急章 《審判の日》
黒い靄となって現れた預言者の負の感情がどんどん巨大化し、女性の姿となり実体化する。その顔はウルティマそのものであった。爛々と赤く輝く瞳が攻めてくる都市国家連合軍を見つめる。そしてその顔が嗤ったように見えた。親聖女派の残党狩りを行っていた都市国家連合の騎士団は口をあんぐりと開ける。巨大なそれが手を伸ばすと…一気に大混乱となり逃げるが…残念ながら手のほうが速い。触れられた兵は皆、骨まで融解してしまった。つまり、この黒い靄は瘴気の塊であることだ。皆は必死に逃げるが…追いつかれる…また消える…一団がいとも簡単に消える。そして急にその巨体が弾けた。ローマ全域が瘴気に覆われる。勿論…騎士団30万は全滅だ…それだけでなく、全ての生命体がローマから解けて消え去った…生き物だけでなく、歴史的建造物も跡形もなく…この世界からローマは消え去ったのである。
それをメラはニヤニヤとみる
「いや~気がすっきりしたぜェ!こんなにも気持ちがいいものとは思わなかったぜぇ!ザマァみやがれってんだッ!ハッん!」
僕はただ震えることしかできない。人がここまで醜悪なものになれるのか。メラが恐ろしくてたまらない。けど僕は堪える。
それを眺めるのはメラ以外にももう一組がいた。
白い垂れ幕がかかる白い神輿から声が響く
「我が弟子ペトロよ…私が与えた鍵を使いなさい…」
赤い十字架が描かれた黒い服を着たペトロが恭しく頭を下げる
「畏まりました…我が主よ…」
そして前に立ち右手に金の鍵を、左手に銀の鍵を持ち打ち鳴らす。その瞬間天が光と共に二つに割れる。そこから無数の人影が徐々に現れる。それらは徐々に増え天を覆う。それらは一体一体、全て光り輝く天使である。
白い神輿に座する者は口を開く。とても美しい声だ。
「どうやら天使しか来なかったようだな…神族はなぜ来ないのだ?箱庭が消え去ったというのに…全く我が父だけでなく彼らの考えも理解できないよ…人の身に宿る期間が長すぎたのかな?」
天使たちは光属性の魔法で瘴気を浄化しようと試みるが、瘴気はまた女の巨人へと姿を変える。それだけでなく無数の触手を伸ばす。触手と天使がぶつかり合い空が幻想的な光に包まれる。
メラはその光景を冷めた目で見つめる。
「
多くの天使が火の玉となり散っていく。
ペトロが口を開く
「我が主よ…このままではレギオンが…」
主が言う
「案ずるな弟子よ…マグダラのマリアはただ穢れただけだ…100万もあれば穢れなど浄化できる。問題は核だ…アレをどうにかしなければならない。我が弟子よ…浄化が完了したら核を天へお連れしなさい…」
「畏まりました…我が主よ…」
その時、一人の女が舞い降りた…
ペトロは激昂しようとするが主からの濃厚な殺気に気おされて黙る
主が口を開く
「
メラは懐かしそうに言う
「久しぶりだなぁ…ヨシュア…元気そうだなぁ…1000年ぶりに戻ったこの地はどうだぁ?だいぶ面白くなっただろう?見ろよ!箱庭が消えたぜェ~」
言った瞬間メラの胸元に風穴があく
ペトロが大司教の杖から放った攻撃だ。通常の人間はこの時点で死ぬが…メラは通常の人間ではない。ブチブチと嫌な音をたてながら再生する。
ヨシュアが口を開く…ちなみに姿は未だに白い垂れ幕によって隠れたままだ…
「お前の狙いはマグダラのマリアだろう…そうはさせない…彼女は私の妻だからな…」
メラは急に考え込み、僕に無かって言う
「クロウィン!撤退だ!この場を去るぞ!劇はもう終わりだぁ!クソッたれがぁッ!おととい来やがれってんだッ!」
といった瞬間僕らは光の壁に包まれた。僕らは白い服を着た一団に囲まれる。
メラは忌々しそうに
「神族め…」
囲んだ集団の一人が口開く
「それは正しいようで間違っているな…我らは天族というものだ…人の身から神の使いへと昇華した者だ…」
メラはイラつきながら言う
「んなことは知っている…あたしが言いたいのは、なぜクソッたれな神族は貴様らみたいなカスを寄越したということだ!おかげで舞台の趣旨がズレたじゃねぇーかぁヨォッ!」
「そうはさせるか!」
白衣の一団が阻止しようしたが…全員メラによって解体される。
メラは大剣を超神速な速さで振りまわしながらバラバラにする。
後ろを振り返ると天使たちのレギオンは寄り集まってその身を燃やし、1柱の光の柱を作り、瘴気を圧倒的な光量で浄化する。そして今瘴気が消えた。
「我が弟子よ!今だ!」
ヨシュアが命じる
ペトロは杖に溜めてた魔力を解放する。そして自分の頭上に魔法陣を作る。その魔法陣を見た瞬間…
メラは
「聖槍かよォ…」
魔法陣から突如黄金で出来た槍が現れる。その槍は…かつてヨシュアがイエス・キリストと名乗っていた時、わが身を貫いた槍をコピーした槍である。
ーゴウッー
槍が轟音を立てて、核であるウルティマを貫く。ウルティマが光の粒となって消え…
「くはははははははははははははははははははははははははぁッ」
メラが突如笑う
その瞬間ウルティマがマグダラのマリアごと爆発した。
メラが続ける
「ざーんねーんでッしたッ!これでマグダラのマリアは死んだぜぇ!つうか~あたしがお前らの介入に気づかないほど鈍くねーよぉ!対策は立てるに決まっているだろう!」
ヨシュアが呆然と言う
「…ど、どういうことだ…」
メラは得意げな顔をして言う
「原理を教えてやるよ!飽和したのさ!瘴気は浄化されてねーよ。吸収されたんだよぉ!ウルティマにぃ~」
メラは楽しそうに続ける。
「あの瘴気は確かにマリアの物だ…お前らはそれを浄化しようとした策は間違っちゃいねぇ!そこにウルティマがいるとこれは間違いだぁ~ウルティマはその瘴気を吸いとったのさ!やつは瘴気との相性が抜群にいいぜォ~」
ヨシュアは狼狽える
「なら天使達はどう説明する!彼らの力は消えたぞ!」
メラはさりげなく
「それはマリアが吸いとったんだよォ。マリアは聖躯で出来ている。瘴気よりも天使の力の方が馴染むのさ…それを吸いとり元の力を取り戻そうとした。二人とも力を取り終えたところで、ぺトロの放った力で飽和状態になり、核であるマリアが…ボンッと吹っ飛んだのさ!」
メラは更に悪夢を叩きつける
「ちなみに核が吹っ飛んだからウルティマも吹っ飛んだぜぇ…奴の体は瘴気で構成されてるから…ってもう想像はつくよな?」
ぺトロは呆然と呟く…
「世界にばらまかれる…」
「せーいかーい!だぁーいせぇーかぁーい!」
ローマ近郊の村では…
「おい!アンドリュー!おい!どうした!大丈夫か!…何てこった!おお!神よ…彼に安らぎを与えたまえ…」
死んだ農民の体には黒い斑紋が浮かび上がっていた…
後世の歴史家はこの病をこう呼ぶ
…
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