破章 《永遠の都 千年王国》





ユーロピア最古の国であり最も異質な宗教国家聖ローマ、正式名称神聖ローマ帝国西部キリスト教カトリック教会総本山教皇領、その中心である大神殿で最も高い尖塔の最上階に彼女、大聖女がベットで寝ころんでいた。


「ねぇ、レナード…この国は大丈夫なの?最近周辺国は軍拡を進めてるじゃないの」


ベッドの傍で跪く男が顔をあげる、見事な金髪碧眼で甘いマスクをした青年である。彼の名はレナード、最近結成された勇者を率いる勇者、勇者王であり、先の大戦で、大聖女の託宣により現れこの国を救った英雄の一人である。


「大丈夫ですよ、大聖女様。この国には私とあなたの託宣により選ばれた勇者がいる。ご安心ください」


大聖女は怯える、震えが止まらない、目の下には化粧で隠してるが隈が出来てる。彼女はあの日から毎晩寝れないのだ。


「レナード、あたしを抱いて、恐いの、あたしを快楽で染めて、クスリじゃもう駄目なの、あいつが、あいつが、いつ復讐にくるのか、そう考えるとここにはいられない。もっと安全な場所へ、その前に抱いて、私毎晩あなたのことを考えてるの。私が小さかった頃、皆が私を殺そうとしたとき、あなたが現れ私を助けてくれた。それを考えると体の奥からあなたを…」


レナードは痛ましそうな表情で言う


「駄目だよ、ウル、君は大聖女で、僕は勇者、君を守るためにいる…もう寝なさい、僕がいるから」



レナードは背を向け後ろで控える巫女にいう

「いつも通り、彼女にクスリを…」



レナードが部屋を出た途端、壁を殴る。


「クソッ、百貨屋め、お前のせいでウルが、美しかったウルがあんなに醜い心になってしまった。必ず殺してやる」


その時、向こうから一人の男が、でっぷりと蓄えた腹、醜く肥えた顔をもつ男、サマルカンド枢機卿、異端審問を執り行う奇跡認定局局長がやってきた。


「おやおや、これはこれは、勇者レナード殿ではございませんか、いかがお過ごしですかな、それより大聖女殿との面会を所望したいのですが、どいて貰えませぬでしょうかね」


相手は枢機卿である。英雄という肩書きがなければ即座にどかなければならない。しかし自分は彼女の盾であり、英雄である。譲るわけにはいかない。


「申し訳ございません、猊下、大聖女聖下は現在度重なる託宣でお疲れのご様子でございます。次の機会にお越しくださいませ」


サマルカンド枢機卿はにこやかに言う


「おおそうですか、私はてっきり預言者様をどこかへ監禁なさり、預言者様の託宣を騙り、自分の都合のよいように我ら下々の者を意のままに操り、そのことを知る私に弾劾されたくないために自室にこもっているのではないかと思いましたぞ、ではお体をご自愛くださいませ」


レナードもにこやかに言う


「今の発言、異端ですぞ。預言者様は眼が見えず、耳も聞こえず、話すことも匂いを嗅ぐことも歩くことはおろか立つことも出来ぬ身です。そして食すものは主の肉体であるパンと主の血である赤ワインのみで、その身は聖水で洗わなければならないほど邪気に弱いのですよ。その身の世話はこの世で最も神聖であり、唯一預言者様のお声が聞こえる大聖女様にしか出来ませぬゆえ」


「ご安心ください、異端かどうかはあなたが決めるものではございませぬよ。主が自ずと明かしてくれますよ。では、ごきげんよう」


サマルカンド枢機卿が去っていく、レナードは顔をゆがめる


(クソッ、あのクソ枢機卿、どこで知った。俺たちの秘密を…マズイ、殺すか、だが奴の足元には異端審問官がいる。下手に動くとウルが火炙りにされかねない)




サマルカンドSIDE…


「ふん、あの餓鬼でも少しは腹の探り合いができるようだな。ただの脳筋というわけではなさそうだな。我らが教皇派のためにも大聖女を火炙りにしなければならない。サイランどうだ」


壁にもたれ腕を組んでいる男、紫の瞳を爛々と輝かせた男、サイランが言う

「俺には関係がないことだ。教皇派と聖女派の対立、枢機卿内のタカ派とハト派、その他の全ての対立全てがくだらない」


「ふん、お前は何が望みでその枢機卿・・・の服を着ているのだ」


サイランは心底下らなさそうに

「俺は神を信じない、俺が信じるのは人であり己である。神は偶像でなければならない、俺は神へと昇華する。あと何人殺さなければならないのかな?」


「ふん、蛇を付けてやる。存分に使え、お前の力使わせてもらうぞ」


「勝手にしろ」



大神殿の向かい側にそびえたつ大聖堂、そこにこの国の主、教皇ピトス3世が座る。彼はあらゆる派閥に属さず、誰の言うことも聞く優柔不断な人柄のため教皇になれた小者である


「皆の者、周知のとおりに各国が軍拡を始めている、では我らはいかに」


タカ派は…

「我等も軍拡を進めるべきだ」

「強制審問宣言を発令し教会軍を組織するべきだ」

「いや、それだけでは足りぬ、十字軍を発令し、根こそぎ軍を集めるのだ」


一方でハト派は

「いや王侯会議がある、いま刺激するのはいかほどか」

「まず聖女派の軍隊との調整を」

「いやこの国には三英雄がいる、どの国も攻めてはこまい」



離れたところでシンフォニア公爵は冷めた目で眺め溜息をつく

「愚かな、毎日同じことを繰り返す、メラ殿の思うつぼだ、いや、我々はメラ殿を怒らせた時点で滅ぶのだ」


一人が否定をする

「いや、まだですぞ。シンフォニア公爵、預言者様を解放すれば元通りになりますぞ」


シンフォニア公爵は目を見張る

「これはサマルカンド枢機卿…そうですな、この先どうなるのかわかりませぬな。してこの秘密どこでお知りになったのですかな?」


サマルカンド枢機卿は得意そうに

「メラ殿ですよ。彼女がチャンスを一つだけ与えて下さった。これを活かせばこの国は残るが、活かせなかったら…」


言わずもわかる

「…」


サマルカンド枢機卿は一転して

「ここではなんですが、場所を移して当時の話を、もう一度確認がしたい、我が同志も集まっておりますゆえ」



教理聖省異端審問局…

シンフォニア公爵が驚く

「ほぉ、これは、カメルレンゴ殿に、ドミニク枢機卿長、異端審問局1部と2部の各局長、神兵長、神聖騎士団長、両聖騎士団長、その他多くの方々、サイラン殿おぬしも…」


皆が口を揃える

「歓迎いたしますぞ」


シンフォニア公爵が口を開く

「ではお話しいたします…今の大聖女ウルティマは託宣はおろか預言者様のお声は聞こえない、ではなぜそのような小娘が現在の地位に立ったのか。」


大戦中期、聖ローマはメラ殿の借金を踏み倒そうとした。これに怒ったメラは、敵国をそそのかして本気で滅ぼそうとした。その後私が交渉を重ね、何とか借金を返す約束をこじつけ和解に成功したが、メラ殿は教皇とその周辺を見限り、新たな勢力を作ることを考えた。それが預言者を中心とした聖女勢力だ。当時の預言者は形骸化し、金持ち家の娘を聖女に仕立て上げ、託宣を騙るのが日常茶飯事だったのが現状だ。その後、メラ殿が異端審問局をけしかけ、魔女狩りをおこない、偽聖女を全員火炙りにした。その後、当時孤児であり、巫女見習いであるウルティマではなく、本物の聖女オンディーヌが託宣を受け、勇者を探すが何故か見つからない、代わりにメラ殿が見つけてきた。


「我々は一目見て、確かに魔力はとても高く、顔も良いが、勇者とは思えない、けど緊急事態だ、彼を勇者にした。」


後で知ったがこの勇者はメラ殿がしたてた偽物で、本物は今もどこかにいる。そして、勇者と聖女が会う日、ウルティマはオンディーヌを殺し、自分が宣託を受けたと吹聴したのだ。当時このことは、ほとんど知られておらず、オンディーヌの身のまわりの世話をしてたウルティマは当然知っていた


これを聴き皆は激昂した


「なんと、あの大聖女は偽物なのか!今すぐ火炙りにせねば」

「まてっ!まだ証拠がないぞ、下手に動いたら、我らが火炙りにされるぞ」


これはメラ殿も意外であったらしく、仕方がなくサイラン殿を使ったわけだ。その後、講和したあと、預言者様をどこかに監禁し預言者様を騙っているのが現状だ。これら全てメラ殿のシナリオをぶち壊すものであるため、復讐を恐れ、世界の敵認定を行ったのだ。


突如声が響く

「正解だ、シンフォニア、久しぶりだな、キシシシ」


僕らは転移魔法でどっかに飛ばされた」

「メラ、ここは?」


皆があっけにとられている

「メラ殿、どこから、いったい…」


メラと僕は換気口からはい出た


「いや~、船がヴェネツィアに止まったから寄ってきたんだよ。シンフォニアの言うとおりだ。あの孤児の欲、あの田舎坊主の脳筋さ、人間ってのはどうなるのかわからないな、くはははは」


シンフォニア公爵はうなだれる

「メラ殿、我々はどうすれば」



メラはにやりと嗤う

「シナリオを与える、奴に預言者マグダラマリアを解放させるのだ。奴が彼女を封印したのはカタコンベでもただのカタコンベじゃーあない、咎人のだ。彼女の恨みは尋常じゃない。楽しみだな」



メラは続ける

「戦争が起きたら、まず、サイランとレナードでマケドニア侯国を攻めろ、オルデアルが来る、レナードは脳筋だ。まっすぐに突っ込むぞ」



サイランが続ける

「あのバカを包囲した軍をバカごと弓で串刺しにすればいい」



メラは手を叩いて喜ぶ

「その通りだ、その後、講和をして、多方面の軍をシンフォニア、お前がとめて、あの女の周りを捕まえ彼女をおいつめる。その後は好きにしろ、その前にまず、虫けらを減らしとけ、分かったか」


そしてメラたちが去った




船の上…


「メラよかったの?メラはあの国が嫌いなんじゃぁ…」


「ああ、嫌いだ。教皇派はむかつくわ、聖女派はもっとむかつくわだ。けどよ、クロウィン、舞台には必要なことなんだぜぇ」


だいぶあとで知ることになるが、メラは同じ六角から≪アルテイスト≫とよばれているのである




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