承章 《歴史の真相》
エルは嗤う
「そして今年は王侯会議が開かれる。ホスト国はここ連邦だ」
授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る
「あ~、長いですわ。長かったですわ今日はここまでですわね」
ヴィクトーリアがめいいっぱい背伸びをする
「あ~、疲れた~」
エレナも同意する
「・・・(結局お兄様は来なかった)」
アリスは顔は笑っているが不機嫌オーラが漂っている
「「・・・・・・」」
姉弟は黙っている
「エレナ!デートをしよッ、グヘェ!」
ヴィクトーリアに吹き飛ばされるアントニウス
イズミがオロオロという
「あ、あの…」
皆がイズミを見ると
「ヒッ」
と隠れる
エレナが言う
「そんなに驚かなくても…」
なんとか勇気出して言う
「皆さんで私の両親が経営している食堂に行きませんか…勿論ッ、嫌でしたら!」
エレナは笑う
「そんなことないじゃない!ねぇ、みんな?」
皆首を横に振る
イリヤとアラリヤが手をあげ、アラリヤが言う
「私たち二人は宗教上の理由で食べられないものがあるんだけど…」
イスラム教では豚肉とアルコールが駄目で、キリスト教の巫女は水とパンとワインと魚肉、羊肉しか食すことが出来ない。
「大丈夫です…」
今夜のSクラスの夕飯は和食だ
カセン食堂は冬都旧準市民地区にあった。皆が店の中に入ると店の中は大勢の人でごった返していた。
お客に対応していた。禿頭の巨漢が入り口を見て顔が綻ぶ
「おお!イズミ!来たのか!後ろの友達はクラスメイトか!」
声がでかい
イズミは俯いたままボソボソ言う
「お父さん…2階の座敷、使うね」
「おお!いいぞ!」
その後、イズミは父親の傍により、ツンツンする。父親は屈み、イズミは耳元でゴニョゴニョ言う
「おうおう!わかった!任せとけ!」
皆は靴を脱ぎお座敷に上る
そして、和服を着た女性が手際よく料理を並べる。イリヤとアラリヤは他のみんなと少し違う料理を出すが美味そうだ。
イズミはポツリと手を合わせて言う
「いただきます…」
皆も真似して食べる
エレナが
「…美味い」
ヴィクトーリアも驚く
「こんなに美味しいものは初めてですわ」
姉弟は黙々と食べるが…眉が少し上がっている…しかも眼は二ミリぐらい大きくなっている
アントニウスは
「ちょ、ヴィクトーリア、まっ、待てッて」
ヴィクトーリアにアーン…じゃなくて料理を口に突っ込まれる
イズミを除く皆は箸ではなく、スプーンとフォークを使っている。
イズミを黙々とご飯をかき込む
アリスは内心イライラしながらご飯をやけ食いしてる
(お兄様のバカ、お兄様のバカ、お兄様のバカ…)
その時、下で大歓声が響き、皆が首を傾げる
「何かあったのかしら?」
ヴィクトーリアがフォークをアントニウスの口に突っ込んだまま言う
意外にも返答したのはディートリッヒが答えた
「今日はフッドボウルのフェデレーションカップの決勝戦だ」
その言葉に男子が皆ハッとなり、大急ぎでテレビの画面をつける。
決勝はスプリングスVSブラックズで、スプリングスがトライを決めたようで、現在43対41で白熱の試合が行われている
フッドボウル解説者のsh1126デス…フッドボウルはラグビーとサッカーが融合した架空の競技です。ボールは楕円形で、双方15人で争います。選手はボールを持って敵のゴールを目指して走り、敵はそれを妨害するだけです。パスは横方向あるいは後方にしなければいけません。もし、前方にパスしたければ、一回バウンドさせて、キックする方法があります。キックして飛んだボールをノーバウンドでキャッチ出来たら、ゴールキックやトライをする権利は失われますがタックルを受けなくなります。タックルはボールを保持している、またはボールを取ろうとしている選手のみ、且つ首から下を狙わなければなりません。得点方法はいくつかあり、一つは前方にサッカーに使われるゴールがあります。そこにボールを持った選手が突っ込みトライをすると5点、ただしゴールキーパーがいるので、タックルされて倒された場合失敗となり、キーパーによるゴールキックで試合が再開されます。トライが成功するとボーナスとしてゴールから12ヤードの地点でPKを行うことが出来、成功すると1点入ります。ゴールの前にはゴールエリアがあり、そこはボールを持った選手とキーパーしか入ることが出来ません。あとは、ゴール周辺にペナルティーエリアがあり、そこからボールを蹴ってゴールに入れると2点が入ります。最後は相手が何らかの反則を行った場合、PKを行うことがあり(普段は反則を行った地点から再開するFKみたいなものを行う)、PKに成功すると3点入ります。このゲームはラグビーでおなじみのスクラム、モール、ラックのような泥沼な試合やサッカーでおなじみの足による素早いパスの両方が楽しめる試合と思われます
現実に戻り…
ユンファが言う
「最近帝国でも人気が出てきたんだよね。今確か4強時代だよね?ブラックズ、スプリングス、ライオンズ、ロイヤルローズの4チームで優勝を分け合ってるところだと思うが…」
そこにイズミが何故か加わる
「最近!ロイヤルローズの成績は芳しくありません!それより、王者ブラックズに最も近いスプリングスに注目ですよ!注目!」
彼女大ファンのようだ…
ディートリッヒは分析する
「今2点差でスプリングスが有利だが、残り10分守り切れるか…」
テレビの前ではしゃぐ男たちを見て苦笑する女子たちだった…
「あれ?ユリウスは?」
ユリアが辺りを見渡し、見つける
やはりユリウスも男であった…テレビにかじりついていた…しかもど真ん中
結果は45対46でブラックズが勝利し、2連覇を達成した
帝国上空、俺たち中級親衛隊7人は輸送機の中におり、俺は先程までの話を思い出していた…
少し前…
俺はアナスタシアとルヴィアに聞いた
「帝国皇帝蔡という男を知ってるか?」
その一言に執務室全員が黙る
ルヴィアが言う
「その名をどこで…」
俺は正直に話す
「15年前、俺がメラと共に連邦に訪れ、当時捕虜となっていたネレイアデスを引き取りに来たとき、メラが言ったんだ。「先代の皇帝蔡は首都陥落直前に病死、長女が皇帝に、次女が宰相やってるな」当時、俺は東ローマの皇帝だと思っていた。だが、いろいろとおかしい、ソフィアは25年前の戦争の遥か前に皇帝となっており、宰相は王族じゃない…このメラの言葉に当てはまる国は一つ、中華だ!だが、中華の…ニナの前は確か景という男であり、彼は病死ではなく、家臣に殺された男だ」
アナスタシアは嗤う
「蔡…彼は歴史から消された人物よ…本来なら彼は帝国皇帝となり、私と勝負する存在だった…よくある話じゃない?暗愚な兄王と優秀な弟家臣…そんな話よ。彼らの父殿は優秀な弟を皇帝にと遺言を残したんだけど、蔡は兄に皇帝位を譲り、宰相についた。そのことに反対した人物が一人いた。それがメラちゃん…彼女は当時帝国に莫大な投資を行っていて、バカによって損失が出るのをヒジョーウに嫌がったのよ。その後、色々あって戦争が起こり、皇帝の無能さによる敗戦…はじめは全体の…戦略の指示は蔡が行っていたが、あと一歩で首都陥落という時に景が直接指示を取り敗戦した。その後、景はますます愚かな指示を送り、諫めようとした蔡を解任、幽閉した。これに激怒したメラちゃんは景を病死に見せかけて殺そうとし…失敗したのよ。理由としては蔡が兄を庇って用意された毒を飲み死んだのよ。これによってメラは更に激怒して戦争半ばにして撤退…何とか連邦が大勝利したわけ」
俺は驚く
「あの戦争にメラが関わっていたんだな…」
ルヴィアが頷く
「ええ、本来ならあの時の戦争は第二世代(イメージ:第一次世界大戦~朝鮮戦争)兵器が使用されるはずでした…ですが、会長の協賛で作ったいくつかの巨大兵器は第三世代(イメージ:ベトナム戦争~イラク戦争)を超えて第四世代(イメージ:現代より少し進んだ未来~)、下手をすれば第五世代(イメージ;SF世界)兵器が出てきました。いくら戦争に勝つためだとはいえ、物事には限度があるのですが…こちらとしてもいくつか計画を修正し、連邦の兵器は第四世代に抑えました。代表兵器は揚力装置を付けた飛行艦、及び南半球で発見された浮遊する島に推進装置を付けた飛行要塞をあげることが出来ます。帝国では現在第3.5世代で、大帝国は第三世代兵器を使用しており、ユーロピアは第二世代前期(イメージ:第一次世界大戦ぐらい)の兵器ですね」
時は戻り…
俺は目を開ける
「考えごとは終わりかな?」
ホノリアが顔をのぞく
「ああ」
ホノリアは笑い、準備をする
「もうそろそろシャンバラ、帝国、大帝国の国境近くに位置する国境不明確地区上空につく。これより我々はHALO降下を行い、着陸したら目撃者の口封じのため集落を殲滅し、殲滅後シャンバラに極秘に潜入する」
全員装備を確認する
今回の7人の…ホノリア以外名前が不明なのだが、装備は…
2年男子 (ドゥバー)……サブマシンガン、火炎放射器、グレネード、回復薬、
2年女子 (トリィ)…オートスナイパーライフル、対戦車ライフル、回復薬
3年女子 (チェティーレ)…軽機関銃、グレネード、回復薬
3年男子A (ピャーチ)…ライフル、グレネード、ライフルグレネード、回復薬
3年男子B (シェスティ)…携帯式対戦車 (ロケット)砲、携帯式迫撃(榴弾)砲、回復薬
ホノリア(セーミ)…ピストル、軍用レンチ、スパナ、楽器(?)、細剣、小盾、グレネード、閃光グレネード、地雷、対戦車地雷、回復薬強、
俺 (アジン)…大剣、大盾、誘爆剣、重機関銃、ナイフ、ピストル、グレネード、回復薬、
()の中は上から2,3,4,5,6,7,1,を意味する
「今回はお互いをナンバーで呼ぶことにする。装備のチェックが終わったら装備を箱に詰めろ」
皆各々の装備を箱に詰め、コンテナに入れる。そしてネットの口を機械で縛り、パラシュートを着ける。俺たちは空中に放り出されるとき、このネットにしがみつかなければならない…
操縦席から通信が入る
「まもなくチェックポイントに入ります」
俺たち7人は頷く。輸送機後部が開くのと同時に、俺たちは目の前のコンテナを押し、輸送機から飛び出す。上空1万5000メートルから落下する。
全身に当たる風が気持ちいい…
普通は酸素供給システムと防寒装備がなければ失神する危険性があるのだが、俺たち7人には必要がない。風により落下予定地点から遠ざかったため、コンテナに着けられているグライダーを開き修正する。
残り300メートルをきった時、コンテナに着けられていたパラシュートを開き、無事に落下予定地点に到着する。
ホノリアが耳に装着した通信機に報告する
「セーミからリーダーへ、無事到着、今より開始いたします。オーバー」
通信機から
「こちらリーダー、了解した」
俺たちはコンテナを開き、各々装備を着けた後、コンテナにヘリウムガスを十万させた風船を付け、上空に飛ばし、第一段階…
俺たちは周囲の集落を壊滅させた
ホノリアが
「これで良しと…そこのテクニカル(ピックアップトラックを改造した即席戦闘車両)を借りよう。前方には重機関銃を後方には対戦車砲を取り付けよう」
手際よく進めて全員テクニカルに乗り一気に国境を越え、シャンバラに入る
一時間後…
ホノリアが言う
「ここがシャンバラか…周囲はケシと大麻とコカイン畑で、働いているのは皆奴隷…観光客は皆、ヤクチュウ…」
通信が入る
「こちらピャーチ…傭兵は全てで3000、そのうち王宮にいるのが250だ。オーバー」
偵察にいったピャーチだ。奴の能力は偵察に向いてるらしい…
ホノリアが頷く
「セーミからピャーチへ、了解した。今すぐ帰投せよ。復唱せよ」
「こちらピャーチ、帰投を開始する」
通信が消える
その夜、宿の一室で地図を広げながら作戦を練る
「テクニカルから重戦車を外し、迫撃砲を備え付けるのはどうか…」
シェスティが提案する
皆が頷く
ホノリア簡単に全体図を言う
「城門正門からテクニカルとアジン、チェティーレが攻撃し、敵の主力が正門に集中したら後方から私とドゥバーとピャーチが侵入し、後宮の女官とニナを救出、トリィは高台から私たちを支援、量子ゴーグルで動く物体は壁越しでも確認できるはずだ。今のうちに私たちをマーキングしろ」
音が鳴り、7人全員マーキングする
真夜中1時…シャンバラ王宮
「ふぁぁ~、ねっみぃ~」
一人の傭兵が欠伸をする
「おい!ピエール!テメェ、サボってんじゃねーよ!」
同僚が大声を出す
「けどよ!ケイン!誰がこんな国を攻めるんだ?俺たち警備なんていらねーだろ?」
ケインは困った顔をする
「確かにそうだがよ…」
その時、正門前に車が走り、止まる音が聞こえる
「んっ?」
ピエールが正門前を見ようと身を乗り出すが暗くてよく見えない…その時、暗闇から大きな音と共にチカッと光る。爆発と共にピエールの上半身が吹き飛ぶ
「ピッ、ピエール!チクショウ!」
ケインは警報を鳴らす
その警報に、寝ていた兵士は起き、大急ぎで準備をする
正門は火に包まれていた。突破されたのだ…賊は正門を超え庭園に入り扉が開くのをのんびり待つ…シャンバラの王宮は非常に小さいのが特徴である。地方領主の城並みの規模しか持たないのである
門が開き大勢の傭兵が出ようとするが、重軽機関銃によりそれがかなわない。しかもオマケにロケット弾や榴弾も飛んでくる。勿論傭兵は他にもいる。2階3階4階の窓から撃ってくる傭兵もいるが、アジンとチェティーレの正確な射撃により次々と死ぬが、傭兵が撃つ弾は中々当たらない
正門部隊は確実に敵を引き寄せ、殲滅する
一方で後方は
三つの影が血の海の上を歩く
「意外とあっけないなぁ~」
ホノリアがつぶやき
笑みを浮かべる
「お疲れ様、意外と早かったね」
目の前には正門を攻撃していた4人がいた
俺は
「手ごたえがなさすぎる…リーダーから通信が入った…今傭兵約2000がこちらを目指している。そして天子を確保し、離脱と同時に帝国と大帝国から俺たちを殲滅するという名目で空軍が爆撃を行うらしい。リミットは1時間半だ」
高速で移動しながら報告する
「それなら遊んでる暇はないね」
ホノリアも移動しながら聞く
俺たちは順調に進み、後宮入り口に到着…眼の前は巨大な鋼鉄の門があった
ホノリアが俺たちが持つグレネードや地雷を閉ざされた鉄の門に手際よくつけ、離れる
「全部吹き飛ばす必要はないからね…」
ホノリアは転がっている石を投げて地雷に当てる
轟音が響き壁の一部に穴が空き、対戦車砲のロケット弾が追撃をし穴が広がる。人二人分入れそうな穴だ。
俺たちは黙って入る
そこは屋内だが緑豊かな場所だった。全て人口で作られたものだ…人工の森、人工の川。人口の池…そしてありとあらゆる動物が放し飼いされている…そこに数人の女官に囲まれた流れるような漆黒の髪と透き通るような真っ青な瞳を持つ少女がいた
少女は我々に気付き、仮面のような笑顔を張り付ける
「あら、お客様?ごめんなさい…今おもてなしすることが出来なのよ…」
ホノリアが首を振る
「御無礼をお許しください…天子ニナ…我々はあなた様の友人であるアナスタシア陛下より救出せよという命令を受けたわまりました。ご準備をお急ぎください。付き添いの方もお急ぎください」
ニナは寂しそうに笑って首を振る
「私はいいわ…ここに残るわ…そのかわり彼女たちを逃がしてあげなさい」
周りの女官は反論しようとするがニナがさえぎる
「いいのよ…今までありがとう」
俺とホノリアはアイコンタクトをとり、頷く
ホノリアが後ろの五人に命令する
「お前たちは女官たちを脱出させよ。裏口から外に出れるはずだ。そこでヘリウムバルーンで彼女を離脱させ、確認次第、お前たちもバルーンで離脱しろ。バルーンについてるGPSで位置が確認されるはずだ。輸送機が向かいにくる」
後ろの五人は頷き、速やかに開始する
庭から俺たち三人だけになると、ホノリアと俺は剣と盾以外の装備を外し、俺は重機関銃を再び持って、入ってきた入り口に照準を合わせ…巨大な鉄の扉が吹き飛ぶ…
ホノリアはニナを抱えて移動し、俺も移動しながら重機関銃をぶっ放す…
弾は入り口にいる人影に吸い込まれ…はじかれる
入り口に立ったのは9人の人影…皆布で顔をすっぽりと隠してるが服装でわかる
ニナが…
「大宦官…」
彼らはシャンバラの政治を担う宦官のトップである大宦官達であった
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