転章 《悲劇への足音》




  五国連合本部…


今五国連合はどんよりしていた。無理もない。現在戦開始から3日目であるが連戦連敗なのである。ローマ神聖の攻めの主力が消えた後、次狙われたのがブリタニカである。ブリタニカは踏ん張ったが結果は12騎士の内3人を死なせることになった。そして3日目である今日は…


攻めてこなかった。


これにより五国連合が攻めたが戦況は現在、見たところだと敗戦が濃厚である。当初、51万VS20万の比率が初戦、こちらが20万を失った。その後は死者は一方的にこちらが増えるだけだ。何故なら…質が違うのだから。各国はグレートオールドがなぜ強いのかを理解していなかったのである。彼ら三人はとにかく速く強いのだ。その三人の背を負うのは並みならぬセンスが問われる。つまり彼らは強い将に率いられた兵ではなく、物凄く強い将に率いられた強い兵なのである。しかも彼らは死を恐れない。死とは彼らにとっては祝福の一つでしかないのだ。


現在、五国連合の指揮はバーゼルからサイランに移行している。


サイランが唱える

「前線に伝えろ。両翼に軍を集めろ。左右から回り込んで包囲しろ」


そしてサイランが振り返る

「レナード」


レナードは忌々しそうに舌打ちをする

「わかっている…だが今は戦に勝つことに集中するが全てが終わればお前を火炙りにしてやる」


その言葉にサイランはレナードに光の消えた光彩を持つ眼を輝かせて言った

「ああ、俺もお前もこの戦に生き残ればな…レナード、中央は薄くなっている突破しろ」


レナードは憎しみのこもった眼をサイランに向けて去った


サイランはポツリと

「母上これでよろしいのでしょうか…」



その時、レナードは走っていた敵陣の中を、眼前の敵は全て葬り去った。横と後ろにはいくつもの試練を共に乗り越えた仲間がいる。負ける気がしない。そして目の前には今回のターゲットオルデアルが両腕を広げて笑っている。まるで抱きついて貰いたいような姿勢だ。そんなのお構いなしにレナードは剣を振るう。自分が持つ圧倒的な魔力を剣に、自分の腕に、全身にこめる。

そしてそれを圧倒的な速さでオルデアルの首を刎ねようとする。ガトーの時よりもさらに技を磨いた。雑念を取り払い一本の剣として振るう。


それをオルデアルは嗤って砕いた


オルデアルは言う

「君は何を焦っているのかな?そんなに無理せず、肩の力を抜いて。今の君の剣を受けた感じはね。軽いね」


その言葉にレナードは激昂する

「貴様もガトーと同じことを言うのか!俺の剣が軽いだと!ふざけるな!俺は勇者だ!俺は国を!信徒を!そしてウルを守らなきゃいけない。俺には覚悟がある。信念がある!俺は皆の期待を一身に背負って個の剣を握っている。その俺を軽いだと!ガトーも貴様も!俺のいったい何がわかるというのだ!


その言葉を聞いてオルデアルは肩を震わせる。必死に笑いをこらえてるようだ。

「いや、クッ、失礼、申し訳ない。笑うつもりがなかったんだけど…あまりにも真顔で言うから、ね」


オルデアルは息が落ち着くと急に巨大な殺気を放った。

「君にこれだけの殺気が出せるかな?ガトーは少なくとも出せた。いや10年前のガトーか…」


「貴様はガトーに会ったことがあるのか…」


オルデアルはにっこりとする。周りは戦っているのに、なぜかこの空間内は静寂である。オルデアルの兵がレナードの兵を近づけないようにしているためだ。


「勿論!10年前の大戦で…当時彼は先先代の三大将…彼は彼らの副官を務めた。三大将の内、俺は白騎士を、ディエ・エスは赤騎士と青騎士を殺した。白騎士は私と戦う前にスワロフと戦い、負け、その腕を斬られていたが…彼女の頭脳はスワロフと戦った時よりも冴えていた。俺は彼女を殺した後副官の彼を殺そうとして失敗した。逃げられた。私は思ったね。彼は面白い奴だ。俺と同じ重みを背負えば傑物の類になるだろう。だが彼はそれを捨てた。自らの手で!傭兵という茶番を行い、自らその輝きを捨てたのだ!だから彼は普通に強い優秀な将にしかなれなったのだよ。そんな彼にも言われたのか。ガトー…お前は本当に惜しいことをした…おや?少し饒舌になりすぎたかな?」


オルデアルは一息ついた後言う

「君のその精神は10年前に…まだ何も知らない少年の時代に持っていたものだ。その時は君は国の汚さを知らなかった。だが今は違う。今の君を支配してるのは嫉妬だ…だがそれを認めたくなくて、剣をひたすらに振るった。雑念を消すために…もったいない、嫉妬も本人の思い。多少でも剣は重くなる。君の剣は空っぽだ。だから軽いのだよ」


レナードはオルデアルの言葉にたじろぐ

「違う!俺はサイランのことなど!」


オルデアルがにっこりと笑う

「安心しなさい。今から解放してあげよう」



その時上空からおびたたしい数の矢が降り注ぐ、それらはオルデアルの兵だけでなく、レナードの兵をも殺す。それらの屍を悠々と歩くのはルナリア、ゲヘル、セリュサ、クナン、ガロンを引き連れたサイランである。


サイランがポツリと

「レナード剣を振れ、そいつを殺せ。殺せば俺らの勝ちだ」

と自ら槍を持ち後ろに控えた五人と共にオルデアルを攻撃をする。


その戦いはとても長く続いた。一人と七人は共にボロボロである。この不敗の化け物は、一度もどんな戦場でも負けたことがないのだ。それが今崩れる。


オルデアルは、ゲヘル、セリュサ、クナン、ガロンを弾き飛ばし、ルナリアとサイランが両側から責め立てる。後方からレナードが来ると予想したが、先程弾き飛ばした4人が起き上がり、さらに責め立てる。


オルデアルは目を閉じ全神経を集中させる。

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

そして一気に力を解放し6人を弾き飛ばした直後胸から剣が生える。その剣を眼で追うと持ち主はレナードである。


オルデアルは目を閉じて笑いながら言う

「レナード君、良い目になったじゃないか。今の剣は決して軽いとは言わないよ」


レナードは肩を震わせる

「確かに俺は…常勝するサイランに嫉妬してた!だが守りたい気持ちは本物だ。俺の守りたいもののためにお前を倒す」



その時周囲が爆発した。吹き飛んだのは五国連合軍だ。吹き飛ばしたのは死兵である。自分らの主を無くした者たちである

「奴らぁを殺せぇ!!!」

「全員道連れだ!!!」

「地獄まで落としてやる!!!」

「死を恐れるな!!!!」

「我らはオルデアル様と共にぃ!!!」


それらは決して神に仕える者たちの眼ではない。


サイランは号令をかける

「全軍撤退!!死兵とはぶつかるな。流せ!!」


だが多くの部隊は取り込まれていく


「レナード!オルデアルの遺体はそのままにしろ。回収すると奴らの怒りに油を注ぐことになるぞ」




その後二日間五国連合は死兵から必死に逃げた。彼らは疲れを感じないのか夜まで追ってきて五国連合を大いに減らした。



そして三日目…

昨日まであれだけ人外の力をだしていた兵士は皆力を失ったようにこちらの反撃で脆く崩れ去った。


その時レナードは敵の本陣に向けて走らせていた。眼の前の敵を全て切り捨て、本陣に着いたとき…

突如後ろにいた最精鋭の部下、勇者ランクでも5星、6星と上位にいる20名の首が一瞬で飛んだ。

そしてレナードが最後に見て聴いたのは


「ゴメンね…レナード君、私、いや俺にも守らなければならないものがあるんだ!」

と激しい表情を向けて自分の首を刎ねるオルデアルの姿だった。



サイランは大声をあげた

「全軍撤退しろぉ!!!!!」



五国連合軍の周囲をオルデアルの軍が逆包囲をしていた。彼らはオルデアル残党を包囲してたつもりだが、包囲されたのだ。そして彼らは目にする。絶望を…自分たちが包囲してた軍の中心、つまり本陣から一人の男が現れるのを…


彼は口を開く

「皆の者、待たせたね」


一方は爆発的な歓声をあげ、一方は彼の持つレナードの首を見て絶望する。


それをサイランが嗤っていた…「舞台は整いましたよ。母上」…と呟きながら




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