起章 《授業3》
授業は続く
「当時北西軍管区総司令官だったステッセルニ元帥が冬都に入って時は、戦争が始まって半年が経っていた。少し前に遡るぞ…戦争が始まって4か月が経ったとき、三重要塞が破られ、東部総軍は長い列車に乗ってウラル要塞に入った。そのウラル要塞では、ゴルシェンコ元帥は西部総軍が整うまで時間を稼ごうと要塞に立てこもって必死に勇戦したが、皮肉なことに河川から帝国軍の別動隊が要塞後方に上陸され、前後を挟まれた上に兵力でも劣る中で遂に壊滅、散り散りになって西へと敗走したんだ。その後一か月間、帝国陸軍1軍は必死の抵抗を続ける連邦軍を押し込み、キエフとユースタシアグラードを落とし、アナスタシアグラードを半包囲している帝国陸軍2軍と合流した。全ての制河権を確保し、東部全域と、西部三大都市の内2つを落とし、冬都を包囲したため勝利するかに見えたが、そうはならなかった」
エルは黒板にからスクリーンに変える
「冬都には精鋭部隊である中央軍10万とゴルシェンコが東部総軍壊滅の混乱から可能な限り引き連れて入城した東部総軍30万の計40万の兵がいたからな。ゴルシェンコが入城したときはまだ包囲網が完成されていなかったからな…これによりゴルシェンコは連邦軍最高司令官から防衛軍最高司令官に格上げされ、抵抗を続行。その後、2か月帝国軍は冬都を攻撃したが陥落せず、その間は前回の話で出た。ステッセルニがユースタシアグラードを解放し、北部から包囲網を突き破って入城した。それと同時に、ゴルシェンコは防衛軍最高司令官の任を解かれ、その直後自宅で自殺、入れ替わりにステッセルニが任命された」
「次は転換期だ。戦争が始まったのは5月だ…そして半年経つと11月だ。何がある?」
エルはニヤニヤする
皆は黙っているが、勿論答えは知っている
冬であると…
エルは皆の表情を見て笑う
「勿論、冬だ。帝国軍は今まで連邦奥地に攻め入ったことがなく今回が初めてとなる。奴らは地獄の寒さと呼ばれる連邦の冬を知らないからな。しかも帝国軍は早期決着を目論んでいたから、防弾用の鋼鉄の鎧は揃っていたが、毛皮をほとんど持っていなかったからな。特に戦奴の服はジャケットとズボンだけだから悲惨なことになる。この時期の冬は例年よりももっと寒かった。普段はマイナス10℃だが、この年はなんとマイナス30℃まで下がり、氷獄と呼ばれた北部…ステッセルニが解放したユースタシアグラードはマイナス50℃まで下がった」
エルは一旦息をつく
「これらの寒さと雪により、帝国軍の攻撃が止まった。当初、帝国軍は連邦の冬が寒いという情報があったため、念のため帝国では一切使わない毛皮を正規兵の分だけは揃え、たき火に使う薪も用意したが、想像以上の寒さにより、戦奴兵の多くが凍死し、属州兵も寒さで動けなくなり、毛皮を着ている正規軍も凍傷で銃が持てなくなったからだ。他の要因としては海軍が撤退したことが一つ、冬の間、連邦のほとんどの川が凍るからな。帝国海軍は一旦、海に戻った。あとは兵器が使い物にならなくなったこともある。帝国戦車や戦闘機などに使われるオイルが凍り、部品の隙間に氷が出来たのが原因だ。これによって、冬都防衛司令部は
敵は全面攻勢に出る余力がないと判断し、今までの防衛特化から方針を変え、小規模な反撃や奇襲を繰り返す作戦に出た」
エルはパソコンに何やらを打ち込み、スクリーンに当時の戦況図を載せる
「ゴルシェンコが入城したときは、40万だった防衛軍は、地下道を通じて軍を集め、ステッセルニが入る直前で55万、ステッセルニが引き連れた2万と、北部で再編された予備軍団3万の計5万が入城して60万、その後、地上と地下の両方から更に集め、もう一人の英雄…後の北西軍管区総司令官となるスレンスキー軍団長が<氷獄の兵士>と呼ばれる北方軍5万を引き連れて入城したときは90万まで膨れ上がていたんだ。当初冬都を包囲していた帝国軍は230万いたが180万まで減っていた」
「ステッセルニとスレンスキーは近日中に嵐が起こることを予測…二人とも北方出身だから出来る芸当だが、嵐の襲来に合わせる作戦を考案、名前は{
「吹雪の中の攻撃で冬都の包囲は破られ敵は一旦後退し、天候の回復後再包囲したが、防衛軍は130万と膨れ上がり、帝国軍は140万まで減り、包囲は形だけとなった。とうとう帝国軍陸軍大将軍豪傑は比較的寒さが穏やかである南部、キエフへ撤退し、防御に徹して予想以上だった冬を凌ぎ、春を待ち、援軍を得て再び北上する方針に切り替えたんだ。反対に連邦は全土北部を解放する{
「二年目は激しい戦いとなった。弱まった帝国軍は冬の間にやってきた援軍130万と合わせて270万まで勢力を戻し、それだけでなく80万の戦奴も届き、計350万まで回復したんだ。しかも巨大兵器は未だに健在で、連邦軍は頭を悩ませていた。あとは海軍も未だに健在なのも問題だ。ステッセルニはある作戦を立てた。作戦名は{
「キエフの戦いは前代未聞の史上最大の作戦だ。同時に行われた大西洋の海戦も史上最大の海戦だ。大西洋には再建された北方艦隊、バルチック艦隊、黒海艦隊、地中海艦隊だけでなく、東部の東洋艦隊、太平洋艦隊、オホーツク・ベーリング艦隊、そしてカスピ小艦隊の全艦隊が終結したんだ。この二つの戦いの作戦名は{
「これで勝利宣言が出されるかと思ったらアナスタシア2世は完全にキレていたらしく命令が出た。「亞洲帝国皇帝景を殺せ」という命令が…ステッセルニは中華を攻める作戦{
彼女はまとめに入る
12年前の王侯会議でアナスタシア2世と当時の亞洲帝国皇帝ニナは終戦協定を結び、ニナは正式に謝罪し、講和を結んだ。
結んだ条約名は
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