第11話 この恋はきっとうまくいく

「俺たち、付き合えんじゃね?」


これも妄想なんじゃないかって……不安になった。


「俺も一矢も……、そういう人みたいだし?どっちも、いいなって思ってるみたいだしさ。……から、つきあってみない?おれら」

かすれたり、震えたりする幸矢先輩の声。その必死さが、リアルで、強くて、やばいこれ、現実なんだって気づかされる。


「一矢?」


オレ今マジで告られてる。


「こっち。向いて」


この展開を望んでた。それなのに。前に進めるのが、怖くなる。


「オレを見て」


石化の呪文をかけられたみたいに体が固まって、動かない。トレイに乗せたハンバーガーの包み紙。プリントされたリサイクルマークから、オレは目を離せずにいる。


「なんか言ってよ。一矢」


先輩の声に切なさが混じる。早くしないと。オレの気持ち伝えないと。先輩が、また遠くなる。つかまなきゃ。この手を。先輩が差し伸べてくれた手を。今すぐ。言葉はオレの中を駆けめぐるだけ。外へ少しも出てかない。


「……。俺じゃ……ダメ?」


ありったけの力をふりしぼって、悲しくなるほど小さく首を横に振る」


「じゃいいの?」

「ん」

「聞こえなかった。もう一回」


幸矢先輩が顔を近づけてくる。テーブルにつきそうなほど頭を下げて、うつむき気味のオレの顔を覗きこむ。


「オレとつきあってくれますか?」


きっと上手くいく。先輩は彼と違う。先輩はオレとおんなじ人で、僕らはたぶん、出会った日から互いの事を意識してた。


「つきあってくれますか?」

「……。はい」

「え?」


驚きで固まる先輩に、付きあいたいです。と告げた。

大丈夫。先輩は彼とは違う。


「一矢」


今度はきっと、うまく行く。

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