。
「アタシがしんがり務めてっやから、お前らさっさと門にくぐれ!」
皆はハッとしたように門に殺到する
イリテュムだったものが嗤う
「皆殺しだ…皆殺しだ…皆~殺~し~だぁ~…殺せ…殺せ…こ~ろ~せぇ~」
全身から無数の触手が現れる
メラが能力を発動する
全身から光の奔流が溢れ触手を消し飛ばす
「こいつはとっておきだぁ~。簡単に行ける思うなよ!このクソッたれがぁ!」
メラが極大の光の奔流を浴びせる…が、全て吸い込まれた。
「さすが!虚飾…中身が空っぽだから足んねーか!なら!もっと喰らわせてやるよ!」
メラは攻撃を浴びせ続けた
イリテュムは飲み込みながらゆっくりと歩を進める
突如イリテュムの頭部が上空を向く…上空には巨大な黒い魔法陣が出来ていた…突如、魔法陣から無数の手が現れ、こちらに殺到する…
メラは攻撃を上空に向ける
メラだけでなく、門をくぐってないメンツも上空に向けて攻撃を放つ…それでも全てを消し去ることが出来ず、多くの命が潰される。
今の攻撃で修道士も潰された
僕はアリアとシュルヴィアに守られたため無事だ…
「グヘヘヘヘヘ、ゲェヘへへへへ、グハハハハハ、キャハハハハハ」
イリテュムが耳障りな声で笑う…その声は、無数の人間が同時に笑ってる声であり、聞いてるだけでも気持ちが悪かった
メラは笑って油断してるイリテュムに貫手をする。このままではメラは吸い込まれるはずだが…突如、イリテュムが苦しみだす。
メラは笑う
「お前は中身が空っぽだが…虚飾というからには形が…殻がある!お前は無限に物が吸収できるわけがねェ!どうだ!アタシの全力は…1000年間溜めに溜めたもんだ!喰らいやがれ!このクソボケがァッ!」
イリテュムが突如広大な火柱をあげて消滅する
それを見たメラが笑う
「ハハッ、ハハハハ!クソッたれが!おととい来やがれってんだ!アタシの勝ちだ!ハハハハ!」
嫌な予感がする…僕が感じた絶望はあんな簡単に消えるようには思えない…確かにメラも凄いが…何か違和感を感じる。
僕は直感に従ってメラの下に駆け寄る。
「あっ」
アリアーデが声をあげるが…僕は無視をする
メラがこちらを振り返り笑う
「おっ!クロウィン~オメェまだ逃げてねーのか!」
僕はたまらずに叫ぶ
「メラッ!逃げて!」
メラがキョトンとした顔になる…半身を吹き飛ばされながら…
メラは自分の体を見て叫ぶ
「なっ、なんじゃこりゃ~!」
倒れた…ピクリとも動かない
メラの後ろには体長5メートルぐらいの4つ足の怪物がいた…ワニのような顔をした怪物で、先程食いちぎったメラの体を食べてた…口元からメラの腕がはみ出ていた。
メラはぐったりとしている。
僕はメラを庇うように立ちふさがる…イリテュムは一歩また一歩僕らに近寄る。
目の前で立ち止まると…
僕の後ろで倒れているメラを喰った
一瞬だ…一瞬の出来事だ…何も反応できなかった…
今度は僕に向けて口を広げる…眼を閉じる…
口が閉じられる
突如、僕は何者かに突き飛ばされる
眼を開くとアリアーデが飲み込まれていた…
アリアーデは叫ぶ
「シュルヴィア!ウィン君を連れて逃げろ!コイツの狙いはウィン君だ!」
アリアーデは食われた
イリテュムはにやりと笑い、無数の触手を飛ばす。
この場には僕とシュルヴィアしかいない…皆は門をくぐり終えたのだ…だが、ペトロは向こうでまだ門を開けている。僕らは門を目指して走る…あと少し…
と思ったら、触手が僕の足をからめとる。
シュルヴィアが気づき、触手を斬るが、全身触手にからめとられ吸収される
吸収される直前、シュルヴィアが叫ぶ
「お坊ちゃま!走って!」
僕は動けない…体が固まって動けない…
イリテュムは僕の前で止まる
突如、声が響く
「遅れて申し訳ございません」
僕の眼の前に西洋人形が着るような茶色を基調としたフリルの付いたドレスと帽子をかぶった女性が現れる。その顔はシュルヴィアにそっくりだ…ただし、髪と瞳の色は違うが…この女性は赤毛緑眼である
イリテュムは唸るように言う
「…スペルヴィア…」
女性は無表情に言う
「その名で呼ばないでください…私はルヴィアとお呼びください…イリテュム、いや…コーデリア・ウィンコット副会長」
突如、イリテュムの怪物のような体が融解する…ドロドロしたものが溶ける…中からメラを抱いた小柄な女性が現れる。その女性はまるでメラを子供にしたような風貌である。メラと同じ真っ白な髪…メラと同じ真っ赤な目…メラと同じ真っ白な肌…何もかもメラと瓜二つだ…その女の子は黒を基調としたゴスロリを着ていた。
女の子は鈴の鳴るような声で笑う
「お久しぶりね!シュルヴィア・ウィンバード社長…他の社長は来てないの?」
ルヴィア…シュルヴィアは顔をピクリとも動かさず答える
「ほかの方は忙しいですから来ておりません。それよりあなたが抱いておられる。メラ…クロード・ウィンロック会長を返してくれませんか?その方には、まだやって欲しい仕事が沢山ございますので」
イリテュム…コーデリアはアッカンベーをする
「嫌よ!なんで私がそんなことをしなければならないのよ…折角、2000年かけて、そのうち、900年間は熱かったけれど…やっと、クロト君を手に入れたのよ!あなた方に渡す道理はないわ!」
シュルヴィアは淡々と言う
「会長はあなたのことから逃げてましたけどね…まぁ、最後の500年であなたから逃げてることも忘れてましたけど…」
コーデリアはキョトンとする
「えっ!どういうことかしら?私たちは相思相愛よ!愛しの彼が逃げるなんてありえないわ!」
シュルヴィアはあくまで冷静に言う
「会長はあなたのアプローチはうんざりしてましたよ…そもそも会長は性同一性障害の持ち主です。肉体は男でしたが、心は女性でしたよ。副会長…あなたはそれを知らず、求愛行動を示し、挙句の果てにレイプを行うんですからね…おかげで、会長の心は壊れましたよ。心のバランスを保つために肉体を女性の者へと変えましたけど…メラとして活動するとかなんとかわけわかんないことを言い残してどっか消え去りますし…大変でしたよ」
コーデリアはおどおどする
「嘘よ…そんなの嘘よ!私たちは相思相愛よ…ただ、彼がツンデレなだけよ!私はそれに付き合ってあげただけよ…」
シュルヴィアは事務的な口調で言う
「それはないかと思われます」
コーデリアは閃いたような顔をする
「まぁ、そんなことはいいわ!私が彼を愛してることには変わりないもの…女でも構わないわ!私が愛してあげる」
シュルヴィアはやれやれと首を振る
「あなたが会長を愛そうと勝手にして下さい。一つ質問ですが…この子は何ですか?」
コーデリアは軽く言う
「あっ!彼、私の息子よ!」
コーデリアは続ける
「ある時、<創世の結社>の女を見かけたからレイプして生ませたのよ。彼女、私の正体わかったみたい。だから、その子を生かしたのね…助かったわ!おかげで、クロト君と巡り合うことが出来たもの!というわけで、用済みだから私の中に戻そうとしただけよ」
シュルヴィアは無表情に言う
「なるほど…彼と会長が出会う直前に彼と接触してましたね」
「うん、クロト君と接触できるようにしないとね…折角、生ませたのだから死んでもらうと困るしね」
シュルヴィアは抑揚のない声で
「会長は差し上げます…ですが、この子は頂いてもよろしいでしょうか?」
コーデリアはあっけらかんという
「いいわよ。私はクロト君が欲しいだけだから」
僕は絶望に襲われる
「待って!メラは…メラを連れて行くな!」
コーデリアは天使のような笑みを浮かべる
「や~だよ」
シュルヴィアは冷たく言い放つ
「諦めなさい。あの方のわがままには誰も逆らえませんよ」
シュルヴィアはコーデリアを見据える
「それよりも驚きですね…あなたは与えられた巨大な力を支配できずに、その力に操られていたはずです。つまり、殺戮欲や破壊欲に…」
コーデリアは笑う
「ええ、けどあなた方が1000年前私の力を弱めてくれたじゃない…900年の時を使って、しっかりと物にしたわ」
シュルヴィアは薄く笑った
「Infernoにある自分の半身とは出会いましたか?」
コーデリアは首を振る
「いいえ。封印もそのままにしてるわ。けど、あなた達、あそこには行かないのね」
シュルヴィアは無表情に戻る
「ご冗談を…あそこにはあなたの尖兵がいるのですよ…自殺行為かと思われます」
コーデリアは手を振る
「だったら、来ないでね!バイバ~イ」
メラと共に消える
僕は泣いていた…泣くことしかできなかった。
シュルヴィアが近寄る
「うっとしいので泣かないでください。あなたにはやることがいっぱいあります。あなたには<アルテイスト>になってもらわないと困りますので」
僕は顔をあげる
シュルヴィアがグイッと顔を近づける
「あなたには彼女ぐらい強くなってもらわないと…会長を救うことが出来ません」
シュルヴィアは僕に一枚のカードを渡す
「これは<真理ゲーム>の挑戦権です。会長からあなたへと…」
僕は呆然と言う
「シュルヴィア…」
シュルヴィアの指が僕を黙らせる
「その名は…私の娘の名です。あなたに一途な恋心を抱いた女の名前です。私のことはルヴィアとお呼びください」
僕は黙って頷く
ルヴィアは僕の手を優しく握って歩く
「では行きましょう…」
僕はシュルヴィアに顔だけでなく、何もかもそっくりなルヴィアに連れ添われて行く
「
僕は古き世界を知り、新しい世界を目指す
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