第27話
右腕一本というと、体全体に占める割合は大きい。ということを思い知らされた。手首、肘、肩のいずれかが痛む時間もあるし、全体が一斉に痛い時も多かったが、そうなれば何もできなくなった。痛みは集中力を奪うし、ただ椅子に座っているのも苦痛で、横になりたくなる。
度が過ぎた労働は、却って納税額をつり上げ、身体も故障させた。
母子家庭ゆえ、昼は昼、夜は夜で、それも遅くまで働くシングルマザーの特集をテレビで見る機会は何度もあり、私にだってできる、ああでなくちゃ、と奮闘したのに、惨憺たる結果となってしまった。やはり、丈夫と虚弱、無理がきくかききにくい体質かは個人差が歴然としているのだ。
半人前の健康状態のまま、2015年の夏を迎えた。
今思えば、この年のラッキータイムは夏に集約されていた。楽しい期間は6月末から1ヶ月ほどだけだった。
2015年、つまり平成27年春先より、私は虎視眈眈と夏休みの計画を練っていた。「今年の夏は、桂を日本で、蘭を台湾で過ごさせよう」と。
浮かんだ案はこうだ。
6月末、私が台湾へ飛ぶ。例年通り10日オープンのチケットを取る。
7月、桂は夏休みに入るので、桂と日本に飛ぶ。彼女のチケットは30日オープンのものにして、目一杯日本の家に滞在させる。
そして、桂が台湾に戻る時、蘭が同行する。そうすれば、飛行機に慣れた娘たちは、私がいなくても怖がらないし、蘭は8月末、2学期開始直前まで台北で過ごせる。帰りは、蘭は一人で搭乗し関空まで。
娘たちにこの案を披露したら、異議なし!
あとは仁王立ちで立ちはだかるジャックとの交渉。震えは武者震いに感じられた。
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