起章 《新芽達》



ディーヤ家SIDE…

「はぁ~、終わった。なあチェスカ、俺今から雲隠れしていい?絶対あの中の誰か暴走するよ。うん、誰かは知らないが…」


そんなフラン兄の態度に対し、フラン妹はあきれたように返す

「お兄様、いくら嫌だからって、雲隠れするのは当主としてはどうかと…」


げっそりしたフラン兄は

「はぁ、なんでこんなめんどくさいのをやらなければならないのか」

憂鬱そうにフラン兄はため息をつく


フラン妹は光のない眼を兄に向ける

「そんなのお兄様以外の方が不幸・・な事件に巻き込まれて下さったおかげですよ♪」


フラン兄は震えながら

「それ暗に、お前が全員殺したことを意味するぞ」


それを聞いて気持ち悪く悶える妹

「それでもいいですよ、他の兄や弟、姉、妹の皮を被った蛆虫どもが綺麗に浄化され、愛しのお兄様が当主となって下されば妹が努力したかいがありますもの、おほほ」


(こっ、恐ぇ~、なんか重い、俺何かしたか、うん、チェスカの言うこと聴こう。うん、それが一番だ)


(うふふ、確かにあの災厄がことを起こされると、我々が危ない。けど彼女には感謝してますわ。これで宗家は私とお兄様だけになれたもの)

さらに肉食獣のようにギラギラした眼をむける

(逃がしませんわ、お兄様…)


一瞬走馬灯が流れたフラン兄であった


サフォイア家SIDE…


ミスティカが隣を歩く、フリフリの白とピンクのゴスロリを着た超可愛い娘に向かって声をかける


「我が弟ミトラよ、どうだ他の連中は、狂っているだろう?ふふん、私の男装とお前の女装がまだ可愛く思えるほどにな!どいつもこいつも壊れている。一見マシに見えるベルジュフラン兄もあの場では何を考えてるのやら…」


横の男の娘は

「はぁはぁ、ご、ご主人様、ベルジュ様はまともではないのですか?」

なんか逝ってるが…


ミスティカはそれを眼で楽しみながら

「あぁ、彼は恐ろしい奴だ…奴は自分の妹以外は全て人ではないのだよ。だから無邪気に邪悪なことが出来る。それ故、常人どころか百年に一度の極悪人ですら眼をそむけるような行為を平然と行う、最高に最悪なクソ野郎だよ」


キモい男の娘はもう限界だ

「はぁはぁ、ご主人様、口調が悪くなってます、それよりも下着履いていいですか、さっきの会議で、もう死にそうなのに家まで徒歩で帰れなんて…ご主人様、鬼畜過ぎです…はぁはぁ」


ミスティカは素晴らしい笑顔を見せる

「黙りなさい、ミトラ、それ以上言いますと、前と後ろを鞭で叩きますよ」


何故か頬を紅く染めるキモい何かは

「はぁはぁ、ご、ごめんなさい、ご主人様」


こいつらもだいぶダメな人間に入るんじゃね?と思うディーヤ家の監視であった


アムベル家SIDE…


「ご当主…お疲れ様です」


そこには先程死んだはずの次男とうり二つの男が現れた


レイはつまらなさそうに

「なんだ次男よ」


次男は残念そうに

「その様子だと私の影武者をやっていた末っ子が死んだようですね」


つまり先程死んだのは7男である…


次男は悲しそうに

「あまり役に立ちませんでしたね、次男の顔と身分を貸したのに、この使えなささ、ガッカリですね」


アムベル家は生まれた順に兄弟を並べるのではなく、能力順に並べるのである。今の長男は男女合わせて98番目に生まれた末っ子である。その後、様々な試練で間引き、残ったものの中で最も優秀な実力を示し長男の座を得た。アムベル家では女も男として扱われるので過去をさかのぼれば、女の長男もいる。今生き残っている息子たちは男が4人、女が2だけである。


レイはごみ虫を見るような目で

「あいつは強い奴にくっつくのが得意だったからな」


ちなみに長男が今話てる男は本当の最初の息子である。


レイはそのまま視線を向ける

「アムベル家にカスは不要だ…お前もいつ消えるのかわからんぞ」


次男は笑いながら

「肝に銘じときます…分家からの娘を全員部屋に呼んでおきました。」


レイはつまらなさそうに

「わかった、分家の娘など、我が宗家の子を産む機械でしかないわ」


あの会議の場で最もプライドが高く、血統主義であるレイであった


エレラルドSIDE…


「ふんふんふ~ん」


横に控えたメイドが

「機嫌がいいですねナティア様」


「そう見える~、面白そうなことが起こりそうなんだよ。データが取れたら最高だね。というわけで、この情報を流してね。区画が一個消えてもサフォイアとアムベルが金を払うだけだからさ」


「よろしいのですか?」


何故か悔しそうに言う

「研究のためだ…仕方がない」


不穏なたくらみをするナティアであった。


トパルズ家SIDE…



「お館様…どこからか情報が洩れました…」


部下の言葉に何も反応を示さずに言う


漢は余計なことを言わない

「知っておる、だがどちらも手出し無用」


「はっ!!」


ポツリと

「何も起こらなければ良いのだが…」


その心配は無駄であった…なぜならこの情報を聞いて屋敷から飛び出そうとするメイド長がいたからだ…


ルベイ家SIDE…


今扉には二人の美女と美少女が対峙してる


「お退きくださいお嬢様…」


アリアーデ心底いやそうに

「駄目だよ…あの子・・・を今迎えに行くといろいろと計画が狂う。それに君はメイドだよね?なんで私に命令してるの?」


その言葉に普段は鉄面皮である顔に忌々しさを感じさせる表情を浮かべシュルヴィアが口を開く


「関係ありません、私はこの家のメイド長であって、あなたの専属メイドではない…唯一あのお方だけは別…」


今度はアリアーデの表情が変わる

「残念だけど、彼は渡さないよ…彼を最初に見つけたのは私だよ。私が彼の存在を知り、お父さんに彼の面倒を見てくれって言ったから、あなたが派遣された…しかもあなたは何年も一緒にいる。それに対し私は顔は何度か合わせたけど、話してない。ズルいよ。」


絶対に笑わない顔が笑う

「そうですか、お嬢様、あなたは私に嫉妬をなさってるのですね。けど関係がございません。行きます。」


その時、シュルヴィアの足元に魔法陣が開く


「やられた…転移魔法」

そして続けて転移魔法をかける

「今から行くね、ウィン君、君の名付け親だよ…」

こちらも絶対に表情を変えないアリアが恍惚とした表情を浮かべながらゆっくりとした足取りで去って行った…

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