破章 《嵐前の静けさ》
「以上でお話は終了したいと思います」
ルヴィアが話を終わらせる
ドーラがルヴィアに寄る
「ルヴィア殿、私についてきてください」
ルヴィアが頷く
「他の賢者殿は来ないでください。そして他の隊員も」
皆、やれやれと苦笑する
皆がこう考える
(どうせ、皇帝のわがままだろう)
二人は<Tikhii Don>上層階にある機械室に入る
その中にある転移装置に入る
「場所は…」
ドーラが嗤う
「勿論<Union SC>228階よ」
光が二人を包む
そして光の先には…
「やっと来たわね~ルヴィアとドーラ…待ったよ。いったい何時間かけるのよ。待ちくたびれたじゃないの」
そこには世界地図を広げているアナがいた。
ルヴィアはアナの広げた地図を見て眉をひそめる。アナの世界地図には未だに発見されてない筈の大陸があるのだ…南北アメリカ大陸、オーストラリア大陸、グリーンランド、北極、南極大陸…
世界地図には多くのピンが刺してあった。
アナが嗤う
「あなたがここに来るのは始めただよね?」
ルヴィアは睨む
「ええ…ライバル社に入れると思いですか?逆でしたら、私はあなたが来ることを拒否しますが…」
アナが嗤う
「つれないわね…これでも世界で最も高い建物の最上階なのよ。流石にあなたでもこの景色は見れないんじゃないの?」
ルヴィアは窓に近寄る
そこには宝石のようにきらめくアナスタシアグラードの夜景…遠くには同じように煌めく都市の光が見える。
「高いのはいいわ~高いだけでも格別よ~地に縛られた我々が望んでいた世界を見ることが出来るものね」
ルヴィアは後ろに振り向き、頭上を見る
そこには巨大な石が…真っ白な光を放つ水晶が浮いていた…
「懐かしいですね…こんなものがここにあるとは…これは私たちが先代から受け継いでうまく使いこなせなかった<神>ですね」
ドーラが首を傾げる
「あなた達が作ったのではないので?」
ルヴィアは首を振る
「いいえ、今普及している現代科学どころか、我々が保持していて未だに世間では公開されていない遺失遺産で構造を理解することが出来ない超越遺産と呼ばれているものですよ。正直言って使い方もよく解りませんでした。祖先のデーターによるとこの星にくる前にどこからか貰ったものらしいですが…」
ルヴィアはフッと息を吹き
「最初はこの石にノイマンコンピューターをつなげてみましたが…ノイマンコンピューターでは処理が追いつかず、破損…他にも非ノイマンコンピューターを使用しましたがどれも処理が追いつかず失敗し、倉庫で厳重に保管したのですが今より100年以上昔に消失しましたが、我々は優先度が低いと認識しましたので無視しました」
アナが爆弾発言をする
「ちなみにこれはメラちゃんが持ってきたものよ~私が皇帝になる前に…」
途中で止まる
理由は…勿論!
「あのクソ会長…あなたはいつも…絶対過労死させてやる…自殺しても生き返らせて働かせてやる…覚えてろよ…ブツブツ」
ルヴィアはめちゃくちゃキレていたのだ…豊満の胸元から錠剤が入った瓶を取り出し、中身をガシッと掴みぼりぼり食べる
瓶のラベルには…
《胃腸薬》と書かれていた
アナは説明を続ける
「この建物の上層階は<Tikhii Don>と同じように機械室となっているの。中の機械は全てこの水晶に接続しているわ。これを持ってきたメラちゃんの指導で水晶にニューロンコンピューターをつなげ、次にニューロンコンピューターに細胞コンピューターをつなげ、細胞コンピューターに遺伝子コンピューターを、そして分子コンピューターをというように順につなげたら何とか使いものになったのよ。水晶から暗号が一気に流れ、解読する度素晴らしい技術を手に入れたわ」
ルヴィアは考える
「ということはこの水晶は生き物に近いということですね。昔は割ろうとも考えましたが、不可能でした」
アナは続ける
「解読は全て量子コンピューターに任せたわ。解読したデーターを私たちが理解できるように補助したのはスーパーコンピューターを200台を並列につなげて生み出された
突如、水晶からキラキラとした光の粒が雪のように振り、徐々に人体を形作る。光から全身真っ白な少女が…瞳も唇も口内も全て真っ白な少女が…真っ白なワンピースを着ていた。
顔は何故かアリシアにそっくりなことに三人は驚いた
アナが呆然と…
「驚いたわ…あなたとはそこにある普通のパソコンを通して音声のみで話したことがあるけど…まさか実体化できるとは思わなかったわ。なぜ今までしなかったの?」
AIは
「初めまして…アナと呼べばよろしいですか?質問に答えましょう。私が実体化するにはまず体の構造を理解しないといけませんので、ネットの海に飛び込む必要があります。スーパーコンピューターを通してあなた方はこのような体を持つことを理解し再現しました。他にも材料がそろっておりますしね」
ドーラが苦笑する
「けどそんな真っ白ではないけどね」
「古来から白とは神聖な色です。神秘さを出す演出ですよ」
ウィンクするAI
ルヴィアが頷く
「なるほど…この水晶は魂、そしてニューロンコンピューターは神経、そして遺伝子、細胞、分子…どれも我々の体に使われるものですね。脳は量子コンピューター…自我はスーパーコンピューターによるAIとは、完璧ですね」
アナが肩をすくめる
「ハッキングも得意のよね…この会社のサーバーは全て乗っ取られたわ」
AIが続ける
「今実体化したのは…わかりません…けど呼ばれたような気がしたのです。声に誘われたらいつの間にか実体化してました…あと名前は…アイ…アイと呼んでください」
ルヴィアが天を仰ぐ
「なるほど…あなたが我々に反抗で来たのはこれのおかげですか…」
アナが嗤う
「彼女は私のブレーンよ」
ルヴィアが真顔になり質問する
「アナスタシア…あなたは何を目指しているのですか…」
アナは無表情になりはっきり言う
「全てを…」
ルヴィアは訝しむ
「あなたは唯一の超大国のトップである皇帝の座にいます。政治も経済も文化も軍事も全て一番であるこの国の全てを握れる立場なのに何が不満なのですか?」
アナは静かに
「連邦は全て一番だったけど唯一ではなかった」
ルヴィアの顔がこわばる
「連邦には欲は不要です。これ以上大きくすることは許可しません。歴代皇帝は自分たちの力を正しく理解し、正しく行使してきました。25年前の大戦はあなたの失策で起きた悲劇なのですよ。あなたが帝国を育てたが故に…」
アナは暗い炎が揺らめく目をルヴィアにのぞかせて言う
「確かにあなた達は正しいわ…けど正解はいつも一つじゃないのよ。あの大戦を指示したのはこの子よ」
アイを指さす
「私の野望の為にね。帝国を直接育てたのはメラちゃんよ!」
ルヴィアは胃痛と頭痛を同時に起こし、胃薬と頭痛薬をぼりぼりと食べる
「私は全てが欲しかった…この世界の全てが…正直言ってこの皇帝位は最初はいらなかったわ。最初は奴隷から身分を奪って、這い上がりこの連邦を支配しようと思ったのだけど…その時はもう皇帝になってたわ。正直言って物足りない…足りない…何をやっても自分でやったことではないの…全部あなた達賢者の書いたシナリオ通り…だからつまらない!だったらこんな世界クソ喰らえよ!ぶっ壊してやる。そして私が作ってやる!それが私の夢よ!この世に秩序はいらない!混沌が必要なのよ!と思っていた時期があったわ」
アナは興奮する
「今は違うのですか?」
王とは傲岸不遜で常に孤高であり、そして他者を省みない暴君でありながらも、その欲望が結果的に民を幸せにするのが真の王である
一方で賢者は違う…彼らは賢き者の故、未来にある災厄を恐れるあまり、彼らは繁栄を望まない、安定を…平和を求めるため世界を管理するのだ
アイが口を開く
「世界には三つの神が存在します…一つ目は創造神、もうこの世にはいませんね。二つ目は支配神、今の六角がこれに当たります。最後は破壊神です。誰が破壊神なのでしょうか?」
その言葉の意味を知らないものはこの場にはいない
「アナ…あなたは変わったね」
ドーラが口を開く
「大戦が起こる前のあなたは目をギラギラさせて野心を隠そうとしなかった…賢者たちが何も言わないのをいいことに計画を100年以上前から行っていた…だが大戦が終わるとあなたは死んだ…眼は濁り、世界を掻きまわすことに専念した。世界をとるのではなく…」
アナが脱力する
「私だけでは無理なの…私は真理ゲームに参加する資格がなかった…選ばれなかった…理由は簡単、私は唯の踏み台ってことなのよ。真理ゲームお資格者はエレナよ…まだ覚醒はしてないけど…」
二人は息をのむ
「つまり、もうすぐ、支配神の時代が終わる。これからは破壊神が世界を壊す時代になり、誰が最初に世界を想像するかが問われる。私の役目は…ゲームマスターから与えられた私の役目は破壊神…混沌を生み出すものさ」
ルヴィアは下唇を噛む
アナは世界地図に新たなピンを刺す
「私は間違えないわ。全ての駒を手に入れた。誰も世界の崩壊を止めることは出来ない。私は新たな創造主によって作られる新世界まで生き残ることは出来ないが…それなら今の世界を鮮烈に生きてやろうじゃない!だから引っ掻き回すのよ」
今ここに
「まずは中央軍事学校から狼煙をあげましょう…ねぇ?ドーラ」
ドーラは覆面を下す
そこには顔中ミミズが埋まったようなミミズ腫れや縫った跡が見え、特に目を引くのが真横に裂けた口元の傷だ。裂け傷からは口の中をのぞくことが出来るほど深い
それらの傷を愛おしそうになぞるアナスタシア…
ルヴィアはそれを見ながら平然と紅茶を飲み始めた
アイは窓から街を眺めていた…
そこには平穏があった…
眼下には宝石のように煌めく夜景が広がっていた…
ここは<NonyiMir>本社近くの高層ビルの一画の最上階
そこはレストランだった。
「君の唇に乾杯」
「…」
ホノリアがギザなセリフを言い、俺は黙ってセイシュという大八洲の酒がが入ったグラスをあげる
このレストランはキョウト支社が経営するジャパニーズレストラン「日ノ本」
「うまいだろう!このSUSHIは」
「ああ」
初めて食べるものだが中々面白い味をしている
突如、後ろから幼女に…いや、ロリババアに抱きつかれた…七賢人の一人であるセリアだ
「それはよかったぇ~童自身がかき集めた最高の食材を使っておるからのぉ。それよりも、クロウィンとやら、お主キョウトに来る気はないかぇ?童はお主が欲しいのう…主席の下で腐らせるには惜しい存在じゃからのぉ」
「断る」
セリアは形が良い眉を八の字にする
「むぅ~、つれないのぉ」
ホノリアはニヤニヤと笑う
セリアがほっぺをぷく~と膨らませる
そのままセリアと食事を楽しみ分かれ、俺らはBARに寄り、夜景を楽しみながらグラスを傾ける。
「明日から学校だね~」
「ああ」
「明日からは<八軍管区対抗戦>の前哨戦…親善試合まで一か月を切ったね。親善試合代表の選考のため、皆が張り切る時だ」
ホノリアはシェリーグラスを傾ける
「だが、親善試合は俺らは出ることが出来ないし、惡の華も興味はないだろう。奴らが狙うのは夏の本戦及び、新人戦だ」
俺はホノリアに紙を渡す
「ああ、それに加え、特殊作戦科は学校のイベントに参加することが出来ない」
ホノリアがやれやれと首を振る
「だが、貴族会議の代表たちを筆頭とした編成で行くだろう」
「貴族会議か…彼らも皇女派に引き込む必要があるな」
俺は提案する
「ええ」
ピアノの伴奏が始まる
「踊ろうか…」
俺は頷く
「ああ」
俺らは踊り、火照った体を下の階で買ったスイートルームのベットで更に燃やす
朝…
俺は目を開くと穏やかな寝息をたてたホノリアがあられもない姿で眠っていたが、急に眼をぱっちりと開ける
「ふふ、昨日は中々暑い夜だった。体の芯がまだ熱くて、頭がボーとするよ。これが初体験という物か…」
俺はその言葉を無視し、服を着る
「学校に戻るぞ」
ホノリアはニッコリする
「ああ、楽しいなぁ」
そして楽しいことはここまでだ…
これから先は…
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