第14話 幸矢先輩のヒミツ

幸矢先輩の秘密に気がついたのは、十月に入ってすぐだった。電話。メール。ライン。金曜の夕方3時間だけ、先輩と連絡が取れなくなる。


「昨日はどうしたんですか?電話したんですよ」


それとなく話をふってみた。


「携帯のバッテリー切れちゃってさ。ソシャゲのやりすぎかな。はは……」


バレバレの嘘でかわされた。


「そーいや、オレも断られたわ」


他の先輩にも聞いてみた。


「こないだのプール納めの後にボーリング誘ったんだけど。用事あっからって瞬殺」

「珍しい」

「だろ?なんか調子くるちゃって。結局ボーリング、ナシんなった」

「どうしたんすかね?幸矢先輩」

「かのじょだな」

「え?」

「部活終わるとサクッと消えるし、練習やすみン時も、いつのまにか校内から消えてるしさ。カノジョできたとしか考えられねえ」


できたのがカレシって発想には、ま、フツーならないよね。


「ちくしょ〜。学校帰りのカフェでさ?2人仲良く笑いあってさ。見つめ合ってさ。鼻くっつけてさ。キスとかしちゃってんだぜ?絶対」


してません。少なくとも。オレとは。


「あ〜考えるとイラッとする。死ね。死ね、リア充」


水谷先輩を嫉妬に狂う哀れな男にしただけで、たいした収穫は得られなかった。それどころか。


「カノジョできたとしか考えられねっしょ」


わき上がる疑念を振り払おうと、ぶんぶん頭をふった。そんな事ない。先輩はオレのことが好き。部室のドアが開いた。


「おつかれさまで〜す」

「遅くなりました〜」


水泳部のマネージャー。三橋さんと2人並んで、幸矢先輩が入ってきた。


「でさ。続きなんだけど」

「その話。続きあるんですか?」


他の誰かなんて……。いるわけないよね。

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