第04話 二人きりの時間

部室のドアをガラガラと開けた。

思った通り。誰も来ていない。


「はよ」


幸矢先輩以外は。


「おはようございます」

「早いじゃん。一矢」

「そうすか?」

「集合まで30分もあるよ」

「早く起きちゃって」

「ふーん」

「なんですか?」

「べつに」

「そすか」

「座んなよ」


先輩の真向かい。ちっさい机を挟んで座る。

持ってたコンビニ袋を机の上に置いて、中を探った。


「食べますか?サンドイッチ」

「いいよ。食べてきたから」

「んじゃ俺だけ」


まずは。これにしよっと。レタスハムサンド。

春にリニューアルされてから、レタスもハムも大増量。

このレタスのシャキシャキ感が、楽しい。

カシャッという音がした。


「激写」

「せんぱーい」

「旨そうに食ってっからさぁ」

「シェアしないでくださいよ」

「え?やちゃった」

「えぇっ!」


ちょっと待ってよ。それはさすがに。


「って。うっそだよ〜ん」


そう言うと先輩は噴き出した。

なんだよ。めっちゃ焦ったじゃないか。

意外とちっちゃいイタズラが好きな人なんだよな、この人。


「代わりに待ち受けに使っおうっかな」

「待ち受けですか?」

「昨日みたく一矢がLINE送ってきたらさ。


 スマホにバーンって表示されるんだぜ?この顔が」


「やですよ、こんなの。口、パンパンじゃないすか。俺」

「だな。餌を頬張るリスみてぇ」

「リス!」

「うんリス。いい。小動物系だ」


気づいてますよね?

俺が、この時間のために、早く来たの。

先輩、気づいてますよね?

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