第15話 みんなにヒミツはある

週明けすぐに中間テスト。いつもなら部屋の机にかじりついて、遊んでばっかの昨日の自分を呪ってる。


「わかった!」


今日はカフェで幸矢先輩と一緒。英語が苦手とこぼしたら、オレがみてやるって得意気な顔で言ったのに。


「このTHE BOYが、後ろのSPEAKS FOR HERの主語なわけだからWHOだよ。ここは」

「それは判ってるんですけど」

「どこが判んないんだよ」

「いや……。なんでTHATじゃいけないんだろって?」

「それは……」

「それは?」


眉間にしわを寄せ、うなりだす先輩。テスト対策って意味じゃ、だいぶ期待はずれ。


「ちくしょ。ひとくちもらう」

「えっ」


コーヒーと一緒に頼んだミルクレープを、先輩はフォークでザクッと切りとって口に運んだ。


「嫌いなんじゃ」

「頭がフル回転してっから糖分いるの。あんま」


甘さに顔をしかめる一矢先輩。なんか可愛くて思わず笑ってしまう。こうやって先輩と一緒にいられるのは、やっぱ嬉しい。


「鳴ったよ、携帯」


テーブルの上のスマホをほんのわずか傾けて、宛先を確認した。

ありえない名前が、そこには表示されていた。


「一矢?どした〜?お〜い」


今になってメールなんて……。一体どういうつもりなんだよ。忘れていた憤りが体の中にふつふつと沸き上がるのを感じる。その時。

パンッ!

目の前で手を叩かれて、我にかえった。


幸矢「一矢。どうした?」

一矢「……。べつに」

スマホを戻す。さりげなく、モニタの方を裏にした。

幸矢「一矢?」

一矢「お母さんからでした。珍しく帰り早いから、一緒に外でご飯食べようって」

幸矢「そっか(嘘だと気づいてる)じゃ、コイツを早く片づけないとな」


みんなに秘密はある。先輩にも。オレにも。

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となりにはキミがいる るかっち @rukacchi

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