起章 《旧世界の新芽》




ベルリン、ディーア家の一室…


「今から緊急会議を始める…」


ディーヤ家の当主フランベルジュ・ディ・ディーヤが開始の号をかける


「なんであの災厄がまたベルリンに来たんだよ…ほんとサイアクだ…六家の先代と先先代は全てあのオンナに殺されたのによ!最近いらん仕事で胃に穴が開きそうだって言うのによ!」


ディーヤ家とはこの国の暗部をつかさどる一族である。故に王家からも他家からも嫌われているが、臣籍に下った王族以外で唯一大公位を貰っている一族である。よって六家の中では一段と飛びぬけた存在でもある。


当主は一見すると整っているが、パッとせず平凡な顔である。道端ですれ違っても、誰も気に留めないであろう。逆に護衛として来てる彼の妹フランチェスカは超美人である。神はなんでこうも理不尽だろうといつも思うフラン兄であった。


「大丈夫ですよ、お兄様、今我々とサフォイア家の者が監視しております。有事の際はすぐに動けるように準備しております。そうですよね?サフォイアの…」

パッとしない黒髪の少年の横に立つ銀髪の少女が口を開く


ベクトルを向けられた美しい青髪を持った男装の麗人ミスティカ・レ・サフォイアがだるそうに言う


「安心しろ、事が起きたら間違いなく、ここに集まってる六家の当主はもちろん、六家が綺麗に断絶する」


これを聞いた政治を司る金髪のイケメン、アムベル家当主レイ・ジ・アムベルの護衛が激昂する


「なっ、サフォイア、貴様!その発言は我等への侮辱だ!」


それに対し学問と研究を司り、森をイメージすることが出来る緑髪のエレラルド家の当主ナティア・ラ・エレラルドがたしなめる。


「まぁまぁ、サフォイアの言ってることは何も間違いがないよ。たった一人に我らの精鋭が一〇〇〇人単位殺されたんだよ。もう一〇〇〇人単位殺されてもおかしくない」


今まで終始黙っていた厳つい顔をした茶髪の男が口を開く。彼こそは農林水鉱産を司るトパルズ家の当主ゼノ・ギ・トパルズである。


「故に、手出し無用、無視すればよい…」


その時、ルベイ家の当主、長い赤髪を持った美しい女性アリアーデ・イ・ルベイが妹のセリアーデとユリアーデを連れてやってきた


「ゴメン…遅れた…」


その時占めたと思ったのか、先程のアムベルの護衛が声高らかに非難する


「ルベイの、貴様遅れたのに、それだけか!」


アリアーデがめんどくさそうに言う


「はいはい、君うるさいよ。たかがレイの筆頭家臣の分際でよく六家の当主に舐めた口を叩けるね。これ以上喋ると殺すよ」


特大の殺気もついでに叩きつけるが、それでも彼は口を閉ざさない


「なっ、アムベル宗家の次男であるわたっ!?」


パァァッン!


その時、次男の頭が破裂した。アリアーデの鞭のように繰り出された蹴りによって…

一瞬で距離をつめ離れた早業だった。


「おい…アリア…いくら権威を傘に負け犬みたいにキャンキャン騒ぐ無能な弟とはいえ、所有者の了承なしに殺すことはないだろう…はぁ…」

レイがあきれ返ったように言う。よく見ると、返り血が一つも付いてない。すぐま隣で人の頭が爆発したのに…


「手綱を握ってない飼い主が悪い」

むっ、としながらも言い返す


「それでも一応宗家だぞ…」

どうでもいいような顔でこちらも言い返す


「それは知った事じゃぁない」

さらにどうでもいいような顔で言い返す


「まぁいいや、弟だけで筆頭に繰り上げたから、これでほかの家臣も納得するだろう…大した派閥もないし…」

諦めた顔で〆る


ナティアが大はしゃぎしながら

「アリアちゃーん、あのね、百貨屋が来たよ」


アリアは欠伸をしながら

「うん、知ってる、この件は静観させてもらおう、表も裏も…」


胃痛に悶えるフラン兄が会議を〆る


「この件については無視!完全に無視!よって会議は終わりッ!以上で解散ッ!」


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