破章 《戦火の産声》





豪華客船の甲板の上で…


「だから刃で受け止めるな、ナイフはただでさえ、リーチと重さがカス並みにしかねーんだよ。だからナイフは斬るもんじゃねぇ、刺してかき回すものだ。自分から攻撃手段を潰してどうすんだよぉ、お前阿保じゃねーか、ああん」


僕は珍しく言い返す…何も教えないでフツーに防いだらぼろ糞に言われたんだもん


「馬鹿には言っても無駄だな。体で覚えさせてやる。ほら、攻撃してこい」


僕は気勢をあげながら突進する。

僕のナイフをナイフの柄で下に叩きつけ、ナイフを持った僕の腕を掴んで引っ張る。前のめりになった僕を、叩きつけた反動を活かしたナイフが僕の体に突き刺さる。ちなみに命に別状はない


「この動きを頭に叩き込んどけ、物はぶつかると必ず反動がある、これを力にすれば、少ない力ででけぇことが出来るし、威力を増すことも出来る。ナイフだと、まず刃は薄いが柄は太い、守りやすく反動がでけぇのは、柄だ。これだけは頭に入れろ。これが出来たら敵を素早く滅多刺しにする訓練だ」


「メラ、ナイフはどの時に斬るの?」


「ああん、んなもん、飯を食う時だけだろ」




別の日…


僕は全身ナイフに滅多刺しにされた


「今のが基本だ、覚えとけよ。安心しろ命に直結しねーところを刺してかき回しただけだ。今ポーションをぶっかけるぞ。」


ムチャクチャ痛い、刺されるのは勿論、急激に体が回復するのはもっと痛いが、刃を喰いしばる。前回悲鳴をあげたら、ボコボコにされた。メラは短期で筋肉を付けさせるためによくこの方法を使う。超回復らしい…


メラはスパルタではない暴君である。甲板の上で修業なんて体以前に心が折れそうだ…みんな見てるんだよ、恥ずかしすぎて死にそうだ。はじめは皆興味深々で見てたが次第になくなり、なんか微笑ましいものを見るような目になった。後で知った事だが、ここの乗客ほぼメラの顧客らしく、弟子の僕に興味が持って見てただけで、メラが暴君であることは周知の事実らしい。最近僕は乗客のオバサマやオネーサマ、オンナノコに大人気であるためか、虐待が止まらない。


ある日では…

足をぐるぐる巻きに縛られれ、且つ脚と背に自分と同じ重さのおもりをつけた状態で腕の力だけで

船内を巡回させられた…これは後に逆立ちでさせられ、最終的には巡回が終わった後、体にロープを付けられ海に放り込まれて泳がされた。


「ほらほら、泳げ泳げ、火事場の馬鹿力で、脳のリミッター外せ、外さんと死ぬぞ」


メラの周りにいる船員達、笑わないで助けてくれ、死にそう




また別の日では…


「ナイフ投げは、とにかく回転をかけるな、回ると死なねー、回転をかけず、一直線で突き刺さるように投げろ」


これが終わると、体を縄で縛られ海に放り投げられる


「おらおら誰が泳いでいいって言った。走れ海面を走れ、片足が沈む前にもう片足で踏むんだよ」


といいながら、ワイヤー付きナイフを投げてくる。避けるのも訓練らしい…

ムチャクチャな訓練が終わった後も組手と称して一方的にぼこぼこにされるのが日常だ


「受け身だけ上手くなってどうすんだ。せっかく目を閉じねーようになったんだから、目で反撃のチャンスを伺え」


一回まぐれでかすったとき、メラが何故か理不尽なことブチ切れて、急に本気になって、冥府の川を拝む羽目になったことがある。それ以後様々な訓練で何度も見る羽目になった。



ある日の夜

メラがポツリと一言

「もうすぐオリンピア祭だな」


僕は起きる

「何それ?」


「クロウィン、テメェーまだ起きてたのかよ、早く寝ろ」


「無理…」


「シャーねーな、オリンピア祭つーのは、4年に一度開かれるスポーツや芸術、頭脳など、なんでもいいから、いろんなジャンルの試合を行って一位を決めようぜという大会だ。ホスト国は連邦と帝国が交互に行っている。連邦は冬都、帝国は真ん中のバグダードだ。」


「誰が出場するの?」


「基本大八洲と、アフリカ南部以外の国々の兵士たちだ。各国は国力を示すために自国の最高戦力を各国の権力者が引き連れてくるんだぜ。連邦は国ではなく八軍管区七艦隊がそれぞれ代表を、帝国は帝国を構成している国々がそれぞれ代表を出している。基本上位はほぼ連邦か帝国に独占されているが、たまにユーロピア勢で上位に食い込む奴もいるから見る分には飽きないな」


「そんなことをやっていると、他の国に攻め込まれないの?」


「それは安心しろ、オリンピア祭会場の移動、開催、自国の帰還期間は戦争禁止だ。大昔やった馬鹿がいるが、連邦と当時は帝国ではないが、アジアの大国が大軍を引き連れて一日で滅ぼしたぞ。今じゃ、連邦と帝国だ、誰もやろうとはしねーよ。けど八年前と四年前は帝国と連邦の大会戦で中止になった。中止になったことをいいことにユーロピアでは大戦を起こした」


「ふーん、やる意味は?」


「主に国力の確認だ。各国は自国をそっちのけで、王から王族、将軍、大臣が来て各国の戦力を分析する。これは副産物だな。本当の目的は王侯会議、これは各国の王や権力者が集まって会議をする場だ。これで次の四年間を決めるといっても過言じゃねぇ」


「へ~、今年はどうなるんだろうね」




オリンピア祭ホスト国ユーラシア連邦帝都アナスタシアグラード王宮クレムリン宮殿SIDE…


「もうすぐ始まるね…カイン」


月下に煌めく美しい銀髪を無造作に広げながら玉座に寝そべる女性がつぶやく、歳は二〇代後半にしか見えない美女である。疲れたようにトロンとした眼、ひそやかに聞こえるため息、一つ一つの動作が艶めかしく、どこか背徳的にも見える、傾国の美女とは彼女を現すのだろう。


カインと呼ばれた壮年の男が返す


「はっ、陛下、もうすぐオリンピア祭が開催できるよう、準備に抜かりはございませぬ」


彼女はおっさんの頭を撫でる

「優秀ね、私の子供達の中であなたが優秀だった・・・ものね」


この女性こそが第28代ユーラシア連邦皇帝アナスタシア2世である。彼女は霜の一族である故、若く見えるが実際は150近くは生きている。彼女は結婚はしておらず、子供がいないが優秀な子供を養子として飼っている。このカイン、宰相はチルドレンと呼ばれる養子の一人である。


「会議が終わったら世界はどう動くかしら?クス」


その笑顔を見たカインは顔を真っ青にする




亞洲帝国帝都天安朱禁城SIDE


「陛下…ご命令通り、宴席にお呼びした方々の処刑が完了致しました…」



15歳ぐらいの少女が言う

「ご苦労ね、軍総司令官…これで、貴族、王族の粛正は完了したわ。あと後宮を燃やして頂戴…あそこには後宮勢力の他に、宦官、外戚達がいるわ」


13歳ぐらいで目の前の少女に似ている少女、我々が見たらすぐに姉妹だと分かる少女が答える

「あそこには赤子もいますが…」


皇帝はバッサリと切り捨てる

「関係ないわ、彼らの子供であること自体が罪なのよ。あとはどこをきれいにしようかしら…軍閥は上層部を消し解散させたし…財閥は解体して、財産は没収して…官僚は仕分けが終わっている。貴族も王族も篩いにかけたし、外戚と宦官は一人残らず死刑よ。あとは軍だけね」


13歳ぐらいの少女が素早く言う

「軍ならもう完了しました…陛下」


「あらご苦労、あとは残党狩りよ。全ての国境封鎖、及び戒厳令を出しなさい。これが終わったら、西に進行するわよ。独立なんてさせるわけないじゃない」


この二人は炎の一族で15歳に見える少女こそは第4代皇帝ニナであり、彼女に報告したのは軍総司令官であるユニであり、姉妹である。この会議の数日後亞洲帝国内で皇帝に逆らう勢力は一人残らず粛正され、前皇帝以上の独裁体制が敷かれた。




ローマ神聖国首都ベルリンSIDE


「皇帝ルードヴィッヒ2世である、平伏せよ!」


豊かな髭を蓄えた厳めしい顔つきをした老人、彼こそは征服王と呼ばれた王、ルードヴィッヒ2世である。

皆が跪く


「うむ、大将よ、前に」


「「「ハッ」」」


三人の男が前に真ん中は白い甲冑を身に着け、豊かな髭を持った男、絵画から抜け出したような英雄みたいな出で立ちをした男、彼こそは神聖4大騎士団の一つ地方騎士団を率い、各国から<不倒翁>と呼ばれるアラバルド、右は金髪を短く刈り上げ、猛禽の眼をする男、歳はアラバルトよりも10若いが、貴族や騎士階級で構成される中央騎士団を率いる大将、<剣星>クロムウェル、左はクロムウェルよりもさらに若い眼鏡をかけた優男風の男、彼の名はシュビナー、<王壁>のシュビナーである。なぜ<王壁>かというと、貴族の最精鋭で構成される近衛騎士団、騎士の最精鋭で構成される宮廷騎士団の団長であり、これらで首都、王宮を守っているのである。まさに<王壁>である。


「わかっておるな…この度の会議終わった後世界が動くぞ、連邦では世代交代が起き、帝国では内乱が終息した…ユーロピア各国では戦の準備が始まっておる。オリンピアが終わったら始まるぞ…戦が、心してかかれ!」


「「「ハッ」」」




フランク民主共和国マッシリアSIDE


「エーヴィヒルト…」


「わかっておる…バーゼル元帥…」


「帝国から協商破棄を勧告された…これがどういう意味か、分かっておられますな?」


エーヴィヒルトはため息をつく

「わかっている、宣戦布告だろう。会議が終わったら、国家非常事態宣言を発する…俺が首相と大統領を兼任して総統になる。国内は任せろ」



バーゼルは頷く

「頼んだぞエーヴィヒルト、我はシュステルベルクと共にこの国を守る!」




ヤゲロー大公国クラクフSIDE


「「「ピウスツキ大公、三大将到着いたしました」」」


「うむ、ご苦労だった。早速だがいおう、王侯会議後、バルト三国と共にユーロピアに攻め込むぞ」


三人は一瞬を置き

「「「ハッ」」」


ピウスツキは赤い色の鎧を着た男の肩に手を置く

「<暴風>ゲオルギー赤大将、お前のモーニングスターで目の前の敵を吹き飛ばせ」


赤ら顔の大男が答える

「お任せください」


ピウスツキは続いて青い鎧を着た女性の手を握る

「<破軍>イゾルテ青大将、お前の智略で軍を壊滅させろ」



眼鏡をかけた青髪の美女が答える

「命に代えましても」


最後にピウスツキは少年の頭に手を置く

「最後に、我が息子、<白騎士>ピウスツキ白大将よ、血の誇りかけて勝てよ」



地味な青年が答える

「父上、吉報をお待ちください」




ヒスパニア人民連邦共和国セビリアSIDE


「人民代表…ご命令通り、バレンシアで蜂起を起こした罪人5万人鉱山に送りました」



グレナムはにこやかに答える

「ハハハハ、ありがとう同志よ、では引き続き罪人を送り、残党どもの取り締まりを強化しろ。数が多ければ多いほど良い、頑張りたまえ」



報告した若い同志が戸惑うように訊く

「あの…人民代表…なぜ彼らは死刑にしないのですか?彼らは人民を裏切ったものですぞ」


グレナムは大声で笑う


「ハハハハ、同志よ、君はマジメだがいささか堅すぎる。いいかね、人民の裏切者には二種類ある。信念があるものとないものだ。あるものは総じて学があり、頭がよい、彼らは人民を扇動し、捕まっても服従はしない、従ってるように見えて牙を隠し持ち、寝首を掻くのだ。先の粛正はこのタイプを浄化した。ないものは総じて学がない、なぜ裏切るのかも自分ではわからない、彼らは自分に都合がよいほうへ向かうだけの存在だ。なら簡単だ、捕まえて選択肢を与えればよい、生か死か。殺し過ぎると労働力が減る。死んでもらうと困るのだ。頭はいくら死んでも困らないが、働く体は残って貰わないとな。見よ、皆労働の生を選んだ。なら人民の名の下で人民に労働で奉仕させよう。生かさず殺さぬように働かせよう、ハハハハ」


この若い同志は初めて敬愛する人民代表が怖くなった


「労働は多ければ多いほどよい、忠誠がないものは皆捕まえよ、忠誠があるものよ!兵として人民に尽くせ、国家総動員令を発令する!」




ボヘミア公国SIDE


「スワロフじーじ、本当に戦争が始まるの?」


「陛下…御前でございますぞ…そのような言い方では皆に示しがつきませぬぞ…」

細目の優男がたしなめる



「けどシモン、僕は昔からじーじと呼んでいるんだよ」


陛下と呼ばれた少年ホルクラム公王はニヘラと笑う、その瞬間御前の緊張が弾け飛び、何とも言えないふにゃーとした空気が充満する


「もういいだろう、シモンよ、これが陛下のよいところなのだ。威厳のある王など古い、皆に愛される王が最もよい王なのだ。陛下はそれを体現してるだけだ」


大柄の強面の男が牙を見せながら笑う


「ベルケル将軍…そうですが、主をじーじと呼ぶのわ…」


「別にかまわねーだろ、なぁー叔父貴。、見ろよシモン、叔父貴デレデレだぜ」


「やかましいわ!ベルケルよ!オッホン」


スワロフは威厳をを取り直して、失敗する…自分の孫みたいな少年にじーじと呼ばれてうれしいのだ。スワロフは若いころに妻を失い子供がいないのだ。その代りにホルクラムを幼少のころから実の孫のように育てたのだ。誰もが孫は一番かわいいと思うものだ。


「陛下よご安心ください。儂とベルケル、シモンがおればこの国は安泰ですぞ」


この言葉に嘘偽りはない、グレートオールドの一人大天スワロフは勿論、<ボヘミアの虎>ベルケル、<万能の>シモンの二人はグレートオールドに最も近いといわれ、他の国に行けば筆頭将軍になってもおかしくない実力を持っている。




アルビオンSIDE


「エリザベータ様、エディンバラが、スコッチラント公爵が降伏しました。我らの勝利です。アルビオンが統一しました!」


エリザベータが静かにこぶしを握り締める。外では


「「「「「「「「「「万歳、アルビオン万歳!」」」」」」」」」」


ローブを纏った女性が近寄る


「メルラン…」


「おめでとうございます、先程占いを行ったところ、この国の名をアルビオンでなくブリタニカにしろと出ました。」


エリザベータは遠くを見る

「そうか、だがこれはまだ始まりにすぎぬ…次は大陸だ」


後ろに控える12騎士は皆黙って頷く





モロッコSIDE


一人の巨人が豪華なソファーに座っている。全身に付いたこれでもかと詰め込まれた筋肉、全身に刻まれた傷がこの男の人生を語っている。彼はディエ・エス、巨神である。

ポツリと一言


「暇だ、戦がしたい…」


そばに控える10人のうち、第三席の女性から声がかかる

「ディエ・エス様、耐えてください…会議が終われば大陸へ…」


ディエ・エスが吠える

「誰が口を開けといった」



女性が冷や汗をかきながら縮こまる

「申し訳ございません」


彼ら10人はオプス姓を名乗ることが許された一族であり、<ディエ・エスの指>と呼ばれるものである。ディエ・エスは3桁近くの妻を持ち、息子娘だけで100以上はいて孫世代は200以上いる。ディエ・エスに準ずるもしくは超える力、才、智略を持つ者のみオプス姓を名乗ることが許され、<ディエ・エスの~>と呼ばれる二つ名が貰える。ちなみに女性は一人である。他にもオプス姓は名乗れないが特に優秀なものも二つ名がもらえる。例えば先程の女性はネスト・エス・オプスで<ディエ・エスの頭脳>と呼ばれる。


「ふん、いいだろう。下らん会議が終わったら大陸に進行するぞ。血の滾りが抑えられん。酒を持ってこい、樽ごとだ!」



そして聖ローマでは…


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