第20話 聖戦の宴

『トールちゃんと会うの久しぶりだね』


『そうだな・・・ロキちゃんはレッドに会えるのが楽しみだ~♪』


可愛らしい少女が二名

駐屯地の施設の入口で手続きをしている


『二十二部隊へのコンタクト了承しました、こちらをお持ち下さい』


部外者の立ち入りは基本的に出来ない

関係者であっても、入場の審査は厳しい

しかし、VIPとなれば、話が変わってくる


この二人に関して言えば、仮メンバーのような感じだろうから

少し違うでしょう


ほぼ、顔パスに近い形で入場を許可された


事前にトールちゃんから通達があって

データが照合できたから


『ありがとうございます』


『うん、ご苦労様です~』


ニコニコしながら、建物へ歩いて行った


ツインテールの優しそうな表情のオーディンちゃん

小柄で少し疲れ気味なロキちゃん


トールちゃんの旧友で

レッド君とも関係がある


『あ・・・二人共~』


建物から走ってくるトールちゃん

二人を見かけて、近づいてくる


『トールちゃん、お久しぶりです』


『よ!! 元気してたか??』


再会に喜ぶ三人

見た目だけで、フワッとしたお菓子スイーツのような印象だろうか

戦いとは無縁な感じだ


まあ、トールちゃんの友達だと考えれば

同等かそれ以上だと思って頂ければ

それに三賢者の異名もあるくらい

クレバーな策士でもある


純粋に強いだけではなくて

しっかりと組み立てた作戦を駆使して

無駄なく力を発揮する


別の世界での事ではありますが

理想の未来のために奮起した

若き叡智


『トールが駆け落ちなんてするから、大変だったんだぞ!!』


『ロキちゃん、ダメだよ・・・』


気持ちが緩み、つい本音が的な

と思いきや・・・


『トールには、お見通しです・・・本当はそんな事思ってないでしょ??』


『あれ!? わかっちゃった、もう~面白くないよトールは』


実際は、物凄く大変な状況ではある

しかし、それはあくまでも三人が居る状態での話

一人でも欠けると

世界を動かす歯車が止まり

中断したままとなっている、らしい


『最初は、知らなかったから・・・トールちゃんの事を本気で嫌いになるところだったの、でも・・・ならずに済んだよ』


『ごめんなさい・・・勢いだけで行動してしまって、だからじゃないけど』


と、遅れてやって来たレッド君を誘うように呼び込む


『レッド君~早く~!!』


その場で姿を消すと

目の前に現れた


『お久しぶりです、ロキさんにオーディンさん』


『レッドさん、お久しぶりです・・・あっ』


握手されて思わす、声が出て

頬を少し赤く染めた


『レッド~ロキちゃんには挨拶のキスをして欲しいな~??』


『いいですよ、ロキさん』


そう言うと、頬・・・ではなくて、ちゃんとして口づけをする


『お久しぶりです・・・元気でしたか??』


『お、おうっ・・・レッド、惚れちゃうだろ~』


同じように頬を赤く染めるロキちゃん

だが、発言に対して


『なんでやねん!! もう、惚れてるやないか~い!?』


トールちゃんの謎のツッコミ

漫才のネタみたいな感じだった


『相変わらず、面白いねトールちゃん』


『そうだな、的確なボケに対するツッコミ・・・師匠も鼻が高いぞ』


何か、世界観が狂ってきそう

こんな二人がやって来たのには、理由がある

別にトールちゃんに会いに来ただけではない

半分くらいは遊び感覚ではあるかもしれませんけど


『レッドの全愛の楽園ハーレムエンドに興味があって、是非参加したい』


『オーディンもロキちゃんもトールちゃんのお手伝いをします、レッドさんに気に入ってもらえるように、頑張りますから』


レッド君に対しての反応からもわかるかもしれませんが

トールちゃんが駆け落ち前に面識があり

色々な事を経験した経緯も

そんな、淡い思い出と共に


『はい、トールさんから話は聞いていますから・・・は候補外でも構わないというのでしたら、強引に僕が事象へ組み入れます』


『二人共、死活問題にも関わる選択ですよ・・・』


悩む素振りは一切無かった

既に、気持ちは確定しているみたいです


『トールが候補なんだろ・・・だったら、構わないよ』


『妻でなくても、レッドさんと一緒に暮らせるなら・・・構わないです』


ロキちゃんは、要約した簡潔な回答だった

単純に、楽しめればいいみたいで

そこに三人が一緒であれば


オーディンちゃんも主題のみで

妻でなくても、は別で構わない

一緒であるなら、それでいいと


『わかりました、デートはこれから特別枠として行いますけど??』


急遽決まった、三賢者とレッド君のデート

一応、トールちゃんは助っ人扱いです


『わ、私・・・緊張してきました、レッドさん』


『見た目違いますが、緊張するんですね・・・もしかしたら、平気じゃないかと思ったのですが』


極度の恥ずかしがり屋のオーディンちゃん

公の席でも、発言はほぼトールちゃんがしていました

謁見もロキちゃんが対応していたから


『確か、半ば強引にでしたか・・・あの時は、怖かったですよね』


『状況が把握しないままでした、数日は色々な意味で泣いていましたが・・・いつしか、ドキドキに変わってて・・・おかしな話ですよね』


妙な敬語同士での会話

他人行儀にも思えますが

お互いの距離は

心も実際も密接している


『だから、トールちゃんがレッドさんと駆け落ちした時は・・・正直、辛かったの・・・どちらも大切な人で、でも裏切られた気持ちがあって』


『トールさんの目的を聞いて、気持ちが変わりましたか??』


頷くオーディンちゃん

私利私欲でレッド君を独占しようと

思えばできただろう


三賢者が同時期に同じ相手に恋して

喧嘩に発展する前に


『トールちゃんが、全愛の楽園ハーレムエンドでみんな幸せになれるって』


電脳異空間アナザースペースの覇者システム・・・トールさんは、僕と挑戦すると飛び込んだのです』


この世界へ来るきっかけのひとつ


『あのぉ・・・♡ 重くないですか、私??』


『いえ、軽いですよ・・・女性的で素敵ですし、相性も悪くありません』


会話中、終始・・・レッド君の上

微かな震えも気にせず、楽しい時間が流れていた


『ありがとうございました、レッドさん・・・』


『いえいえ、僕も楽しかったですよ』


まだ夢見心地な気持ちで

オーディンちゃんはトールちゃんに介抱されている


『地味に見えたが、結構凄かったのか・・・お手柔らかに頼む』


遠目で様子を伺っていたロキちゃん

笑顔で横になっているオーディンちゃんを見て

少しだけ、怯んでいる


『失神させてもいいのですが、会話を重視したいと思っています』


『うん、是非そうして欲しい・・・』


次はロキちゃんと・・・

予定より少しだけ早い、交代となった


『ロキさんは、僕と何したいですか??』


オーディンちゃんと同じように

ロキちゃんを自分の膝に座らせている


『今日は特に考えてない・・・明日以降に色々とお願いするだろうから』


『そうですか、では軽く失神してもらいましょうか・・・ふふふ』


そう言うと、そのまま空中へ浮遊する

しっかりと抱きとめたまま


『お、おい・・・何をするんだ~!!』


一瞬、暴れる素振りを見せるが

それにより体勢を崩し気味にしたために

急に大人しくなる


『レッド・・・頼むから離さないでくれ』


『平気ですよ、技能スキルで定着していますから』


そう言うと手を離すレッド君

密着したままで


『お前~本気でロキちゃんを失神させるつもりか~!!』


涙目で徐々に青ざめてくるロキちゃん

しかし、レッド君も本気ではなかったため

すぐに元の場所に戻ってくる


『すいません、つい・・・ごめんなさいロキさん』


常に密着している

それにさっきまで空中で必死に離れないようにしていたからか


『レッド・・・ずっと離さないで、このままずっと』


何かを思い出すように震えるロキちゃん

一度、別れを迎える前の状況


『同じようにしていましたね、僕の事離さないで朝まで・・・』


『うん、仕方ないだろ・・・永遠の別れだと思ったんだから!!』


振り向き泣きながらレッド君を両手で軽く叩く

そのままギュッと抱きしめる

再会の二人


遠目で見るトールちゃんは

微笑んでいた・・・






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