番外編。チョコが溶けるのは誰のせい?

今日はバレンタインデー♪


「幸矢先輩」

「ん?」

「はいこれ」


部室の裏に先輩を連れだし、手作りのチョコを渡した。


「甘いのキライですよね?砂糖少なめで、カカオの風味を楽しめるようにしました」

「さんきゅ」


そっけな〜。もすこし喜んでくれてもいいのに。

先輩がカバンを開けた。渡したチョコを中にしまう。ん?


「み、見るなよ」

「なんすかっ。これ」


バックの中はチョコレートで溢れてた。


「これは水野さんから」


先輩はウチに寄ってくれた。リビングのテーブルに中身をぶちまける。

おいおい。幾つあんの。


「この辺はクラスの女子からでしょ。そっちのは部員の女子」

「これは?」

「塾で一緒の清水さん。これは向かいの関さんからもらったヤツで、これは尚人君から。で、ソイツが」

「待った」

「ん?」

「尚人君?」

「3組の」

「ふーん」

「そこ引っかかる?」

「べつに」

「……。告られちゃった」

「え?」


「幸矢!」

「お、おう」

「俺の気持ちだ」

「これ、チョコレート」

「受けとれ」

「尚人」

「早くしろ。俺様の愛がこのチョコをドロドロに溶かしてしまう。早く受けとれ。ばかやろう」

「尚人……。ふぅ、あの時の尚人の目。グッと来た」

「せんぱい」

「冗談だってば。ただの試供品です」

「試供品?」

「尚人くんち、お菓子屋だから。修業のために作ったから食べて〜って配り歩いてて。いらねっつったのに、押しつけられただ〜け」

「なんだ。そんなこと」

「妬くなって」

「や、妬いてない」

「そうですか」

「あ〜あ。こんなにいっぱい貰ってるなら作るんじゃなかったっすよ。材料買うの、めっちゃ恥ずかしかったのに」

「逆チョコってのもあっから、平気だろ」

「あざ〜っす」

「なにこの手」

「逆チョコ。ください♪」

「はい」

「いやいやいやいや。先輩がもらったヤツですよね、それ。横流しすんの止めましょう。ちゃんと気持ちの入ったヤツをください」

「入ってるよ」

「先輩の気持ちが欲しいですっ」

「入ってるって。俺が買ったから」

「え?」

「俺が買いました」

「……。どこで?」

「まいばすけっと」

「三丁目の?」

「ツタヤの隣のね。いや〜はずかったね〜。特設コーナーにさ。キャーキャー女子が群がってて。突撃するまで五往復くらいしたんだぜ」

「先輩」

「ひょっとして。いらない?」

「あっ」

「これじゃなくて別のものがいい?」

「先輩」

「キス?ハグ?」

「うっ。それも捨てがたい」

「え?まさかそれ以上?」

「いやいや。チョコ。チョコください」

「いいの?」

「いいす。ください」

「ふふ。はい」

「綺麗にラッピングされた紙箱を受けとった」

「ありが……」

「オマケ」

「わっ」


先輩の腕が俺を優しく包みこむ。あったかい。あったかすぎて……。


「先輩」

「ん?」

「チョコが溶けます」

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