第70話

交通費は月7000円を限度に支給。なら、法定最低賃金でも、実質800円は超えるし、本屋さんならいいや。15〜20日出勤可能な方…… 可能どころか、少なすぎるでしょう。でも、子育てに多忙なお母さんや、掛け持ちでやる人にはピッタリですよ〜、ということかな、と解釈して、電話番号をひかえた。

即、ケータイから電話して、店長らしき初老の男性と話した。大概が面接についての内容で、週末は避けたいとの先方の希望で、11月2日(月)に履歴書を持参して、とまとまった。電話から3日後の午後だった。


書籍や出版社、文学に関する筆記試験はかなりのボリュームで、多少面喰らったが、店長の高瀬氏は採点すると、

「かなり良い成績ですね。」

と、強面の奥に満足気な面持ちがちらりと見えた。

そして、シフト制でやっているが、早番と遅番、どちらかでないと無理だとか、土日祝日はどれくらい出勤できそうか、などという話題に及び、私は十中八九採用された気分になって話を進めていたが、

「合否発表まで、そうだなぁ〜、1週間くらいは時間をください。こちらとしても、より適切な人材を必要としていますので。」

と、高瀬店長に暴走を止められた。長身で、骨張った髭面は、子供なら近寄るのを怖がりそうであったが、発言も歯に衣着せないタイプの人だと、すぐ学んだ。得意なそれではないが、店の長たる者、これくらいの方が頼もしいじゃないかと考えることにした。


一旦働こうと思った者に1週間は長かったが、歯医者通いや、11月8日に二胡の演奏をある町の文化祭オープニングに依頼されていた関係で、まあまあ許容範囲内のスピードで過ぎて行った。

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