第69話
失意のうちにも ‘誰にも頼れない。私が働くしかない。’と念じるように思い続けている母子家庭の母は、迷った挙句、1月の日本語講師業まで2ヶ月間職無しになるのが耐えられず、突如動き出した。
時にうつ症状が急に悪化したり、慢性になった腰痛と右腕痛は緩和しているどころか、日々痛みがあったが、無収入状態が受け入れられなかった。
それに、ひとつ、働き口のアテがあった。書斎代わりによく利用するカフェが入るショッピングモール内に、この市最大の書店があり、数ヶ月に1回ほど(この記憶はまったく定かではないが) 求人ポスターが貼ってあるのを見る。最近も確か、店内の書棚に貼ってあった気がした。
私は読書量がとりわけ多い方ではないものの、昔から図書館や本屋、父の書斎など、書籍が多い場所を極めて好んだ。本に囲まれているだけで和み
豊かな心情になれる。
こんな心身の様態にあっても、本となら働けるだろう、書店では力仕事は付きものだけど、勢いでやるしかない。事務職の経験はなく、座っていても腰は痛いんだから。慢性痛が治るまで待っていられる余裕もない。よし、あの本屋だ。見に行こう、求人ポスターが出てるかどうか。
……と、劇的に決意してポスターチェックに行ったら、果たして白地に黒い字のシンプルな求人広告が人目を引く位置に貼られていた。長期バイト、パート募集、時給…… 法定最低賃金‼︎ 月15~20日出勤できる方。
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