第84話

「入られたばかりで、いきなり年末の忙しい時期に放り込まれた感じでよけいに大変だとはよくわかります。ミスも、慣れてない人だとどうしても多くなります。レジが合わないのもそうですし。でも、どれもすぐにミスがなくなり、仕事の流れが全部把握出来るっていうのは無理ですから…… それは店長もよくわかってられるはずです。

それにご存知だと思いますが、今うちは人手不足で、一人でも欠けると店が回らなくなるくらいなんです。なんで、責任を感じてであっても、ミスするとしても、乾さんに今辞められる方が店長は困ると思います。」


終わりに宮下さんらしく控えめに私を激励して、彼は仕事に戻った。私は心から礼を述べて、感謝を表した。

宮下さんの忠告はそのまま素直に理解できた。よし、なら、頑張ってみようと思った。悪い方向に考え過ぎていたかもしれない。毎月20日に各自店長からもらい、25日までに提出する希望出勤(欠勤)日表。私は1月のそれを埋めて、勤務続行の意を固めた。

元旦はショッピングモールが閉まり、書店も1日だけ合わせて休みになるが、私は志願して、出勤可能者が少ない2日と3日店に出た。

先にも書いたように、4,5,6日はアフタースクール指導員を務めた。年末に、1月7日開始だった日本語講習が、中国人技能実習生の入国が遅れ、その翌週に延びた、と商工会藤川さんから電話がかかってきた。このため、平日4日〜8日の5日間、書店勤務から遠のくことになった。

これがいけなかった。

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