第7話

私は自分の性格をとても理性的とは言えない。感性で、感情にまかせて決断し、行動する。

今、振り返れば、20代ならそれでもよかったが、それ以降の我が振りを思い起こせば、実に軽率で浅はかだったと反省せざるを得ない。だから、アラフイフになってしまったが、今からでも冷静に慎重に熟考してから一歩踏み出そうと考えている。恋愛ひとつをとっても、赤い糸は何本もあった。と思っていたが、すべて赤くはなかった。この人こそ運命の人。彼無しの人生など考えられない、と極まり、走った。だが、彼無しの人生の方が結果として良かった場合も何度かあった。


初婚の失敗は、見合いを強く勧めた両親が責任を感じ、私を不憫に思った経緯があり、旧家の一人っ子という窮屈な境遇に、私も両親もエイッ!と目を瞑り、国際再婚に踏み切った。私は またもジャックとの間に運命の赤い糸を見ていた。婚約前に彼の実家へ行った際、その時は存命だった義父が

「ジャックは外では人に優しく接するが、家では気性が荒いよ。」

と忠言してくれたのに、盲目の最中だった私は3分と気に留めなかった。いざ嫁いだら、このザマである。週末に義父母宅に集まる親族の中にも、ジャックの顔色を伺っている、言動を慎んでいる、という者がいたし、始終一緒にいる私に同情してくれる人もいた。ジャックとの離婚を積極的に考えてみなよ、と意見したのも、彼の従妹だった。


相性のまずさ。言葉の暴力。モラハラ。そして、異国で育ったゆえの相容れない価値観の問題も否めない。夫も私も子どもたちを深く愛していたので、形式だけの夫婦となり、家族4人の生活を保持したいと私は願ったが

先に述べたように、ジャックは呑まなかった。


2012年6月、別居して3ヶ月経過した猛暑続きのある日、電話でジャックが、離婚届を出して来い、と言って来た。

私は6月末まで日本語講師の籍を置き、授業が連日入って多忙だったし、バスや地下鉄では行きにくかった提出先のロケーションに疎かったのもあったし、第一なぜ私が、との気持ちが強かったため、彼のバイクで、婚姻届を出しに行った時と同じスタイルで、別離の手続きをしに行った。

婚姻届提出の日は、なぜか大変な混雑で、身重だった私はクラクラするし気分は悪いし、必死に順番を待ったのに、皮肉にも終焉の時は、職員が手持ち無沙汰なほど空いており、いとも簡単に受領され、私たちは名実ともに他人となった。



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