第12話 力と披露

そして、全員が登校して間もなく、初日の授業内容が告げられた。初日、といっても、正確には伊織たちはまだ学校の生徒ではない。数週間後に行われる入学試験、兼三級悪魔試験を経て、やっと伊織たちは学校への入学を許される。まだ魔界に来たばかりなのに、いきなり試験とは随分と無茶を言うものだ。


「今日は、人間上がりの人たちは力の覚醒を、それ以外のみんなも、まず私に力を見せて欲しいの」


それは簡単なテストのようだった。人間である伊織たちに、まず悪魔の力とは何たるかを見せるため、悪魔生まれの七人は順番に前に出て力を披露してみせた。

もとより、シャネルから説明を受けていた通り、力は四型と五系統に分かれるという。その中でも、最も貴重で高貴な力とされるのが吸収型であった。


ヴァンパイアを多く輩出するギーズ家の代表として、リリィが光系統の力を披露した。悔しいが、それはまさに貴族という肩書きを持つにふさわしい美麗な技の数々であった。美しい光の粒が教室中にあふれたかと思えば、リリィの手の中で自在に変化する。悪魔の力とは思えなかった。


「血を吸わせてくれたなら、もっと力が出るのに…」


そう呟くリリィに、さすがにそれはと先生は苦笑いした。



しかし、リリィはまだマシな方である。サキュバスやインキュバスといった色魔を多く輩出するプリェンツァ家であるルチアは、系統も心という目に見えないものであるため、力の見せようがないのだ。むやみにこの場で力を使ってしまうと大惨事になってしまう、と。結局ルチアは何もさせてもらえず少し不貞腐れてはいたが、逆にそれは彼の力の強さ、厄介さを表していた。



双子のテレサ、クレアのブラック兄弟は見事な氷の魔法を見せてくれた。危なく、教室中が極寒の地になるところを先生に止められていたが、これが魔導型だという。



先ほどリリィの後ろに付き従っていたリアムは、虫、主に蝶を使役する能力だという。教室中に紫色の蝶が優美に舞い、リアムは自慢げにリリィを見たが、当のリリィは全くの関心を示していなかった。不憫なものである。



さらに、残りの二人は変化型だというが、それは条件が揃わない限り変化することはできないのだという。変化を目の前で見ることができないのは残念であったが、黒髪の少年ローザが鋭い爪を出し空を切ったことから、彼が獣の変化型であることは容易に想像できたし、青い髪の小さな少女、ジェラルドが水を見事に操って見せたことから、彼女は何か水に関するものの変化型であり、おそらく条件というのも水であるということがわかった。


そして、やっと伊織たちの番である。ずっと楽しみにしていた瞬間ではあったが、いざ自分が力を得るとなると、改めて人間ではないなにかになってしまうのだと、少しの不安も感じる。伊織たちは呼ばれるままに立ち上がった。

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