序章 《現代から》




僕たちは首都郊外に停めてあるある重装甲車に戻るべくオートモービルで移動した


「メラ、なんか気持ち悪い気配がするんだけど、後ろから黒塗りのオートモービルが追ってきているよ」


メラはちらりと見て

「ああ~ありゃ、連邦のオプリチニクの特務機関STAだな。安心しろ、ただの監視と護衛さ。浄化機関のCNIではない。で、今後の予定はユーロピアを通過して、帝国西部の禁兵軍団イェニチェリに引き渡す。彼らなら大丈夫だろう」


メラの言葉通り、彼らからは殺気が一切感じられなかった

その時、王政府が用意した運転手が口を開いた。


「あと少しで着きますよ。」


メラとネレイアデスがなぜか驚いていた

ネレイアデスが震えながらも口を開く


「おい、ステッセルニ…、お前何の冗談だ!」


振り向いた顔は金髪碧眼のイケメンだった。軍人よりも俳優が似合う男だ


「へっへぇ~、驚いたかな。いい顔だ。単純に保険さ、この車を襲撃すると、元最高司令官、現中央軍管区総司令官ロムルス=ステッセルニが死んじゃうよってことさ」

この男眩しすぎる


ネレイアデスは嬉しそうに話す

「また会えて嬉しいわ。我が愛しの恋人好敵手よ」


ステッセルニもまんざらでもなさそうだ


「お前は海将、俺は陸将だぜ」


「けどあなたにやられたのよ」


「そうかぁー、俺はそう思わねぇ。けど元気そうだな。帰国おめでとう!達者でな!」


この短い会話がなされている間に、目的地である首都郊外の森に着いた


その時ステッセルニが呼びかける

「おいっ、百貨屋、装甲車はどうだ」


百貨屋はメラの通称である。なんでも取り扱うからきたらしい名前だが本人は最初に名付けた人を恨んでいる


「おかげさまで、あんがとよ」


「つか、どうやって動かしてんだよ…その化け物、連邦製でも一人では無理だぜ。」


「遺失遺産電脳知性コンピュータだ。思考暗号パスコードの解析は、一応、あたしは電脳調律師プログラマーの資格も持っているからなぁ。」


ステッセルニは苦笑しながら訊く

「だろうと思った…、どこで発掘復元したんだよ。」


「それは企業秘密だ」


「はぁ、まぁいいぜ、じゃあな」


僕らは装甲車に乗って、ヤゲロー大公国首都クラクフに向かう


「クロウィン、プレゼントだ」


ナイフ投げてきやがった、僕は何とか柄を掴むことに成功する。昔訓練で刃を取ろうとしたら、ナイフで命や今後体に支障がないところをメッタ刺しにされた。


「メラ、これは?」


「ロストテクノロジー、遺失遺産だ。昔遺跡で拾ったもので、セラミカストナイフだ。折れにくく刃こぼれせず錆びないのに切れ味がけた違いのナイフだ。」


「ありがとう、メラッ」


涙がこぼれてきた、あの暴君のメラが僕にプレゼントを…ではなく、初めてプレゼントを貰った。善意の、シュルヴィアですらプレゼントは貰わなかったのに…


「おい、泣くなよ、あたしまでなんか照れるじゃねーかよ」


「いいじゃない、泣かせなさいよ。この子…今まで貰ったことないのね。」


「…だろうな…」


…数日後


僕らはヤゲロー大公国首都クラクフに着いた


ヤゲロー大公国人口20万人、首都クラクフ2万人で、ピウスツキ将軍が統治する独裁国家だ。軍の力が強く、兵もよく訓練されておるが、行き過ぎた徴兵で、国家の経済は破たん寸前である。ピウスツキは連邦から大公の位を貰い、その権威を傘によく周辺国と軍事衝突を起こしている。


「相っ変わらず、しけた国だな。知ってか、この国の名産は鉄鉱石と武具と奴隷だ。基本食料や衣類が少ねーから、周辺国に侵入し略奪して、市民を捕虜とし、人質にするか奴隷にして金をせびり取り、衝突が戦争になる前に講和して、名産を食料と衣類に交換するわけだ。ここわ。ほんと救いようがねーな。」


クラクフは立派な城壁を持っており、戦時には要塞となる。税金は世界で最も重いらしく、農民はもちろん都市民でさえ困窮している。町は露店や宿屋が少なくさびれており、道を歩く人は兵士が多い、そのほかの住民は女子供や老人だらけで、男は皆長期の兵役についてるらしい。


「ここはまだマシだ。…外の農村はもっとひどいぜ。親どもは平気で子供を奴隷商人に売り、女はシケタ金で平気で股を広げる。それでも死んでいくんだぜ。」


「幸い、属国であるバルト三国は連邦から伯爵位を貰ってるから、下手に干渉が出来ない。」


「そのため、国境線には軍がうじゃうじゃ。」


「国民の5分の1が兵士、さすがに過剰よね」


「限界動員数MAXだ、つまりこいつらをぶちのめせばこの国は終わりだ。」


メラは心底くだらなさそうに言うが、ネレイアデスが咎める


「けど無理よ、確かにユーロピアは近代どころか近世を通り越して、中世レベルの文明しか持ってないけど、優秀な将はいるわよ」


メラはつまらなさそうに

「この国は確か、三大将だったか?今とは違う旧ヤゲロー大公国にもあったな。昔から設置されてる階級だ。今から二代前が最強で、その時はユーロピア中で超大国だったらしい。田舎なのに超大国、ぷっ、笑えるぜ。ちなみに今の超大国はローマ神聖国だぜ」


ネレイアデスも軽蔑した顔で同調する

「ほんとに笑えるわね。初めからの超大国は連邦だけよ。帝国ですらアジアを統一し、スエズを組み込んでなんとか超大国になれた…」


「国力比は連邦が10とすると帝国が7、ユーロピアはモロッコとカルタゴをいれて多く見積もっても5ぐらいか、けどこれはユーロピアを統一した時の戦力比だからな、実際は3ぐらいか?」


ぼろ糞だな

もうこんな国はいやだ


「同感だ次はローマ神聖国、クロウィン、お前の故郷だ」


その時、僕はなんともいえない胸騒ぎがした



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