破章 《準備》






生徒会室…


「今日は集まってもらってありがとう」

マリアが花が咲いたような笑顔を向ける


皆は特に反応しない…


各貴族会は激しく対立しており、このような態度をとるのが普通である。むしろ、マリアのように融和を唱えるのがまれであるが。マリアの影響か、トップ同士の関係はそんなに険悪ではない。


「今日話すことは勿論、親善試合のことであるが」

グスタフが口を開く


「メンバーはこのメンバーに、去年の新人戦で入賞したメンバーでいいと思うけど…」

テオドラがめんどくさそうに言う


「この親善試合はお互いの戦力の再確認に過ぎない。問題は本戦だ…今年の一年は優秀らしいからな楽しみだ」

グスタフが笑う


「一年で思い出したが…クロード・ウィンコットという生徒についてだが…」



皆が黙るが…一人だけ眉をピクリと動かす


リチャードだ


「リチャード殿…どうした?」

テオドラが問う


「いや…何も」


「クロードとやらに何かあったのか?」

グスタフが問う


「何もない」



「ん~おかしいわね~たびたび連絡をとっていると聞いたのだけど…」

マリアが首を傾げる



リチャードは表情を変えない


「リチャード君!お願い!なんでもいいから彼について教えて!」

マリアは目をうるうるさせながら言う


リチャードはため息をつく

「はぁー、わかった。俺と彼は唯のビジネスパートナーだ。それ以外は彼は親衛隊の一員…これ以上は言えない。言ったらここの人間は全員消される。それだけだ」


皆は黙る


親衛隊となると話がややこしくなる。彼らは皇帝の尖兵と呼ばれ大きな権力を持っている。それ故、親衛隊の一員である特殊作戦部隊科の生徒の横暴を見逃すしかないのだ。


「静観が一番だろう。残念ながら俺たち学生ではどうすることも出来ない」

グスタフが唸る



「ああ、今回で死んだ生徒も不可解だ。保護者と連絡取ろうにも連絡がつかず、今ままでの経歴を調べてもほとんど偽装されたものだった。私の父は検事総長だが、親衛隊が邪魔して探ることが出来なかった」

テオドラが唸る


「親衛隊…皇帝の狗と呼ばれる彼らが何を企んでいるのか…彼らの動き自体が皇帝の意志そのものといわれているが…本当に皇帝の意志なのか…」

イザベルがポツリとこぼすが…


「一番考えられる彼らの任務は皇女の護衛だと思うんだけど…」

マリアが可愛らしく首を傾げる


「一番あり得そうで最もないわ」

突如声が響く


皆が扉を向くとそこには


美しい銀髪を耳元まで切り、片目を前髪で隠した長身の美女が、何故か昔の看護服(ナイチンゲールの看護婦服を参照)着ている


「アンジェラ先生…」


一年生Aクラスと衛生兵科の教師兼保険医を務めている生徒会顧問である


「あなた達は知らないと思うけど…いや、連邦の臣民は皆知らないと思うけど、アナスタシア陛下は皇女一人を守るような親バカじゃないわよ。クスクス」

アンジェラは慈悲深い笑みを浮かべる


「でしたら…」

テオドラが聞く


「フフフ、あなた達は知らないと思うけど、今回の生徒大量死事件によって、王政府の閣僚とその部下たち、中央軍の高級将校らが一斉に辞任したわ。ふつうはエレナ皇女に反対する勢力を一斉に粛正する千載一遇のチャンス。けど、今回失脚?されたのは全員、現陛下の勢力、及び皇女を支持する勢力なのよ。今連邦の政治を司っているのは反皇女、反皇帝の勢力なのよ…」


皆が驚く


「何故…」

マリアが呆然とする


皇帝の異常な決断に全員が言葉を発することが出来ない


「あの皇帝は異常よ。私は一度拝謁したことあるけど、彼女の眼を見た瞬間、震えが止まらなかったわ。彼女の眼は何も写してなかったのよ。私を見ているようで何も見ていないのよ」


皆が首を傾げる


「つまり、あの皇帝からすれば、私も、私が軍人時代に成功させた任務についても何も興味を示さなかった。そしてこう言ったのよ」



興味がない。私にとって、任務が成功しようが失敗しようがどうでもいい。そして帝国との戦争も興味がない。私にとってはこの国も、自分の地位も、全てが無価値だ



「ね?恐ろしいでしょ。今回の人事は単純に、自分の娘をいたぶるための催しでしょう。今回の事件も親衛隊が糸を引いているのなら、皇帝の意志でしょう」

アンジェラは笑みを浮かべたままだ


皆は絶句する


アンジェラが真顔になる。そして小ぶりの胸からIDカードを出す

「私は国家倫理委員会KGM、MSB機関所属の清掃委員会異物審問官インクィジジョナーです。昔は連邦軍情報管理局FARUの特殊部隊にもいたのよ」


皆が真顔になる


グスタフが口を開く

「身分を明かしたということは、我々に協力しろということか」


アンジェラは笑みを浮かべる

「あなた達に依頼をお願いするわ。今、次期皇帝であるエレナ皇女は、今孤立している状態なの…ということは暗殺されるリスクが高いのよ。裏ではFARUやKGMなどが守っているけど、表には出ることが出来ないから、ここのみんなで守ってほしいのよ」


「ええ、勿論、我々生徒会は協力します」

マリアとイザベルが頷く


「クラブ連盟も全面協力する」

グスタフも頷く


「風紀委員会もだ」

テオドラも同意し、


先程から黙っているリチャードを見る


「監査委員会は?」


リチャードは重々しく言う

「同意したいが…拒否させてもらう」


「なっ!」

テオドラが驚く


キレそうなテオドラをリチャードは手で制する

「気持ちはわかる…だが、俺は<SECT>の人間で皇帝側の陣営で、親衛隊ともクロードを通して取引を行っている。故に不干渉を貫かせてもらう」


皆は黙る


「なら仕方ないわね…まぁ監査会は皇女護衛の邪魔をしなければいいわ」

アンジェラはニッコリする


リチャードは頷く




学園では…


皆が電光掲示板にかかれたポスターを見ている



来月開催

『全国軍管区付属軍事学校別対抗戦』親善試合



皆がガヤガヤとなる


Sクラスのメンバーも例外なく見る


「これは…」

ユンファが聞く


「夏に行われる本戦と新人戦の前哨戦よ。ユンファ。8つの軍学校が競争するの」

ユリアが優しく答える


何があったのかはご想像に任せる…ヒント、チャイナドレス


「確か一年は参加できないんだよね?」

エレナが問う


「はい」

ユリアが真顔に戻る


あれぇ?と思うエレナ


「なんで前哨戦をやるんだ?」

ユンファが再び問うと


満面の笑みで応えるユリア

「一言で言えば戦力分析です。昨年からどれほど強くなったのかを測る為ですよユンファ。これが終わると、一か月空くから、親善試合の結果を分析して戦力をあげるの」


なるほどと頷くユンファをギラギラとした眼で見るユリアにドン引きする一同



「メンバーは?」

アリアが問う


ユリウスが答える

「基本昨年の大会メンバーです。貴族会の会長は全員でると思います。あとはクラブ連盟と風紀委員の選抜、昨年新人戦で入賞した2年の3美姫と呼ばれる三人も出ると思います。生徒会も数人…」


皆首を傾げる?


この女子生徒は誰だ?


「ユリウスです!」


皆ハッとなる


「ユリウス君、なんで女子生徒の制服を着ているの…」

イズミが正論を言うと


ユリウスは目元に涙を浮かべる

「俺は嫌だって言ったんだけど…イリヤが!僕の制服を全て処分して、これに入れ替えたんだ!」


皆イリヤを一斉に向きドン引きする


そこにはよだれを垂らしながら悶えるイリヤがいた…本当に巫女なのかコイツ



「親善試合に勝つと有利になるのか?」

アントニウス問う


「この親善試合は戦力分析の他にもトーナメントのシード権をかけてます。勝てば勝つほど有利になります」

アリスが加える


「ということは」

ディートリッヒが問う


「一位は八位、二位は七位、三位は六位のように、上位と下位を順位に組み合わせるんです」


アリスが続ける

「今のところ新人戦と本戦を含んだ総合戦の優勝校は、昨年は北西ですね」



「それは納得ですわ。北西は先の大戦での英雄を生み出した地区ですもの。代表的な方はステッセルニ元帥ですわ」

ヴィクトーリアが言う


アリスが端末を見る

「ええと、優勝回数を見ると


中央 優勝10回(最多優勝) 連覇無し

北西 優勝8回 現在5連覇中(最多連覇)

極東 優勝7回 過去3連覇と2連覇を達成している

シベリア 優勝5回 過去3連覇

南 優勝3回

ウラル 優勝2回

カフカス 優勝1回

沿ヴォルガ 優勝1回


となっています」


「あと昨年中央は3位です。ここ最近の成績をわかりやすい構図で表しますと、1,2位を北西と極東が争い、3位を中央とシベリア、南が争っています」



皆は頷く






親善試合まで残り一か月

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Novyi Mir《新世界へ》 sh1126 @sh1126

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