第91話

この時点で、次の仕事は3月17日入国予定の中国人技能実習生の日本語講習までなかった。入るとしても、例の‘スポット’ がぽつり、ぽつり…としか考えられなかった。

日本語講習に代わって、今後『本業』となる生業をアフタースクール指導員に決めたわけだが、この収入だけに甘んずるのは無理だった。何か副業を! とすぐ攻撃態勢に入っていた。本業が始まる4月以降にしろ、今からすぐにしろ、それは必須だった。


そんな折、去年の暮れに右側のみにあった偏頭痛が再び始まった。そして、それはすぐに頭全体に広がり、痛みも強くなった。台湾から持ち帰ったお気に入りの風邪薬を1回服用したが効かず。この薬はほぼ90%風邪を撃退してしまうのに。日本製の鎮痛剤も1回飲んだが、効果ははっきりしなかった。

頭痛がやっと治ってきたら、22日、朝起きられなかった。起きよう、と力んでも身体はセメントで固められたように重くて動かない。身体、特に両腕が痛む。ガマンにガマンを重ね、ついに耐えられなくなりトイレに立ったのが午後1時。

翌日、かかりつけの内科医に頭痛を相談したが、脳に問題はないようだ、思うに、うつ病のいち症状ではないか、との所見であった。

うつ病には様々な症状が起こり得ることは承知していたので、慌てず様子を見ることにした。


偏頭痛は治まり、たまに起こされた子供のように愚図った。

蘭の朝食に合わせて6時に起きるのを常としていたのが崩れた。ちょうど体重を気にする年頃と体型の関係で、蘭は自分で朝食を作る習慣がついた時期だったのはラッキーであった。

早く起きても8時前。何度か正午を過ぎなければ起きられなかった。起き上がるのは実に骨折りで、辛かった。

うつ病のよくある症状に、〝全身が鉛みたいに重い〟となっているが、これは真実である。私は今回、久々に重症に陥り、こう感じ、家族や医師にも伝えた。

「セメントで固められたように身体が動かない。」

3月3日、予約が取れないまま、心療内科の石井先生の診察を受けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る