第46話
桂のいで立ちは、私がコーディネートした。
初日(6月29日)だったか、自宅マンションから下りて来て私を待っていた彼女を見てちょっと引いた。離婚前は姉の蘭にパジャマとして着せていた従姉からのおさがりのTシャツを着ていたからだ。黒地に白のアクセントが袖口や襟口に施してあるそれは、完全に色褪せて黒と形容し難くなっている。
「まだ、その服着てるの?」
ともらしつつ、胸が痛んだ。え?と感じるのがそのTシャツだけではなかったので、男親にはこういう感覚が欠如しているのか、私がそばにいたら、もっと気をつけてやれるのに……
桂自身が荷造りした中には、何枚かもう引退させるべき衣類が含まれていた。日本には蘭が着られなくなった衣類や、桂のために買い置いていた服がたくさんあったから、彼女が台湾に戻る時に、‘もう役目を十分過ぎるくらい果たした’何着かをスーツケースに入れなかった。
桂は10歳になっても、姉のおさがりを〝可愛い!〟と目をキラキラさせて胸の前で広げ、喜んで着た。それはそれは健気で、一緒に暮らしていた頃は節約のため、ほとんど次女に新しい衣類は買ってやれなかったが、今はちがう。台湾でも桂を子供服店に連れて行き、好きな物を選ばせた。これは、桂より私の方が嬉しいことかもしれない。
娘たちは年子だが、蘭は標準身長も体重も超える、発育力旺盛な子。
一方、桂はまず背が低い。保育園時代から今まで常にクラスの先頭か2番目にいる。横にも伸びない。私に似たようで、骨細で厚みのない体格で、食事量は決して少なくないのになかなか身に付かない。
2人のガタイの差は歴然としており、2〜3歳離れているように見られるのが常である。
桂自身もジャックも、身体の小ささをとても気にしているが、私はちっちゃな桂が可愛くて仕方ない。ただ、玉に瑕なのは、あっという間に大きくなってしまって着られなくなる服がたまる蘭と、桂がそれらを着るまでに結構な月日が必要なことだ。
さて、関空着後のバス、電車の連絡が良く、ふだんの夕食時間前に家に帰れた。蘭は桂を抱き上げて歓迎した。軽い桂はひょいと持ち上げられ、両足をぴんぴんさせた。
そして、柴犬フウの次代犬、COCOと感激の対面だ。
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