承章 《残酷な現実》




俺は翌朝、アリスと登校した…勿論ほとんどの人間は俺を認識することが出来ない…




この学校は全部で4学期制を採っている。故に、中等科以下の3学期や、普通の高等科の2学期よりもはるかに休みが少なくやることが多い。俺たち一年の授業は主に、座学と訓練を行う。

春学期は座学では主に教養科目である自由七科(文法・論理・修辞・幾何・算術・天文(地理も含む)・音楽の7科)と必修科目の各入門編(軍政学(国際情勢も入る)・兵学・軍制・地形・戦術論(歴史も含む)・通信交通)を行い、演習では、各種入門課程(兵器・築城・剣術・体操・馬術・現地戦術・測図)を行う。

夏学期は自由七科の単位が取れた者は内容が変わり、新自由七科(幾何学・代数学・力学・理学・化学・地学・音楽)となり、座学で単位が取れた者は入門編から初級編となり、演習で単位が取れた者は入門課程から訓練課程となる。

秋学期は新自由七科で単位が取れた者は教養科目が専門科目に変わり、医学、神学、哲学、法学のどれか一つを選ぶ選択制となる。座学で単位が取れた者はは初級から初級修了課程に移り、単位が取れた者は演習は訓練課程から演習課程に移る。

冬学期は専門科目はそのまま維持し、座学の初級修了課程の単位を取れた者のみ上級編に進み、演習では演習課程の単位が取れた者のみ実戦形式課程に進める。

二年の春に、上級の単位が取れた者は上級修了課程の授業を受けることが出来る。演習は実戦課程に移る。

二年の夏からは、必要単位が取れた者から、希望の兵科を選択することが出来る。それぞれの兵科には必要とする単位数や、科目数があることを忘れてはならない。

例えば最も難しい特殊作戦部隊科はSクラスであり、今まで受けた全科目の単位がSでないと選択することが出来ない。逆に最も簡単な一般歩兵科は全科目の平均がC、もしくはC以上が半分以上あるだけで入れる。


アリスが目指す特殊作戦部隊科はそのあと全ての科目が裏課程となり、公表されてない。

その他の兵科では独自のカリキュラムが組まれており、共通している授業は、演習の

目的地点の到達・物資回収を目指す・行軍

敵拠点の占拠を目指す・攻撃

自軍本拠点の防衛、防衛ラインへの進入阻止を目指す・援護/防衛

敵の全滅、指定の敵の殺害を目指す・殲滅

の4科目、Ⅰ・Ⅰ+・Ⅱ・Ⅱ+の4課程の計16コマのみである。


テストは1年で8回(1年のみ7回)実施される。各学期の初めと終わりの週に実施される。成績はS(優)・A(良)・B(可)・C(普)・D(不可)・E(落第)・G(退講)である。

Dは追試を受けることが出来るがEは留年にならぬ留講で、もう一回同じ授業を受けなければならないが、Gは授業を受ける権利を失うことを意味する。このテストはSクラスを除く全クラス統一試験のため、結果によってはクラスが上がったり、下がったりする。ちなみにSクラスはテストがなく、授業の平常点や小テストによって総成績が出るシステムである。



教室に入ると、珍しくエル先生がいた。俺を見た瞬間嫌そうな顔をしやがった。


全員が入るとエルが口を開ける

「よーし全員いるな~今日は何故かサバイバル訓練をやることになった。理由は知らん!校長、理事長辺りに聞いたら黙りやがった!つまり、軍本部の命令だとわかるから諦めろ!対象は暇な一年!暇じゃねーよ!」


エルがキレているが皆黙る。俺は乾燥大魔とヘロインを大麻樹脂で固めた芯をダウン系の化学薬品をたっぷり塗った紙で巻いた自作の紙巻煙草ジョイントで一服する。ちなみにこれは煙が出ないようにカバーを付けている。エルはそんな俺を見て更に青筋を浮かべるが、俺は気にしない。エルが指弾で俺のジョイントを破壊しようともくろむが失敗する


「各クラスの兵力の割合だがSクラスは12人(クロード・ウィンコットを除いてやる)、Aクラスは30人、Bクラスは60人、CクラスとDクラスとEクラス合同で250人…CDEはサバイバルよりも戦闘訓練を意識している。SABはサバイバルだから初期装備以外は全て現地調達か、工夫をしろ。CDEはムカつくことにたんまりと補給がもらえる。お前ら確実に奪えよ」


俺は一服し続ける



エルが大声で言う

「というわけで早速だが準備しろ。今回は実弾じゃないから安心しろ。当たったらしびれるスタンガンだ。ナイフもスタンナイフだから死にはしない。存分に倒せ」


皆更衣室に向かうが俺は動かない…教室に出ようとしたアリスが

「お兄様!着替えを覗きに来てもいいですよ…せひ!妹の着替えを覗きに来てください」

といいながら俺を引っ張ろうとしたが、エルの指弾をデコに受けるアリス。その後、恨めしそうにエルを睨みながら退散してった。


俺は煙をエルに吹きかける

「ありがとうよ…無理を聞いて貰って…」


エルは苦笑する

「今回は軍上層部が動いたからな…軍の人間であるアタシにはどうしようもない…」


俺は嗤う

「そうですよね元南連邦管区総司令官殿…今は降格して司令官どころかただの司令でしたか…」


エルが本気の殺気をぶつける


俺は嗤い続ける

「キエフの戦いで壮絶な市街戦を指揮し、その後敗北した罪で元帥である総司令官から、中将…つまり司令官に降格になったことは有名ですが…大佐である司令まで落ちた理由は何ですかねぇ?しかも現役から予備役を通り越して後役ですね。よっぽど酷いことをしたんじゃないんですか」


エルは目の前の男の顔を見る。まるで悪魔のような顔だ…見た目は15、6歳の少年だが実年齢は40に近いロリショタだ…自分の一番嫌いなジャンルだ…勿論ショタは大好物だ。ぜひ、食わせろ!…だが言わないでおく


機械仕掛けの悪魔ディアボロス・エクス・マキナ…あの女にそっくりじゃないか…私をここまで落としたあの売人に…


「メラにでも聞きやがれ!」


俺は嗤いを止める…今からが本題だからだ…


「エルよ…お前はなぜ今回の授業を認めた…この授業で死人が出るのはわかってるはずだ…」


エルは苦笑する

「戦場で人が死ぬのは当たり前だ…それが戦闘員だろうが非戦闘員だろうが関係なくな…」

彼女の眼には昏い炎がともっていた。


俺は嗤う

「楽しみだな…どんな劇が出来るだろうなぁ」





近くの森…

「今よりサバイバル演習を始める」

スピーカーから声が響き始まる


「始まったね…」

エレナはため息をつく


振り返り皆を見ると全員が周囲を警戒する


「人数差で見るとSクラスは格好の的だからね…」

アントニウスは言う


「罠を作ることをお薦めします」

アリスが提案する


皆頷き罠を作る。作った後移動する。


「皆さん止まって下さい」

突如、イズミが言う


皆止まる


「前方に敵がいます…」


ディートリッヒが聞く

「わかるのか?」


イズミが言う

「普段は…眼鏡で抑えてますが…私の眼は魔眼でして…魔力を見ることが出来ます」


皆イズミの助言に従い、移動する

途中、ディートリッヒが

「ゾディアック!」

黒いオオカミの使い魔を十数匹出し、周囲に放つ


「こいつらは偵察に使う」


アラリヤもカラスを出現させ、空中に放つ

「これは法力で出来てるから相手の魔力感知には引っかからないわ」



「感知は私にお任せを」

ユンファが言う

「魔力はアラリヤや私にとっては魔力は異物ですから、感知は楽勝です」


アラリヤがクスッと笑う

「あなたの方が探知能力に優れてんじゃないのかな~」


ユンファは糸みたいに細い眼をもっと細める


エレナが言う

「魔法による攻撃は出来るだけ控えよう」


銃声が響く


「始まったですわね…」

ヴィクトーリアが呆然と言う



とある場所…


そこの一室にはいつもの7人がいた


全員、パソコンに何かを打ち込みマイクに指示を出しながら、前方のスクリーンに映る衛星画像を見る


「さて、今回このサバイバルゲームに応募した奴は340名…そのうち何割が敵だろうかな?」

ホノリアが笑う


俺が付け加える

「そのほか10名以上…Aランク相当の傭兵や暗殺者が混じっている」


一人が…チェティーレが言う

「実弾所持の生徒が最低でも30人は確認できました」


「今回参加者は事前に行われたアンケートによって選ばれてる。選ばれた奴は皇女の敵意を示してるもの主にAクラスBクラスだな…他の皇帝候補者の派閥だな。逆にそれより下の連中が気になる所だ…多く出た答えが皇女に出会えるからだが、一部ではSランクと戦える貴重な体験だという模範解答が出たな」

俺は一旦一息をつく

「素人は自分の任務がばれるのを恐れるあまり、無意識的に避けようとするからな…」


ホノリアが言う

「それに加え今20人脱落したぞ…なのに衛星画像を見る限り減ってない…入れ替わったようだ。今回で落選した奴がノコノコやってくるとは」


俺はじっと見る

「今回皇女暗殺に動員されたのは70届かないくらいか…残りは単純にSクラス打倒を目指してるらしいな」


衛星画像のズームでは、今多くの生徒が仲間…に扮した実行部隊に気絶させられている


「いい選択だ…部外者を殺すにはメリットがない。外部の奴らも気絶させているようだ」

俺は見る


ホノリアが問う

「生徒の中で何人ぐらいがマシな奴だ?」



俺は率直に答える

「20人ぐらい実戦で使えるな…下級親衛隊クラスだな。40人ぐらいは素人だ。皇女たちでどうにかできるだろう」




森では…


自分たちは森の奥に遭った廃墟を根城にしている


ディートリッヒがつぶやく

「おかしい…」


アラリヤも同意する

「…同士討ち?」


イズミが

「敵勢力の減り具合が尋常ではありません」


アリスが嗤うが皆は見ていない

(お兄様の言うとおりにGPSを着けました…もうそろそろで敵が来るでしょう…)



見張りの三人が

「「「…ッ…」」」


エレナが反応する

「どうした!」


ディートリッヒがいう

「今すぐこの拠点を捨て逃げよう!何かがおかしい!先程見たがいかにも部外者が生徒を攻撃していた!」


アラリヤが付け加える

「他にも同じチーム内の生徒が味方の背を撃っていたわ」


突如後方からバタバタと足音が響く


侵入者だ…


侵入者が声を荒げる

「皇女を探せ!奴を殺せばたんまり金をくれてやる!」


侵入者は下位クラスの生徒だ


姉弟が集団の上から襲撃をする。二人はそれぞれ頭上に着地をする…踏まれた二人は一瞬で失神。敵がそのことに驚いてる隙に二人はスタンガンを二挺出し、次々と撃ち気絶させ、近づいた敵は銃で殴打して気絶させる。一瞬で20人が殲滅された。


二人は彼らの持つ武器を確認して

ユリアが答える

「全部実弾入りです。ナイフも刃を潰してはおりません。どうやらこの授業は授業ではなく、貴族の強硬派による陰謀の可能性が大きいです」


ユリウスは黙って紐を出し彼らを縛る


何故かユンファが出てきた

「縄縛りはこうすればいいんですよ。これは中かに伝わる捕縛術です。動けば動くほど、身に食い込みます」


全員ユンファが縛った


ユリウスが言う

「先程までの情報を精査しますと、一般の生徒は皆失神したようですね。残っているのは全員敵で、殺意を持っている。一歩間違えますと死にます。ですので皆さんは我々に従ってください」



全員頷く




銃声が響く

ユリウスとユリアは捕縛した奴らの銃で応戦する。他のメンバーも実弾入りの銃で応戦する


イリヤが魔法を唱える

「閃光よ!」

閃光弾が敵の近くで一気にともる。

至近距離で猛烈な光を浴びた敵は視界を一時的に失い、たまらず、姿を見せる。Sクラスのメンバーは姿を見せた敵を撃つ。殺さないため急所は敢えて外してある


他の方面から来る銃撃に対してはヴィクトーリアが爆発魔法をお見舞いし、敵は障壁を発生させるが、ひるむ。その姿はイズミには丸見えだ


「二時の方向!距離約50メートル!」


全員一斉射撃をし、アラリヤが強烈な法力の光線を浴びせ、障壁を中和する


敵は

「クッソ!て、撤退だ!」

撤退しようとするが


撤退する先には黒いオオカミがおり


「やれ!ゾディアック!」

ディートリッヒが命じ、敵を昏倒させる


カイルが悪態をつく

「どうしてこうなった…」


エレナが青い顔をする

「…私を狙ってるんだわ…私を殺して皇位継承をもとに戻すつもりよ…」


アントニウスがキレる

「ふざけるな!そんなことは許さない!」

手を地面につけ、巨大なゴーレムを2体召喚させる



そしてゴーレムが倒された


「なっ…」

アントニウスが絶句する


ゾディアックが新たな侵入者に襲い掛かるが全匹切り裂かれる


「グハッ!」

ディートリッヒが血を吐き倒れる…ゾディアックのダメージが来たようだ

イリヤがすかさずハイヒールをかけようとするが…後ろからの銃撃で肩を撃たれる

「…ッ…」


前方には傭兵や暗殺者10名が出てきて

後方には今まで倒してきた生徒とは雰囲気が全く違う生徒が出てきた


後方の生徒が一人言う

「やはり素人にはきつかったか~皇女が何となく憎いという奴らは基本ボロが出やすい…所詮ガキのおままごとだな」


前方の一人が言う

「この任務が終わったら本当に俺たちへの報酬と保護はあるんだよな?」


生徒の一人が言う

「ああ、そこは俺たちのクライアントを信用してくれればいい。腐っても貴族だからな…」


ヴィクトーリアは歯を食いしばる

(やはり、陰謀でしたのね…)


突如、ユリアとユリウスが動く、ユリアはリーダー格らしき男性に、ユリウスはリーダー格らしき生徒に突っ込む


ユリアは傭兵の胸に銃口の照準を合わせようとするが、気が付いたら倒され、眼前には拳が…意識が途切れる

ユリウスも同じように銃口の照準を合わせるが、自分から後方の銃撃で胸を撃たれ…幸い心臓から外れているが気を失う…



二人が戦おうとしてる間にユンファとアラリヤもお互い法力のシールドを張り、お互いナイフを召喚、イズミも刀を召喚して戦おうとするが、突如後ろに現れた全身黒衣の男に手刀を貰い、ノックダウン。

その間、アントニウスとヴィクトーリアも倒され、カイルは生徒の一人に果敢に立ち向かうが、他の生徒に四肢を撃たれ、最後は殴打される



ただ一人…アリスは何もしてない…ただ一人、これらの様子をじっくり見て嗤っていた


皆が訝しみ、エレナは自分の学友の悲惨な姿に悲痛な表情を浮かべる



生徒の一人が言う

「今回の我々の目的は皇女だけです。他の方々の命は奪いません。ですので皇女様…こちらに来てください。そうすればみんな助かりますよ」


エレナは覚悟を決めて投降しようとしたとき、アリスが口を開く

「エレナ…駄目ですよ。投降はしてはいけません。あなたは未来の皇帝なのですから、例え、下々が何人が死のうとも皇帝を目指すのならそのことを無視するのです。自分さえ倒されなければ国は守れますからね。下々は蟲のように湧くから心配すること自体無駄なのですから」


エレナは絶句する…そして周りも…


アリスは高らかに言う

「そうですよねぇぇぇぇぇ!お兄様ぁぁぁぁぁ!」








「あれ…」

傭兵の首が3つ転がる


銃声が2発…


生徒うちの6人の額に穴が開き、倒れる…


お互いのリーダー格が大声を出し警戒を促すが、銃声が2発響き、また6人が倒れ…5人の首が飛ぶ


あっという間にリーダー格二人だけ残る…


「クソッたれ!」

傭兵が銃を乱射しようし…腕が吹き飛ぶ


「ぐあぁぁぁぁぁ」


首がぽとりと落ちる


「へぇ?」


傭兵の最後の言葉だった



生徒は周囲を警戒しようとして


サクッ


肩にナイフが刺さる


正確には鎖骨上部ー痛点が集中する場所である。ふつうはそこを徐々に圧迫するのだが…


「うぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ」

強力な痛みが全身を走る。脳が悲鳴を上げる。全身が死にたいと叫び声をあげる。


フッと


学園の制服を着た黒髪で怜悧な顔立ちの少年が現れた。急に現れた…まるで先ほどまでそこにいたように微動だにせずに…



少年はしばらく眺めた後

胸から注射を取り出し、悲鳴を上げている生徒の首元に差し込む


生徒の悲鳴が徐々に小さくなる


少年は口を開く

「お前は惡の華か?」


生徒は黙る


少年が口を開く

「もしすべてを答えたらナイフを抜いてやる。今拒否したら鎮痛剤の解毒薬を打ち込む。ちなみに鎮痛剤はこれが最後だ」


生徒は顔を青ざめ答える


「惡の華…そいつらが俺らにいってきたんだ。今回の騒動を利用して皇女を殺さないか…と、ちなみに奴らの顔は見てない!今回の装備も全部奴らが用意したんだ!俺たちはただ反皇女派だ」


少年は黙る


「本当だ!俺を助けろ!俺はもっと他のことを知っている!ちゃんとじゃべるから!」


少年はぽつりと

「約束通り抜いてやろう」

と足を上げナイフを目にもとまらぬ速さで踏みつける


バァン


生徒の右肩が…右胸が…腕が衝撃で吹き飛ぶ

生徒は…勿論即死だ


少年は返り血だけでなく、少年の肉片や体液などを浴びるが気にもしない…


アリスがルンルンと少年に近づく

「お兄様♪今綺麗にいたします」

アリスは風魔法と水魔法で少年の汚れを取る



エレナが震えながら言葉を絞り出す

「なっ…なんで…なぁんで!殺したのよぉぉぉ!彼は助けを求めてたじゃなぁい!あなたはぁぁ!」

最後は悲痛な叫び声を出し、銃口をこちらに向ける


アリスはエレナをチラッと見て再び少年に蕩けるような表情を向ける


少年が口を開く

「では聞こう…なんで殺さないんだ?」


エレナは絶句する

「…ッ…なんで、って…」


少年は口を開く

「お前の言う通りこいつを生かそう。お前はどうする?」


エレナはしっかりとした面立ちで言う

「彼にはちゃんとした手順を踏んでもらってしっかりと罪を償ってもらいます」


少年はバカにしたように笑う

「なら、こいつは死刑だな。反逆罪だから確実だ」


エレナは

「…」


少年は続ける

「なら、生かす意味はないだろ?しかもこいつはに大した情報も持ってない唯の駒だ。逆にこいつを生かすとデメリットしかない。例えば、お前の言う通り、逮捕して、取り調べをしよう。こいつは命欲しさにデタラメを言って操作をかく乱するかもしれない。あるいは、脱出しようとして看守を殺すかもしれない。もしくはこのクズを殺そうとして暗殺者が送られるかもしれない。あとはこのクズを養う金もかかるしな」


全部正論だ…


エレナはそれでも言い募ろうとする

「それでもッ…」


アリスがなだめる

「まぁまぁ、エレナちゃん。お兄様が言ってることは正論よ。平和な世だからそんな綺麗ごとが言えるんだよ。もしここが本物の戦場ならそんなこと言えないですよ」


エレナは黙る。



突如、周囲から大勢の武装した生徒がくる


「大丈夫!みんな!」

マリア・イ・コンスタンティアが声を荒げる


イザベル・キ・ゾイ、グスタフ・グ・ギリアン、テオドラ・リ・ウィンザーが続いて学生選抜部隊を引き連れる


マリアが少年に近づく

「初めまして…クロード・ウィンコット君」


少年…クロードが言う

「ああ」


テオドラが剣を抜き、少年の首筋に当てる

「これら以外にも周辺で生徒が死んでいる…お前がやったのか?」


クロードはポケットから複雑な魔法陣をかたどった銀細工を出す

「ああ、俺とホノリアなどの特殊作戦部隊科がやった」


テオドラは剣を下す

「…親衛隊」


クロードが聞く

「よく俺の名がわかったな…」


イザベルが眼鏡を押し上げて静かに言う

「名簿に存在するが誰も見たことがない存在…だけど実在する」


クロードはせせら笑う

「そりゃ、普段お前らが俺を認識してないだけだ。ホノリアらやエル、アリスは認識できるが…それにしてもよく俺の名前を見つけ、覚えてたなぁ~」


グスタフは目を細めて渋い声で言う

「お前の認識阻害術は流石だ…魔法によるものなら抵抗レジストが効くが…お前のは音による純粋な技術だ…化け物でなければ抵抗レジストは出来まい。だが、音の影響を受けなければ、文字ぐらいは認識できる」


俺は驚く…実は今、ピアスに付けた鈴を鳴らしているのだが、今のこいつらには効かないようだ…記憶消去も難しいだろう…次回から幻覚剤を使うか…




この事件はその後、王国からやってきた親衛隊とKGMとFARUが合同で事件を処理した



そして後日王宮から皇帝の発表が下された…今回の事件により、連邦会議直下の王政府内閣のメンバーである宰相、内務、財務、外務、農務、法務、宮内の各大臣が辞任した。この辞任騒動はこれだけにとどまらずその下の副大臣7人、そして更にその下の補佐官長14人、他に宰相直属の総務長官、広報長官、情報長官の3人に加え官房長3人もおって辞任した。

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