第09話 デートじゃないの?

「ん〜」

「似合ってますよ。幸矢先輩」

「ん〜」


試着していたゴーグルを外し、棚に戻した。スポーツショップに入ってもう一時間。ウェアにスイムキャップにと見てまわり、今先輩はゴーグル選抜に忙しい。


「これも。びっみょ〜に合ってない」


お〜い。デートだと思ってたのは俺だけですか〜。

お腹もすいてきたんですけど〜。


「なぁ一矢。これはどう?」

「似合ってます」

「そればっかじゃん、さっきから。ちゃんと見てる?」

「見てますって。似合ってます。ベースいいから、どれでもかっこいいっすよ、先輩なら」

「口うまいね〜」

「あっでも。一番良かったのは3番目」

「3番目って。どれかわかんねーよ」

「スワンズの。ハニューモデル」

「ん〜?こいつ?」

「そっちのっす」

「これ?」


先輩は、手に取ったミラータイプのゴーグルを、ひっくり返し、ゴムを引っ張り、感触を試す。ゴーグルの相性は地味にレース結果を左右する。判ってますけど、ね。


「別の店みてみよっかな」


抗議するかのように、俺のお腹が音立てた。

……はずかしっ。


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