承章 《歪な日常》
学校は普段通り開講した。
一時限目は全校集会となり、今回の事件の簡単な説明と犠牲者の追悼が行われた…
Sクラスとは言うと…
「おうおう、殊勝な心掛けだ…はぁ~」
エルはみんなの様子を見て顔を綻ばせるが、アリスとエレナとエルしか認識できない空席をみてため息をつく
勿論本日もクロードは欠席だ…
そして授業がいつも通り進む…本日も平穏なり。
一方でクロウィンはいつもの屋上ではなく…ホノリアと共に準市民区画の北部にいた…厳密に言えば、スウ・メイリンが経営するカジノ場の前にいた…
二人は黙って入る…中のスタッフは気づき、皆、クロウィンに尊敬の眼差しを向ける
ホノリアがフフと笑う
「後輩君、君、何かやったのかな?」
クロウィンは苦笑する
「この町のボスは俺だ…奴らには皆、俺がメラの息子だってことを伝えたのさ…上層部はメラを恐れているが、末端の連中は何故かメラを尊敬している。俺の力じゃない」
そしてVIP室の前に立つと顔パスで入れた…クロウィンは更に奥に進む…
ホノリアが質問する
「そう言えば、三合会のこの支部はどうやって乗っ取たんだい?」
俺は言う
「このカジノで荒稼ぎをしたのさ…奴らの金を全て根こそぎ取ったんだ。もちろん、イカサマ無しでな…イカサマしなければ奴らは手出しが出来ない…」
ホノリアは含みのある笑い方をする
「本当にイカサマをしなかったの?」
俺は頷く
「ああ、ルールの穴は突いたがそれはイカサマとは言えないだろう」
俺は続ける
「店中の金をむしり取った後、スウが出てきて、俺の全てと、彼女の全てをかけて、ポーカーをやったんだ。正確に言えば、俺はむしり取ったチップやメダルを賭け、彼女は金をかけた…」
そして声が響く
「天運と呼ばれた私が彼に負けたんだ…今までどんな賭け事にも負けなかった私が負けた…金を無くした私には生きるすべがない…死のうかと思ったとき、彼が手を差し伸べたんだ。彼の傘下に入れば金は返すとな」
そこには多くのベッドがあり、多くの人間が横たわっていた。多くのスタッフがせわしなく走る。そして多くの煙が立ち込める
…いわゆる、アヘン窟って奴だ…
スウは最も豪華なベッドで龍を模し、ルビーをちりばめた金色の煙管でアヘンを吸っていた。
「いらっしゃい!一服どう?」
俺は迷わず受け取り、ホノリアも受け取る
ホノリアが唸る
「うまいな…」
スウはニッコリと笑う
「当たり前じゃない。カルテル共が生産している低純度の奴とは比べ物にならないほどの高純度の生アヘンをしようしてるもの」
俺は聞く
「いいのか?カルテルが聞くと盟約違反だと怒るんじゃないのか?」
スウは小悪魔のように笑う…ちなみにスウは外見13,4歳の少女にしか見えないからぴったりの笑みだ
「カルテルが扱っているのは、コカイン、大麻、ヘロイン、覚醒アミンの4つよ。原料であるアヘンは対象外なのよね…」
スウは一息ついてアヘンを吸い吐き出す
「あとは私奴らが嫌いなのよね…なんで注射ばかりするのかしら、あと粉を吸うのは優雅じゃないわよ。このように煙管で吸うのは優雅だとは思わない?」
俺は鼻で笑う
「俺は何でもするぞ…注射もな」
スウはコロコロと笑う
「無理強いはしないわ。ただ、嫌いなだけよ」
スウはアヘンを吸う。俺も吸う、ホノリアも吸う
ホノリアが言う
「これいくらで売ってるんだい。正直欲しいよ。私がいつも吸ってるのはカルテルから購入してるものでね。たまにはヘロインを吸っているんだが…吸うのならアヘンが一番だね」
スウは喜ぶ
「何時でも来なさい!歓迎するわ。お金はいらないからあとで貰ってね」
ホノリアは大喜びだ
カジノ場から出て次は南部に移る。
南部は荒んでいた…至る所で、銃声が、女の嬌声が、悲鳴が、泣き声が聞こえる
クロウィンが言う
「南部は元々はヤクザとコーザノストラのマフィアどもが支配していたんだが…新興勢力のギャングどもに大分支配されているようだな」
新興ギャングとにはイミグラン、フブリッド、レッズ、ブルーズ、ホワイツ、ヘルエンジェル、B&Bなどがある
イミグランは中東や北アフリカの移民で構成されているギャングで、マフィアのソマリ・カルテルと関係が良好である
フブリッドは連邦、アラブ、黒の一族の混血児によって作られたギャングで、差別されてきた人々が構成員のため、どのギャングやマフィアとも仲が悪い
レッズ、ブルース、ホワイツはストリートギャングである。未成年が非常に多いが好戦的である。元々は一つの組織であったが内部分裂して、お互い潰し合っている状態である。
ヘルエンジェルはバイカ―集団である。ブラザーズ・サークルと非常に良好な関係を結んでいる
B&Bは黒の一族で構成されたギャングで近年勢力を伸ばしている。三合会と同盟を結んでいる
マフィアではコーザ・ノストラとヤクザが存在する
コーザ・ノストラは北部に拠点を持つコーサ・ノストラの弟分組織であり、かつては南部の半分を所有していたが新興ギャングによって力を失いつつある
ヤクザは極東のエゾから来た組織といわれており、独自の文化と風習を持つっている。勢力は元々大きくなく、新興勢力により弱体化が止まらない状態である。
このことから見ると、南部は北部の組織たちの代理戦争を行っているようなものである。
ホノリアがフフンと笑う
「これからどうするんだい?」
俺は
「このまま何もしないさ…小森はここまでだ」
静かに言う
ホノリアが言う
「じゃ、帰ろうか」
「ああ」
教室では…
「以上が今回の授業の内容だ」
チャイムが鳴る
昼休みなので皆、食事タイムに入る。
学園は皆が寮生活のため、昼食は食堂か、購買で買うのが普通だが…とある強者は学園がお休みの日に外で食材を買い、寮の厨房で調理をしてお弁当を作る…例えば、ホノリアなどがいるが、割愛する
食堂…Sクラス専用室
一年は皇女の要望で全員同じテーブルで食べることになっている
「アントニウス~は~い、あ~ん」
ヴィクトーリアはいつも通りだ…
そしてアントニウスは…
何かが喉に詰まったのか顔を青くしている…ヴィクトーリアの渾身の一突きで、のどに詰まっていた食材が胃に送り込まれる
ユリアとユリウスはいつも通り、黙々と食べる
イズミとディートリッヒが何やら熱心に話し込んでいる…どうやらフッドボウルについてだ。イズミの顔が赤くなっている…おい、どうした
一方でこちらも顔を真っ赤にしてる人いる…カイルだ。アラリヤがカイルに向かってわざと胸元を見せたり、セクシーポーズをとっている…おい、お前たちの宗教は女性は肌を見せちゃダメだろ
イリヤはエルと何やら話し込んでおり、時折頷いている
そしてエレナは少し表情が固いが何とか笑っている。その横にはアリスがいつも通り黒いオーラ―を出しながらぶつぶつ呟いている
突如、イリヤが向き直り、大声で言う
「あのッ、皆さん!」
皆がイリヤを向く
「私、ずっと気になっていたんですけど…Sクラス1年って、全部で13人いるんですよね?」
皆が頷く
「数えたら11人しかいないんですよ?」
皆が首を傾げる
アリスが言う、
「私のお兄様…クロード・ウィンコットは諸事情により、当分公休ですよ?」
皆がアッとなる
ヴィクトーリアが
「だからですのね。アリスはいつも「お兄様」と叫んでるわけですね」
アリスの顔が真っ赤になる
エレナが苦笑する
アントニウスが冷や汗をかきながら言う
「アリスちゃん…いつもお「お兄様」とぶつぶつ呟くから怖いんだよね」
アリスがテーブルを叩き、叫ぶ
「仕方ないじゃないでっすか!お兄様はいつも、いつも、い~つも、学校に来ないんですもの!」
くわっとエルを睨みつける
「なんで男子と女子の寮は別々なんですか!なんであんなに遠いんですか!女子は当たり前なんですけど…男子寮のセキュリティー厳重すぎます!夜這いに行けないじゃないですか!」
皆がドン引きする…ブラコンひどくね…だから休んでるんじゃないのか…
エルは頭痛を起こしたのか頭を抱える
「アリシア…お前みたいな痴女を呼ばないためだ…」
皆が頷き、アリスは崩れる
皆が納得したように食事に戻ろうとしたとき、イリヤが止める
「話はまだ終わっておりません!あと一人忘れていませんか?」
皆がハッとする
「誰だっけ?」
誰かがつぶやく
エルは苦笑いをする
「ぶっちゃけ言うと私も素で忘れていた…と言いたいところだが、13人目は病弱でな…保健室で私が個人指導をしている」
皆がエルに詰め寄る
その様子にエルは嬉しそうにため息をつく
「お前ら…興味があることはいいことだが…彼女の名前はサリナ・セイクリッド…出身はアフリカらしいがな…お見舞いはなしでいいぞ」
皆が頷く
「楽しみだねぇ~けど、今年女子勢強くないか?」
アントニウスが唸る
「そうだね…ブハッ」
カイルが鼻血を出す
アラリヤがカイルにムチムチとした太ももを見せつけたのだ。少しは恥じらいを持とうよ…
日常が進む…ひび割れた音をかすかにたてながら
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