急章 《ユーロピア大戦1》




ーバチンー


その音と共にメラとクロウィン君は消えた


ヨシュアはため息をつく

「転移魔法ですか…それも結構強引なやつだね…ほら、歪みが出てきた…」


「我が主よ…いかがなさいますか…」


「我々も戻ろう…ここにいても我々ではどうしようもない…今年は試練の年になるぞ…」


その後彼らも姿を消した





ローマから広まった病原菌はあっという間にユーロピア全土に広まった

だが、戦を止めるにはまだまだかかりそうだ




フランク民主共和国ヒスパニア人民連邦共和国国境SIDE…

そこにはフランク軍8万とヒスパニア軍12万がしのぎを削っていた

フランク軍総大将バーゼル元帥、シュステルベルクに対しヒスパニア軍総大将5元帥である




「敵、中央に兵力を集中させています!」



バーゼルは築いた要塞線から落ち着いて支持を出す。

「では、5番隊と6番隊を中央に置き、矢を浴びさせよ」



「2番陣地が炎上してます!」


「慌てなくてもよい!落ち着いて消化した後、新しい屋根を付けるがよい」



バーゼルが築いた要塞線はヒスパニア軍の百を超える投石器から飛んでくる焼石や油壷、雨のように降り注ぐ数万の火矢、大弩では破壊することが出来ない

焼石が要塞線に築かれた矢避けの屋根を破壊するが誰も慌てない…壊れた屋根を捨て、床にある小さい穴に杭を差し込んで台を作り新しい屋根を立てる。その時間はほんの数分で終わる。これだけで矢の被害は劇的に減らすことが出来る。


「元帥!敵の四度目の総攻撃です!」


バーゼルは堂々と命じる

「敵は大分お疲れになるだろう!シュステルベルクに伝えよ!撤退したら存分におもてなししろと」



ヒスパニア軍が放つ矢は屋根によってほとんど効力を発揮しないが、フランク軍の矢は次々と敵を減らす。

城壁に上ろうとする兵に対しては、城壁に作られた穴から出るボウガンによって撃ち落とされる。それだけでなく城壁の上からは火の付いた油や石が落ちてきて、誰一人城壁に上らせない。


バーゼルは後ろを確認する

「援軍はまだかのう…」



「報告いたします!後方からの連絡です。ローマ神聖国の援軍が到着いたしました。アラバルト将軍、シンフォニア将軍が率いる8万がもうじきここに到着いたします。」


バーゼルはうきうきという

「シュステルベルクに伝えよ。側面攻撃だと」



敵が突如前後に分断される。シュステルベルクの側面攻撃である。シュステルベルクの戦法は基本側面攻撃で急所を潰すことである。

だがシュステルベルクは本陣を狙わず分断にとどめた。その後、ヒスパニアの騎兵がシュステルベルクを追跡するが地面に吸い込まれる。ここは事前に堀り、板をのせ土をかけた簡易落とし穴である。シュステルベルクは隠した槍兵で兵を全滅させる。


その後、敵の撤退と同時に要塞線内側に戻った。



その日の夜…


火を囲んでジジイ四人が団欒していた。

バーゼル、シュステルベルク、アラバルト、シンフォニアの4人である。


アラバルトが口を開く

「おお~随分派手にやっとるの~」


バーゼルが

「敵が派手に火をおこしたからなぁ」


シュステルベルクが

「敵は侮れんぞ…」


シンフォニアが

「別に勝つ必要はない…守り切ればいい」




その一方で、ヒスパニア軍では…



「今日も突破できなかったかぁ…」

小太りした男が口開く


「さすがに、あの堅い守りをこれだけで突破できるとは思っとらんわ…」

髭を生やした老人が口愚痴る


「けれど、最精鋭の1軍団、2軍団、3軍団を引き連れたのですよ。これで、失敗したら我々は人民代表に粛清されますよ!」

唯一の女性元帥が大声を上げる


「やれやれ、頭の固い主力三個軍団はいささか戦い方が旧すぎる!ここは新たに編成した第4軍団を投入すべきではないのかね?」

フードを深くかぶった男がいう


「それしか…方法は…ない」

この中で異彩を放つアルビノの男がいう


老人が〆る

「では、同志司令官たちにも知らせろ。明日は第4軍を投入すると」



翌日…

戦況は一変した。ヒスパニア軍は新たに編成した最新鋭軍の第4軍を投入したからである。第4軍とはすなわち銃火器部隊である。


「全砲門一斉射撃せよ!奴らに弾の嵐をくれてやれ!」

砲兵指揮官が号令を出す。一斉射撃の後、100門の砲口からでた砲弾が壁に着弾、バラバラと壁が無残に砕け崩れ落ちる。



老人…ベルセウス同志元帥が命令する

「第4軍団以外は総攻撃せよ…突撃!第4軍団は射撃を続けよ!」


第4軍団の激しい砲撃により城壁の欠片だけでなく、人も吹っ飛ぶ。そして、最も砲撃が激しかった中央が完全に崩れ穴が開く、大部隊がそのまま侵入するには十分な広さである。突撃部隊はアルビノのアウルス元帥と小太りなガジス元帥に率いられ攻め込む。そして、はじき出された。



「突撃せよォッ!」

アラバルトの一言で、ローマ神聖軍が猛突撃をする。その勢いはまるで大津波のようである。


アラバルトの軍はヒスパニア軍を正面からねじ伏せる。それだけでなく、左翼からはシュステルベルクが、右翼からはシンフォニアが側面攻撃を行い、ぶち抜く。ヒスパニア軍が脆く崩れ去る。


ベルセウスが号令をかける。

「砲撃せよ!対象は城壁から、敵に変えよ!」


女性元帥セールススが口を開く

「待ってください同志!現在は混戦中です。味方も巻き込むつもりですか!」


ベルセウスが冷酷に告げる

「わが軍は第4軍団以外はもう機能しておらぬよ…見ろ!ガジスはシンフォニアに、アウルスはシュステルベルクに討ち取られたぞ…指揮官がなければただの遊軍だ…敵を固定させる役割を与えようではないか!」




「ロルス同志元帥!ガジス元帥、アウルス元帥が討ち取られました!」


フードをかぶった男は砲撃にさらされている味方を見て号令する

「皆の者!俺に続け!奴らを見捨てるな!」


ベルセウスはそれを見て

「ほほう!ロルス元帥は優秀だな!儂の意図を理解したか!」



その後、半日かけて釘づけにしたがとうとう限界が来た。ロルスがアラバルトによって討ち取られたのである。その後、連合軍はヒスパニア軍に最後の突撃しようと行うが、ヒスパニア軍は突如柵を立てる。その後、二列に並び新兵器のマスケット銃を構える。


セールススが号令をかける。

「撃て!」


連合軍の最前線が崩れ落ちる。一列目が後方に移動し二列目と入れ替わる。


「撃て!」


また、崩れる。



だが、連合軍も黙ったままでいるわけがない。

シュステルベルクが大声で号令をする

「騎兵弓を放て!」


走らせている騎兵は各々の武器を捨て、弓に持ち替えて放つ。

これにより銃兵が倒れる。その後、騎兵は正面突撃をやめ、側面に移動しようと迂回する。

後方の歩兵は、前2列は大盾を構え、後方は弓を放つ!これらの戦法により、ヒスパニアは急速に兵が失われ、敗北した。


フランク・ローマ神聖軍損害5万

ヒスパニア軍死傷8万、捕虜3万




ブリテン島ブリタニカSIDE…


海に浮かぶ多数の船の残骸…ぐしゃぐしゃになった船にかけられた旗はほとんどがブリタニカの旗であった。突如ブリタニカに上陸したのはもちろんこの男!ディエ・エスである。

「俺様が直々に来てやったぞォッ!存分に楽しませろォッ!」


これに対するのは

「皆の者!我らの血と誇りにかけて守りきるぞ!」

エリザベータが叫ぶ!



そして戦が始まる…


ブリタニカ7万に対してオプス軍…この軍は全てオプスの血縁者と古くから仕えているもので構成されている。その数、2万…普通は3倍以上の敵と戦うのは無謀であるが、この軍にはディエ・エスがいる。それだけでなく、<ディエ・エスの指>であるオプス姓の10名とディエ・エスから二つ名を貰った者、その全てが揃った最強の軍である。この軍と正面からやれるのはベルケル、シモンを添えたスワロフの軍とオルデアルの軍のみである…今までは


そして今は…騎士女王が戦場を駆ける。


彼女はとにかく派手であった。戦開始と共に単騎で陣に突っ込む。敵は弓を放つ。無数の矢が彼女に殺到するが…彼女は一振りで全てを叩き落とした。その次も…またその次も全て叩き落す。この化け物がだんだんと近づく…前線の兵士は騎士女王に飲まれ…


「誰が最強だァッ!それはこの俺様だァッ!」

一喝で不安が消し飛ぶ。ただの一言で軍は立て直す…いや、強くなった!



騎士女王は笑う

「さすがだ!よく我が前に立ちふさがった!」


そのまま手綱を引っ張り、馬が飛び上がる。高く高く跳躍する。敵を押しつぶし着地する。

「我が名はエリザベータ・オフ・ブリタニカ!そなたらの力を示せ!我が刃を受け止めてみよ!」

そのセリフを放ち、馬が前足を嘶きと共に上げる。その圧倒的なカリスマ、魅力は敵味方ともに目に焼き付けた。



ディエ・エスが笑う

「グハハハハハハ!面白いな小娘!俺様のところまで来いッ!この俺様を楽しませろォッ!」


エリザベータは進む…誰も止められない。彼女の周りは…首が飛ぶ血が飛び散る。


エリザベータは心の底から楽しんで叫ぶ

「どうした!?私はここにいるぞ!エリザベータはここだ!来い!私と戦え!」

その叫びは敵の戦意を奪う。彼女は戦争を楽しむ。


その時、エリザベータの背後が吹き飛ぶ。

「そこまでだ…小娘、ディエ・エス以外に目立つ行動を控えよ!虫唾が走る!この儂が蹴散らしてくれる!この、偉大なる血を最も色濃く受け継ぐ長男であり、最古のオプスである儂、ゼムン・エス・オプスが相手じゃ!貴様に真のオプスの力を見せてやる!」


彼は先程の自己紹介の通りディエ・エスの長男であり、オプスの血統を唯一無二と信じ、彼の判断基準はオプスの血縁者か否というほど徹底したオプス至上主義である。彼は地上最強の怪物の血を受け継いだことに誇りを持っていた。そんな彼が血しぶきをあげて崩れる…エリザベータの一太刀により打ち取られたのである。



エリザベータは倒れるゼムンを見た後、周りを見て愕然する。12騎士の9人は他のオプスや、二つ名持ちと互角の戦いを繰り広げているが…兵が負けている。確かに質が高い軍だとは聞いていたが、ここまで圧倒的な差が開くなどとは誰が予想出来よう…


メルランは爪を噛む

「やはり…層が厚い…集団の強さが違い過ぎる…陣地展開、伝令速度、集団の速さ、どれをとっても速さが違い過ぎる。トップが戦っても副官が同レベルの指示が出せる。軍の作りが違う」



一方でネスト・エス・オプスは

「こちらが圧倒するのは予想通りだが…決め手がない。思いのほか12騎士の生き残りがしぶといな…あとは兵の数か…ディエ・エス卿!ご出陣の準備を…騎士女王が来ます」


騎士女王降臨せり

「来てやったぞぉ!ディエ・エス!その首貰い受けるぞ!」


ディエ・エスは壮絶な笑みを浮かべて

「行くぞォッ!小娘!」



「私の剣を受け止めてみろ!」

エリザベータは思いっきり打ち込んだ。先程ゼムンを切り伏せた一撃である。


「ぬるいわ!」


止められ、はじき返されたのではなく!砕かれた!


その衝撃によりのけぞるエリザベータの顔には信じられないといった表情が浮かぶ。

ディエ・エスは大矛を再度ふり、馬の首を刎ねる。エリザベータめがけて、豪速の大矛が迫るが、エリザベータは

「アハ」

という声をあげて、大矛の上に飛び乗る。そして背中にある大剣を抜く…種類最重量級騎士剣レオンハート…相手の馬ごとブッタ斬る剣である。そして斬り合う




エリザベータは二度目の壁にぶつかる。一度目はオルデアルである。彼さえ倒せば戦局は変えられる…だが、倒せない…生まれてからの勝者は二度目の敗北を味わう。



ディエ・エスは愉快に言った

「久々に全力が出せた。悪くない戦だ!騎士女王…次までにもっと強くなれ!俺様はオルと違い引退などはせぬぞ!俺様はまだまだ強くなるぞ!」




オプス軍は去っていく…その手に9個の12騎士の首を持って…ブリタニカはこの戦で多くの物を失った




オプス軍損害3000

ブリタニカ軍損害5万5000(そのうち海軍は1万500)


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