急章 《神々の黄昏》




ここはローマ、聖なる永遠の安息を約束された聖都…いや、今は火の海に飲まれている。この地は今他国ではなく、聖ローマ各地の都市に攻められている。


現在ローマを守護してるのは聖杯騎士団を筆頭とする親聖女派の騎士団20万と狂信的な信徒50万からなる70万に対し、都市国家連合は神兵、神聖騎士団、聖騎士団、教会軍からなる30万である。普通なら、数の差で都市国家連合が敗北するが、彼らには新兵器があった。それは大砲である。いくら白兵戦に長けた騎士団も死兵と化した狂信者達とは戦いたくはない!彼らは大砲、大弩、投石機、弓矢を駆使してなるべく遠くから、城を攻略している。


都市国家連合を率いるのはボルジア枢機卿元教会軍総司令官である。


伝令が伝える

「報告致します。北門、西門、南門開きました。残りはここ東門だけです。」


ボルジアが言う

「ご苦労、引き続き遠距離攻撃を続けろ!開いた門から兵が雪崩れ込むぞ…散弾と弓矢で倒せ!そのあとは重装騎兵で突撃し、歩兵はそれに続け!確実に殺せよ…死にたくなかったらな!」


副官が言う

「東門が開きました。予想通りに騎兵が突撃しましたな!」


ボルジアが命じる

「弓兵は続けろ!槍兵構えろ!砲兵散弾に切り替えろ!ギリギリまで…引き付けろ!」


砲声が止んだのを機に騎兵がスピードを上げる!敵に突っ込もうとした瞬間…


「撃てぇッ!」


砲口から無数の散弾が襲う…騎兵が崩れ、敵の槍兵が蹂躙する。


「槍兵の隙間からボルトを撃て!」


大砲に生き残った兵も次々とボルトに倒れる。


後続するローマの歩兵には

「大砲を炸裂弾に変えろ!打ちまくれ!投石機、大弩、弓兵打ちまくれ!槍兵訓練通りに動けよ!」


鋤や鍬を持った信徒達は近づく事が出来ずに死んでいく…


これは東門だけでなく、他の門も同じであった。威容を誇った70万が急速に消えていった。



大神殿内では、サイラン以後男性神官は皆火炙りに処されたので中は女性のみとなっていた。


そこは今異様な光景に包まれていた…大聖女の周りは多くの女性の自殺した遺体が転がっているのだ。彼女らは聖女、巫女、シールドメイデン達である。敵の手に掛かるぐらいならと自殺したのだ。それを大聖女は何も言えずに見続けた。本来なら彼女も自殺するはずだが、出来なかった…彼女は発狂しそうになった。


そして…


奥の暗闇からコツコツと足音が響く…


暗闇から真っ赤な眼をした白髪の女性がヌッと現れた。


彼女は逃げる…あの白髪鬼から…彼女に捕まらないように…逃げる


僕ことクロウィンは絶賛おう吐している。何故ならメラが自殺した遺体を食べているからである。


肉を…血を…魂を…魔力…いや、魔力の元となるマナを…食べているからである。


メラは高らかに笑う

「久々に上手いものを食べたな…やはり若い女は上手いな…特に処女は格別だ…たまんねーなぁッ」


僕は聞く

「メラ…どうして…」


メラは口元から血を滴らせて言う

「そういえば、クロウィンお前はシ族の主食を知らなかったみたいだな…それは…人間だよ…ついでに言うと炎と霜の一族の主食も人間だぜェ。まぁアイツらは人間の死体と一般人の献血を飲んでるけどな…つか、あたしと変わんないぜぇ。お前これからコイツらと付き合うから慣れろよォ!」


その後全部平らげたメラは鼻歌を歌いなから奥に進む…


「メラ…行き先は…」


メラはウキウキしながら言う

「封印の間だぁ。あの小娘は今そこを目指して走っている。」


「封印を解くの?」


メラは口角を吊り上げる

「い~やぁ、あたしは見守るだけだ。アイツが破滅するのをな」



その間、ウルティマは走っていた。息がキレても走る。転んでも起き上がって走り続ける。何故そこまで走るのか…愚問なり…それは…


「逃げなきゃ…あの悪魔が追い付かれる前に…どうか神よ…助けて!私は死にたくない!けど…何処に逃げれば…」


そして何者かの声が頭に響く


…封印の間…


ウルティマは虚ろな眼で目の前の扉を見る…


その扉は…とても大きい…高さは優に10メートルは越える。たがその扉に眼がいくのは大きさではない…何故ならその扉はミスリルで出来ており、扉を塞ぐ鎖はオリハルコンで出来ているのだ



ウルティマはフラフラしながら近づき、鎖に触れた。


鎖が砕けた…扉が開かれる。


ウルティマは虚ろな声で助けを求める

「預言者様助けてください!」


扉から…負の感情が溢れた…ウルティマを飲み込む



預言者とは神の子イエスから力を与えられた者である。人々は彼女をこう呼ぶ


<マグダラのマリア>と


彼女は2000年かけてその体をつくり変えられた。

その身は穢れを嫌う。その身は聖水で洗わなければならず、その身は主の体であるパンと主の血であるワインしか受け付けない。それに加え彼女は眼が見えず、耳が聞こえず、臭いが嗅げず、声を発することが出来ない、繊細な体である。そんな彼女の心の声を聞き、彼女の身の世話をするのが大聖女の仕事である。だが当代の大聖女は…いや、大聖女の名を騙った少女は…大聖女を殺した…そんな彼女が声を聞こえるはずがなく…あまつさえ…監禁したのだ!自分の面倒がみれない彼女は徐々に穢れていくのは自明の理である。そんな彼女は少しずつ世界を恨んだ。恨むこと10年、今まで封印された扉が開かれた!


メラは声無き声を挙げる


さぁ、堕ちた聖母よ!今こそ世界に復讐せよ!



ウルティマは負の濁流に飲まれている。

その心は謝罪に満ち溢れているのか…否…


「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして」


疑問である

「どうして私だけイジメるの?私はただ幸せになりたかっただけなのに!私は何も悪いことはしてないのに!なんで!私だけ!ドウシテ?ソウカ、コレハ夢ダ、眼ガ覚メレバ…れなーどガ待ッテル!私ヲ抱キ締メテクレル!コンナ不愉快ナ夢ヲ壊ソウ!」


僕はそれを見て更に吐いた…なんと醜悪なんだろう。ウルティマは…いやウルティマだったものは偶然にも世界を憎んだ…いやメラは憎むことを分かっていたのだ!預言者の負の感情とウルティマの負の感情が今…融合した。


メラは笑いが止まらない…なんとか堪えて言う

「クククッ、悲劇のつもりが惨劇になっちまったなぁッ!預言者に自我はない…どうしても自我を持つ核が必要になる。ウルティマ感謝するぜぇ…お前のおかげで舞台は整った!」


メラは高らかに、天に向けて言う

「クソッタレな天使ども!クソッタレな神族ども!さぁ、始めるぞ!茶番劇をッ!」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る