第90話

定員3名のところに3名が面接に臨んだのが、2月14日であった。

この職務の特徴を表すのか、私が最年少だった。

そう言えば、通称‘スポット’役で不定期に指導員の仕事に行くと、常勤の先生方は7割がた年上と見えた。定年は65歳、スポットはそれ以上でも登録可能、と定められている。定年退職した先生や保育士さんがこの職に就くパターンも多いと聞いたことがあるので、なるほど、頷ける。

3名合同の面接は、20分ほどで済んだ。うち2人はスポット経験者で、真ん中に座った女性は、

「夫が仕事に行くと、誰とも話すことなくテレビを見て、テレビと話してるような生活で、こんなままではいかん、と奮い立ち、応募しました。」

と、とても正直に、そして恥ずかしそうに答えていた。パートなどしたことがないのかもしれない。昔は、子供相手の仕事ではなかった、とも言っていた。

頼りなさげな話し方をする人だったが、彼女も採用されたのだろう。

「発表まで一週間くらいお待ち頂きます。」とのことだったが、4日目に簡易書留で採用通知が届いた。最初は小学3年生までで、共働き、面倒を見る祖父母がいないこと、がアフタースクールを利用できる条件だったが

来年度からは6年生までOKで、祖父母の件も問われなくなるため、大幅に子供を預ける家庭が増える=多くの指導員が必要になる、はずだ。


‘台湾移住’からすれば開きがあり過ぎるものの、この地で、私の体力、及び健康状態で、かつ幾らかでも興味のある仕事、の理想に目下一番近いのがこの指導員職と言えよう。

平日(学校がある日) 13:00〜18:00 (残業あり)

春・夏・冬休み 8:00〜13:00, 13:00〜18:00 (交代制)

1年目から有給10日間

賞与なし (涙)


これで今はいい。次はまた追い追い考えよう、と思った。

この日、つまり2月18日は父の83歳の誕生日だった。病床にあっても、常に私の健康や仕事のことなどを気遣ってくれる父であった。何はともあれ、一応目ぼしい就職先が見つかったということで、ホッとし、ねぎらってくれた。

父の病状は進み、なおかつ不治の病であったが、幸い、食欲だけは衰えなかったため、好物のお寿司とケーキで祝った。昨年と同様、心の中で〝来年も誕生日を祝えるといいなあ〟と思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る