第22話魔の氾濫の終焉

 ゴブリンと違い、ワーウルフとダークパンサーの戦闘力は高い。その二種の加勢により騎士と冒険者たちは押され気味になっていた。

 それに伴って、怪我をする者も増えてきている。


「ヒール・ウィンド!」

「グレースにヒール!」


 さっきまでは拳でゴブリンを叩きのめしていたフランクさんも、私の隣でヒールに専念するようになった。その周りをアマンダさんたち騎士が護衛してくれている。


「怪我をしたものは後ろに下がれ!」


 レオンさんがよく通る声で叫ぶ。

 ワーウルフとダークパンサーの出現で怪我をする人たちが増えて、そろそろ私とフランクさんだけではヒールをするにのも限界が見えてきた。


 元々、騎士たちの後ろには神官たちが控えていて、そこで負傷者はヒールしてもらうようになっていた。

 でも今までは目立った怪我をした人に、私とフランクさんでヒールしていたのだ。その結果、騎士さんたちはそのまま戦い続けられたけれど、後方に下がるとなると、その分戦力が落ちる。


 それにゴブリン相手なら、プロテクト・シールドがかかっている状態ならそれほど大きなダメージは受けない。


 でもワーウルフや、特にダークパンサーから受けるダメージはかなり大きく、ヒールを飛ばす回数も増えてきて。

 私もフランクさんもMPポーションを飲みまくりながら回復しているけど、それでも回復しきれない人が出てきたのだ。


「押されてんなぁ」

「数が、凄いですもんね……」

「ダリウスにヒール!」


 さすがに騎士さんたち全部の名前は覚えていないので、イゼル砦の騎士の回復はフランクさんに任せっきりになっている。


「まあ、魔の氾濫なんてもんは、こんなもんだけどな。今回はゴブリンキングだし、英雄はいるし。おまけにちびっこの賢者までいるんだ。楽勝だぜ」

「だといいんですけど……ルクレチアさんにヒール!レオンさんにヒール!アルゴさんにヒール!」


 会話の間にもヒールをしてMPポーションを飲む。フランクさんにも私が持ってたMPポーションを渡してあるし、ヒールの消費MPも教えてあげたから、二人ともMP管理はばっちりだ。


 それに私にはパーティーウィンドウのHPとMPバーっていう裏技があるしね!


「それにしても、あいつら強ぇな」


 フランクさんの視線の先に、フランクさんの後輩のシモンさんのパーティーが見えた。

 冒険者さんたちは日頃から魔物を倒しているからか、ワーウルフやダークパンサーを手堅く倒していっている、その中でもシモンさんのパーティーの強さは、見て分かるほどに際立っていた。


 ドワーフのガザドさんは大剣でゴブリンをなぎ倒し、獣人のヴィルナさんはそれより細い剣を高速で操って敵を倒している。エルフのミドリさんは二人の後ろで魔法を放って、その横でシモンさんが回復をしている。とってもバランスの取れたパーティーだ。

 さすがにSランクのパーティーは違いますね。


「ヒール飛ばしも、できてますね」

「ああ、教えてやったからな」


 なぜかヒール飛ばしができるようになるためには、一度パーティーを組んだ状態で練習しないとダメだったのだ。だから教えたって事は、フランクさんがシモンさんとパーティー組んだのよね……


 ってことは、フランクさんが「パーティー組んでください、お願いします」ってやったのかな……


 想像して笑いそうになったけど、そんな場合じゃないのでがんばって笑いをこらえた。


 その間にも、戦況は一進一退の攻防を続けていた。


 ゴブリン・キングの咆哮は『鼓舞』というスキルを使っているらしく、咆哮が聞こえる度に、魔物たちの攻撃が激しくなっていった。


 レオンさんたちも何とかキングの元まで行こうとしているけど、ゴブリンの群れに加えてワーウルフとダーク・パンサーの群れまで増えてしまって、ほとんど足止めされてしまっている。


 もう少しゴブリン・キングの方へ進めれば、私の魔法も届くと思うんだけど、この距離では詠唱しても発動しなかった。


 じわじわと魔物の群れに押されてゆく。


 このままじゃ、一旦後退して、また態勢を立て直すしかなくなるのかな。


 でも、人には休息が必要だけど、魔物にも必要なのかな?

 必要ないとしたら、このまま不眠不休でゴブリン・キングは進軍していくの?


 村を、街を、人を飲み込んで……


 でも、どうしてゴブリン・キングは森から出て人を襲うの?

 なぜ魔の氾濫が起きて、魔物の王が生まれるの?


 一度、疑問に思ってフランクさんに聞いてみたら、それは「神が人を試しているからだ」って言ってた。


 試すって、何?


 この世界には本当に神様がいて、その神様がこの世界が存続するかどうかふさわしいかを判断する為に、人に試練を与えてるって言うの?


 でも、なぜ試されないといけないの?


 分からない……


 この世界の人たちにとっては、生まれた時から世界はそういうものだと思ってるから疑問に思わないのかもしれないけど、私にはそれが自然の摂理だなんて思えない。

 だけど、何が原因でこんな現象が繰り返されているのかも、分からない。


 神様が決めたの……?

 本当に……?


 じゃあ、その神様はどこにいて、今何をしているの?


「ユーリちゃんっ!」


 つい考えこんでしまって、反応が遅れた。

 ゲオルグさんの声にハッっと目を上げると、目の前に牙をむくダーク・パンサーが迫っていた。


 噛まれるっ!!!


 目をぎゅっと閉じて痛みを覚悟したけど、予想した衝撃はこなかった。


「みぎゃああああああ」


 恐る恐る目を開けると、ノアールが小さな体でダーク・パンサーの喉笛に噛みついていた。

 ダーク・パンサーはノアールを振り払おうと、首を激しく振る。

 でも、噛みついたノアールは振り落とされまいと、必死にしがみついていた。


「ノアール!!!」


 ダーク・パンサーが前足を振り上げて噛みついているノアールを叩き落とした。


「ノアアアアアーーーール!!!!!!」


 小さな黒い体が弧を描いて、地に落ちる。


 ポトリ。


 一切の音が消えたその中で、ノアールの落ちた音だけが聞こえた。


 小さな体がゴブリンの群れの中に消える。


 私は咄嗟にパーティーウィンドウを確認した。


 大丈夫、まだノアールのHPは消えてない。


「ノアールにヒール!」


 でもあそこから助けださないと、あんなに小さな体はゴブリンに踏みつぶされてしまう。


 そう思った瞬間、ノアールの落ちた場所から眩しいほどの光があふれた。


 な……何?!


 そして、その光が収まったそこには。


「みぎゃああああああああううぅぅぅぅ」


 え……?


 ノ……ノアール……?


 そこには巨大化したノアールの姿があった。


 え……?なんか、普通のダークパンサーより大きくなってない……?


「ぎゃるるるるうぅぅぅぅぅぅ」


 一際大きく唸り声を上げたノアールは、そのまま私に襲い掛かろうとしていたダーク・パンサーに向かって飛び掛かる。

 二匹はそのまま絡み合って、ごろごろとゴブリンの上を転がっていった。


 二匹のそっくりなダークパンサーが互いの喉笛を狙って襲い掛かる。

 いや、よく見るとノアールが青い瞳なのに対して、もう一匹のダークパンサーの目は黄色だ。


 背中を丸めたノアールが、次の瞬間、大きく飛び上がる。

 もう一匹のダークパンサーも、大地を後ろ足で蹴り上げる。


 空中で、二匹のダークパンサーが交差した。


 一匹はそのまま地に落ちた。

 そしてもう一匹は。


「みぎゃあああああああぁぁぁぁううう」


 地面に降りたち、咆哮を上げる。


 すると、人に襲い掛かっていたダークパンサーの動きが止まった。


「ぎゃるるるるるるぅぅぅう」


 次の咆哮で、ダークパンサーたちは身を翻して仲間であったはずの魔物へと牙を向ける。


 え……?え……?どういう事?


 あっけに取られる私とは違い、騎士さんと冒険者さんたちの対応は早かった。


「この機を捉えろ!一気に行くぞ!」


 誰かの声におおー!と鬨の声が上がる。


 レオンさんたちも、一気にゴブリンキングへと向かっていく。


 そうだ。ぼーっとしている暇なんてない。今はただ、ゴブリンキングを倒す事だけを考えよう!


「エリア・プロテクト・シールド。対象は騎士の皆さん、冒険者の皆さんと私とノアールとルアン!」


 切れかかったエリア・プロテクト・シールドをかけ直してから、MPポーションを飲む。


 MPはばっちり。

 後は届くかどうか。


「ゴブリンキングにサンダー・ランス!」


 空から降り注ぐ無数の雷の槍が、ゴブリンキングへと降り注ぐ。


「やった……!?」

「いや、まだだ」


 雷の槍から放たれた光が収まっても、まだそこにゴブリンキングは立っていた。


 もうっ。マジック・シールドでもかかってるのかな。っていうか、ボスモンスターだから、こんな中級魔法一発じゃ仕留められないか……


 見たところ、そんなにダメージを受けているようには見えない。

 けれど少しはダメージを与えられたからだろうか。ゴブリンキングがゆっくりと首を巡らせて私を見た。


 あ!

 そういえばファーストアタックしちゃったら、ヘイト取っちゃうじゃん!


 ゲームでは最初に攻撃した者に、モンスターの攻撃が集中する。それを利用して、わざと盾役の剣士さんとかがファーストアタックするんだけども……


 なんか、気のせいじゃなければ……こっち、ガン見してるような……

 うきゃぁぁぁぁぁぁ。


 ゆっくりとゴブリンキングが進路を変えた。


 いやああああ。こっち来るうううううううう。


 でも私にとって幸いなことに、その進路の先にはレオンさんとアルゴさんがいた。


 ひらりとレオンさんが飛び上がる。

 その剣先から炎と風が舞って、ゴブリンキングの胴を抉った。


「ウガアアアア」


 レオンさんの攻撃が効いたらしく、ゴブリンキングがうめき声を上げる。

 アルゴさんの、イゼル砦の騎士さんの剣が、ゴブリンキングの体に斬りかかる。


「アルゴさんにヒール、レオンさんにヒール!」

「ジェイコブにヒール、スタンにヒール、ランスリーにヒール!」


 私とフランクさんでヒールを詠唱して、皆を回復する。


 ダメージを気にする事なく戦い続けられるレオンさんたちは、次々とゴブリンキングに攻撃を仕掛ける。


 そのうちにリトリス砦の騎士さんたちも合流し、ゴブリンキングの周りのゴブリンを一掃していった。


 やがて、長いような短いような時が過ぎ……


「ウガアアアアァァァァァァァ……」


 遂に、ゴブリンキングが大地へと倒れ伏した。


「ゴブリンキングを倒したぞおおおおおおおおお!」

「うおおおおおおおおおお!」

「レオンハルト様が倒されたぞおおおおお」

「レオンハルト様ばんざい!」

「英雄ばんざい!」

「英雄ばんざい!」


 地面が揺れるかと思うほどの歓声が沸き起こる。


 そこにレオンさんが炎と風をまとった剣を、天高く掲げた。


「諸君!ゴブリンキングはここに倒された。今この時より、魔の氾濫の終焉を宣言する!だが、統率を欠くとはいえ、まだ魔物の脅威は去ってはいない。気を緩めずに魔物の殲滅にあたれ!」


 再び歓声が沸き起こり、残りの魔物の殲滅が始まった。


 それまで統率された動きをしていた魔物たちは、王を失って右往左往している。魔の森へと逃げる魔物も多かった。


「深追いはするな!残っている魔物を倒せ!」


 レオンさんの指示に、魔の森へと魔物を追いかけようとしていた騎士と冒険者の一団が立ち止まる。


 そして私は……大きくなったノアールの前にいた。






「ノアール……なんでそんな姿に……」


 普通のダークパンサーより一回り大きい姿に、違和感を覚える。

 ノアールと一緒に戦っていたダークパンサーは、ゴブリンキングが倒されると魔の森へと帰ってしまっていた。


 そりゃあ目の前の子はノアールだけど……ノアールだけど……

 分かってるけど……

 でも……


「みぎゃぁ……」


 ノアールが寂しそうにうなだれて鳴く。


「ユーリちゃん……」


 いつの間にかそばに来たアルゴさんが心配そうに声をかけてくれる。


「ノアール、なんで……」


 でも、この悲しみはアルゴさんには癒せない。


「なんで、大きくなっちゃったのおおおおおおお」

「え?問題なの、そこ?!」


 そこ、って当然じゃないですか!


「だって、せっかく子猫だったんですよ?普通は大人になるまで、もうちょっと時間がかかるじゃないですか!そりゃあ、いつかは大人になるって覚悟はしてましたよ。成長は喜ばしい事だし。だけどだけど、こんなにすぐに大きくなるなんて思わないじゃないですか!今のノアールも可愛いけど、でも、もーちょっと子猫の時期を満喫したかったんですううううう」

「ごめん。俺はもーちょっとシリアスな展開になるかと思ってたよ……」


 脱力したようにアルゴさんが呟く。


「シリアスっていうか、私にとっては悲劇ですうううううう」


 その時。


「にゃあん」


 変わらず可愛らしい声が聞こえた。

 はっと目を上げると、そこには子猫のノアールが!!!!


「ノアール、ちっちゃくなれるの?!」

「にゃあん」

「のあああるううううう。大きくても可愛いけど、でもやっぱりちっちゃいほうが可愛いよおおおおおお」

「にゃああん」


 駆け寄ってきたノアールを思いっきり抱きしめて、私はこれで魔の氾濫が終わったのだと、安心して笑った。





 ゴブリンキングを倒し、集まっていた魔物を一掃した後は、とりあえずリトリス砦に泊まって、翌日イゼル砦に戻る事になった。


 人も馬も怪我をしたり疲れていて、そのまま帰る事ができなかったからである。


 リトリス砦はイゼル砦とそう変わらない造りの砦で、私たちが到着すると、大歓声で迎えられた。

 砦の中に全員入るのは無理なんで、外にテントを張ってもらって、私たちはそこで休む事になった。


 でもすぐに砦の厨房から大量のお酒と食料が運び込まれ、テントの周りは飲めや歌えやのお祭り騒ぎのようだった。


 レオンさんとアルゴさんは、リトリス砦の責任者の人たちとの会議があるらしく、私はゲオルグさんとアマンダさんと一緒に目の前のご馳走に舌鼓を打っている。


「これ、おいし~。何のお肉だろ」


 何かの肉の煮込みを食べてみたら、トマトソースっぽい味付けで凄くおいしかったです。なんかこの辺の特産でトマトが採れるから、トマト料理がよく食べられているんだそうです。


「ああ、ホーンラビットじゃないかしらね?」

「あ~。……そーですかぁ」


 ごめん、ルアン君、あなたの仲間をまたおいしく頂いちゃいました……。


「それにしても、ノアールちゃんが王種だったなんてねぇ」


 あの後、アルゴさんがもしかしたらノアールは変異種で、なおかつ王種なんじゃないかって言ってました。

 なんで変異種かっていうと、ダークパンサーの目は普通は黄色いんだけど、ノアールだけ青かったからだそうです。


 それで予想だけど、本来はノアールが魔物の王となるはずが私に懐いて進化しなかったんで、その代わりにゴブリンキングが生まれたんじゃないかって。

 そうじゃないと、ノアールが進化した後、急にダークパンサーがノアールの言う事を聞いた事の説明がつかないって。


 実は私もそれには予想がついたというか……


 いや、だって、またLVアップしたかな~と思ってステータスを見てみたら……





 ユーリ・クジョウ。8歳。賢者LV23。


 HP 281

 MP 270


 所持スキル 魔法100

       回復100

       錬金100

       従魔 62



 称号 

    魔法を極めし者

    回復を極めし者

    異世界よりのはぐれ人

    幸運を招く少女

    豹王の友




 パーティー組んでたおかげで凄いです、一気にLV23まで上がりました!レオンさんがゴブリンキング倒してくれたし、ファーストアタックしたから経験値がいっぱい入ったんでしょうか!


 って、そうじゃなくて、称号のとこが問題です。『豹王の友』の豹王って、やっぱりどう考えてもノアールの事ですよね~?


 つまり、ノアールは豹の王だったわけです。

 それって魔物の王、と同じ意味ですよね……?


 それに大きくなったノアールは他のダークパンサーよりも大きかったし……


 あ、そういえば、アマンダさんがあんなに大きいなら、背中に乗せてもらえるんじゃないかって言ってましたね~。今度、お願いしてみようかなぁ。


「王種でも可愛いからいいです」


 きっぱり断言するとノアールが同意するかのように、にゃ~んと鳴いた。


「可愛くて賢くて強くて、うちの子、最高です!」

「にゃんっ」







 その後もひとしきり食べて満腹になったら、ちょっと眠くなってきてしまいました。アマンダさんとゲオルグさんはまだ飲み足りないそうなので、気遣いのできる私は遠慮する事にしました。


 やっぱりね、恋人同士の邪魔はしちゃダメだしね!


 今夜休む予定のテントまですぐそこなので、アマンダさんが送っていくというのを止めて、一人で歩いていきます。

 いざとなったら無敵のボディーガードのノアールがいるし、大丈夫!


 テントの中に入ると、そこには先客がいました。


 なぜか黒い布で顔を覆っている黒ずくめの人です。

 怪しさ満載ですが……冒険者の人かなぁ?今日、ここに泊まるのかな?……って事は、女の人?


「ふ……珍しい気があると思って来てみれば……確かにこれはおもしろい。見事に混ざっている」


 布でくぐもって声で性別の判断はできないし、言ってる意味も分からない。

 なんだろう、この人?


 警戒すると、腕の中のノアールが「ふーっ」っと威嚇するような声を上げた。


「ああ……そうか。そうなのか」


 じっと私を見つめていた人の蒼い目が、不意に輝いた。深い深い……海の底のような蒼い瞳。


「異世界の娘よ。全てを知りたくば、賢者の塔を目指すがいい」


 え……今、なんて……?


「そこにお前の求める答えがある」


 それって……帰れるって事?!

 賢者の塔がどこかにあるの?


 呆然としてると、その黒ずくめの人はテントから出ようとしていた。


「待って!どうやって賢者の塔へ行けばいいの?」


 焦って聞くと、その人は足を止めてただ一言つぶやいた。


「鍵を探せ」

「鍵?鍵ってどこに……待って、行かないで!」


 引き留めようとしてつかもうとした腕は、するりと指の先から抜けてしまった。そしてそのまま、振り向かずにテントから出てしまう。


 慌てて追いかけたけど、黒ずくめの人の姿はもうどこにもなかった。


「あら、ユーリちゃん、どうしたの?」

「グレースさん!今、黒ずくめの人を見なかったですか?」


 たまたま通りかかった、アマンダさんのお友達の女性騎士さんに聞いてみる。


「いいえ。そんな人、見なかったわよ。冒険者かしら?」

「そう……ですか」


 あの人……私が異世界から来たって知ってた。

 それに賢者の塔の事も知ってる。


 鍵を探す……?

 エリュシアオンラインでも集めた鍵の事だろうか……


 エリュシアのそれぞれの国のダンジョンにある、六本の鍵。

 それを集めれば……賢者の塔へ行ける?!

 そうしたら……帰れる?!


 私は初めて元の世界に帰れるかもしれない可能性を示唆されて、しばらくその場に立ちすくんでいた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る