結章 《時代の転換点》



僕は…クロウィンは、メラと共にモロッコにいる…僕らの眼前には、ディエ・エスとオルデアルの死体が…それだけでなく、先ほどまで戦っていたディエ・エスの部下、オルデアルの部下、それぞれの死体が横たわっていた。彼らは自分たちの全力を尽くして死んだのだ。


僕はこの戦の主役であった二人を見る。二人は死んでもなお倒れず、お互い自分の獲物を振りあげたまま止まっている。それはまるで彫刻のようだ…今にも動き出しそうだが、決して動くことはないだろう。二人は最後の一撃を決める直前、寿命が尽きたのだ…そして、彼らの周りも生命力を全て使いきったのだ…


メラはポツリと

「幸せそうだな…おい…こいつらは、結局、最後までバカだったか…」


僕はメラに聞く

「メラ…ここは、魔法にあふれたユーロピア…みんな魔力を持ってるのになんで魔法使わないの?」


メラは背を向けて言う

「簡単だ…そんな魔力だと人間一人は大砲の1門と変わんねーからだよ」


僕は首をかしげる

「とういうこと?」


メラはめんどくさそうに言う

「こいつらはレベルが低いのさ…それでなくユーロピア平均が低いのさ!大体3から4だな」


「メラは?」


メラは得意そうに

「あたしは20だ!」


僕は意外に思う

「へぇ~、つまりメラはそこに倒れている人の5~7人分の魔力をッ!イテッ!」


メラが思い切り僕の頭を叩く

「んなわけねーだろうッ!計算方法がちげーよ!」


メラがイライラしながら言う

「いいか、レベル1…こいつが一般兵士、中級魔法数発、上級魔法1発で魔力が空になり気絶する。わかったな!」


僕は頷く、それを見てメラは続ける

「レベル2はこの1が二人分だ!レベル3は6人分だ!ということはレベル4は?」


僕は必死に頭を回して答える

「10人分!1足す2足す3足す4で10!」


メラはニヤニヤしながら言う

「残念だ!24だ!1掛ける2掛ける3掛ける4だ!つまり、レベル5は120人分で、20になると…」


その数は莫大だ…


「ちなみに後ろで転がってる二人は5だ…奴らレベルなら多少マシな魔法は使えるが…周りがミソカスだからな…魔法では戦の趨勢は決めれねーよ…最後は人の力だ。だから、こいつらは、いやユーロピアの田舎もんはアホみたいに筋力増加に使いやがる!ケッ!面白味もクソもねーツマラン野郎どもだ!だからこそ…ユーロピアはオモシレェ~んだよな!おい!クロウィン!アレを見ろよ」


僕は上空を見る…そこには天を覆うほど多くな飛行機飛んでいた

メラはそれを見てせせら笑う

「ありゃー、帝国の爆撃機だ…かわいそうになぁ~中世レベルの文明に近代兵器で蹂躙するってか!とうとう動き出した!クロウィン!古い時代は終わったぞ!新しい時代が…世界が始まる!取り残されんなよ!」


メラは進む…背に旧世界Great Oldを残して…




ユーラシア連邦アナスタシアグラード…


この国を統べる女王が口開く

「ニナちゃん…動いたわね…カイン!」


カインが現れる

「ここに…全軍揃っております!今よりバルト三国とスカンジナビアを併合に向けて進軍を開始させます」


アナスタシアの口がゆがむ

「そうしなさい…これは賭けよ…私はメラちゃんに賭けるわ!」


カインが答える

「ニナ殿も同じ返答だそうです」


この時以前、実は帝国は二つ…いや、3つに分裂したのだ。香皇国とヒンズー王国を境に東西に分裂したのだ…


亞洲帝国皇帝のニナは二つの称号を持っていた。一つは宗教的な君主・天子と世俗的な君主・皇帝である。ニナは皇帝位を二人の少女に禅譲した。一人は彼の妹ユニである。もう一人は…ニナとユニは名前の通り、完全な中華の民ではなく異人の血が混じっている。彼の母はアラビア帝国の血筋の者であるのだ。

ニナはもう一つの皇帝位を彼女の従妹に当たるファティーマという少女に禅譲したのだ。本人は天子として名目上二人の上に立つ身分に収まったのだ。これで帝国は3つに分裂したのだ。


世界は動く…突如発生した伝染病により、ユーロピア全土は止まり、その間を超大国が躍進する。





だが、そんなものは表でしか現れない歴史である…表には必ず裏がある…裏の歴史が始まる




この町に名前は無い…だから人々はこの都市を無名都市ネームレスと呼ぶ

この町は3つの区画に分かれている。Infernoと呼ばれる北部、Purgatorioと呼ばれる南部、そしてParadisoと呼ばれる天空都市である。


僕らは今Paradisoにいる

「メラ!なんでこの大地浮いてるの!」

僕は大はしゃぎだ


そんな僕をメラは殴る!

「うるせーぞ!テメェはガキか!」


「痛い…なんでここに来たの?」


メラは頭を掻きながら

「六角の会合が開かれるんだとさ…1000年ぶりにな…<創世の結社>、<黙示録の教団>、<終末の騎士>、そしてなんで今更出しゃばってきたのかはわかんねーが<新世界公司>の4勢力が会合の決議をおっぱじめやがった。さすがにアタシでも逆らえねーよ。たく、クソッたれが…おととい来やがれってんだ!」



僕らは空中に浮かぶ島の中央にそびえ立つちっぽけな教会に入る

教会の中には六角形の机と6つの石で出来た玉座、そして奥の祭壇の前には目深にフードをかぶった一人の修道士いた。彼は祭壇の前にある椅子に座り、せわしなくペンを走らせている。


メラは突如、彼の前に立ち、机を蹴り飛ばす…インク壺が舞い、辺りを汚す。


その後、まるで時間が逆流したように、全ての物が元に戻る


メラは笑う

「変わんねーな!ここは…」


「おい!クロウィン!見たか…ここは同じ時間を繰り返している。神官の手元を見ろ!」


神官の手元を見るとそこにはひたすら同じ言葉が並んでいた。神官は一心不乱に一つの単語を書く…<YHVH>と…


メラは遠い眼をしながら言う

「ここは…この島は時間から…時代から取り残された物だ…ここは二度と動くことはないだろう…」


その時、一人の男が入ってきた。長い髪を総髪上げし、サングラスをかけた男だ。服装はロングコートにブーツである。横にはまるで女神みたいな美貌を誇る女性を連れている。その男が僕らに気づき、笑う。

そして、軽く手を振る

「久しぶりですね。ミスメラ…あなたはだいぶ変わったようだ」


メラは忌々しそうにいう

「…獣…」


その言葉を聞いた男がニヒルに笑う

「もう二方が来ますよ。NovyiMirは忙しいそうですから遅刻するみたいですよ。暇ですので、少しお話しましょう」


「お前と話すことなんかねーよ!」


「まぁまぁ、そんなこと言わずに」



結局暇だからメラは話すことにした

「クソッたれ、なんで会合を開いた」


<獣>ことファーザーは

「簡単ですよ!もうすぐ新世界が来ます!と声が聞こえたからですよ…あなたも聞こえたはず…」


メラも同意する

「あたしはお前と違って感じ取っただけだ…だが、アイツが許さねーだろう」


ファーザーは首肯する

「だからこその会合です。アレが眠っている今だからこそ…おや?残りの二組がいらっしゃたようだ」


入り口からペトロを連れたヨシュアと、何故かフランチェスカを連れたアリアが入ってきた。

アリアは僕を見た瞬間顔をほころばせた。


ヨシュアが口を開く

「ルヴィア殿到着と共に会合を始める」




モロッコ…


先程までメラたちがいたところに一人の男が立っていた。

彼の名は…


突如、彼の傍…帝国軍の陣地から一台の車が出てきて、彼に向けて一直線に向かう。そして、彼の前に止まり、中から一人の少女が出てくる。緑を基調とした場違いなほど豪勢なドレスだ


男は頭を軽く下げる

「これはこれは、この間、西の皇帝となったファティーマの嬢ちゃんじゃないか」


ファティーマは鈴のなるような声をあげる

「お疲れ様…イリテム」


…イリテム…奴隷となったクロウィンを助けた、あのイリテムである


イリテムは頭を掻く

「だから…俺の名前はイリテムじゃねーよイリテュムだよ…虚飾!わかってる?」


ファティーマは首をかしげる

「何当たり前なことを言ってるの?あなたの名前はイリテム・・・・でしょ?」


イリテュムは地団太を踏む

「クッソ~、厄介な言霊をかけやがって!どいつもこいつも俺の名前を正しく聞き取ることが出来ねー!おかげでこの姿から変われねーじゃん!」



 彼の名は<売国人イリテム>


<売人メラ>と同じく物を売る商人であるが、この男が売るのは国である。今回はカルタゴ、モロッコ、ヒスパニア、カタロニアを帝国に、バルト三国、スカンジナビアの諸国家を連邦に売ったのである。


「さぁ~て次はどうすっかな。俺がいないうちに会合を開こうとしてるみたいだが、邪魔しに行くか!新世界!ふざけるな!俺は今の世界が結構好きなんだぜ」



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