第18話 青天の霹靂編 その5

『準備はしておきます、のまま来るのでしたら』


『ごめんねレッド君、わがままみたいになってしまって・・・でも嬉しい』


抱き抱き

濡れた身体を温めるかのように

愛を確かめるかのように

過去の記憶を辿るかのように


レッド君とトールちゃんの空中での延長戦が行われている


既に脅威を排除して

一時的な平常を戻して

帰還指示を無視して

抱き抱き


『私はトールを拉致するから、ラビリアはレッドを独占するようにしてくれ!!』


『そこまでしなくても、普通に次は私だと思うのですが・・・ラインさん??』


微かに見え隠れする

現地の様子

トールちゃんの技能スキルが、邪魔をしている


しかし、ラインさんとラビリアさんが同時に解析して

何となく、見えるかどうかな程度で

二人の行動を覗こうとしている


『堂々と帰還後に資料として提供してもらえるなら、無意味だと思うのですが?? お二人の行為は~!!』


完全な適応が済んで

正式に部隊の一員となったネメシスさん


コソコソとしているのが、気に入らなかったようで

明らかな苛立ちを示している


『ネメシスさんの言い分が正しいですよ、ラビリアさんに資料を提出義務なんですよね・・・後であたしにも見せてくれますよね??』


一緒に来た順子さん

興味しかないみたいですが

無駄な行為を否定するのは、ネメシスさんと同じだった


『お前らは、トールを理解していない!! 通常分はあっても、今の延長に関してはシークレットにするつもりだぞ・・・この意味わかるか??』


そわそわしているラインさん

律儀な六花りっかさんでしたら

もし、延長しても

その分も提出するだろう

しかし、トールちゃんは

言われただけしか出さないだろうと

義務を超える部分は無かったと同じ


『それは、困りますね~あたしも協力しましょう・・・ほら、ネメシスさんも』


『嫌です・・・プライバシーじゃないですか、興味があってもダメです』


真面目なネメシスさん

ジレンマを抱えて、理性を保つが

順子さんの誘惑はかなり脅威だった


『あたしを一時間独占でどうかしら?? 歩合制で上乗せするわよ・・・』


『卑怯です順子さん・・・ネメシスの弱点じゃないですかそれって』


『勝手に弱点にしないで下さい・・・二時間でお願いします』


完全に順子さんの包囲網に囲まれてしまったネメシスさんだった

三名による、神業オーバースペックの無駄遣い


『レッド君・・・トールでもこれは防げないよ~何、三人って』


『ネメシスさんを落としましたか・・・どうします、もう堂々と見せびらかすようにしましょうか・・・見てしまった事を後悔させましょう』


頷くトールちゃん

どうしようもない衝動に対する解消のための延長戦

合理的に理解できても

本能では覗きたい衝動が勝る


『レッド君の動きが変わりましたね・・・こちらへの挑発じゃないかしらね』


アングルをより見せる感じに動いている

技能スキルというよりも基本性能パッシブによる

相手の探査を察知している

目視で見られている感覚を意識して


『流石に三人では、強すぎたか・・・よく見える状態にはなったのにな』


『うう、わたしは脅迫されただけです・・・レッドさん、ごめんなさい~!!』


困り顔のラインさん

堂々と覗いていれば、見つかりますよね

うろたえるネメシスさんは、泣きそうです


『ライン隊長、あたしとネメシスさんは戻ります・・・メンタルに支障が出ると困るからね』


『レッドさん~わたしを見捨てないで下さい・・・』


再び、順子さんとネメシスさんが退室する

無駄な行動が多い二人

この世界では部外者だから

目的までの時間まで、する事を持て余している


『ネメシスさんを先にした方がいいかもしれませんよ、私以上に不安定です・・・相当、動揺していましたから』


『う~ん・・・あそこまでとは思わなかった、順子に相談してみるか』


レッド君とトールちゃんの覗きを諦めた二人

その足で、順子さんとネメシスさんのところへ移動する


『ネメシスさんが耐え切れなかったようですね・・・あの手の感じレッド君は好みなの?? どうなの!!』


『ネメシスさんは、正直苦手かもしれません・・・六花りっかさんでギリギリですよ、僕の許容ではね』


上下左右に空中戦を堪能している

向こうはこちらを三人掛りでやっとでしたが

逆にこちらは、レッド君とトールちゃんが独自に相手の様子を手に取るように把握していた


『こちらのシステムの方が優秀ですから・・・ね、僕の赤とトールさんの青と』


『うんうん、デーモンシステムは素敵です』


レッド君とトールちゃんは

三重の出会いを繰り返している


姫と医師との駆け落ちの前

ラビリアさん以上の宝石システムの研究を行う科学者がいた


その科学者の研究素材として

レッド君とトールちゃんが含まれていた


その研究は

究極のを覚醒させて

神を倒す悪魔を作る


六色の悪魔シックスカラー


魔を封じた宝石の制御は

容易ではなかったが

天才科学者により、それは具現化される


『六名揃って再会したいよね・・・一応、謝罪したいし』


『あれは、仕方ありませんよ・・・不可抗力だと思います』


何があったのか

重要な意味を持つので

必要となったら、開示されると思います


今回は、不要なので出来事があった事だけを把握しておいて下さい


『共鳴は次元を超えてはできませんから、他の色の該当者はどこかで遭遇しているのですが・・・縛りがあって捜索は難しいかもしれない』


『あ~ん、穴が開いた気持ちを物理的に埋めて欲しいです・・・レッド君にしかお願いできません~!!』


過去の出来事に対しての気持ちに

今は、仮の蓋をするのみ

それでも・・・一過性ではあるが

少しは違いがあると、信じて


邪魔をする相手は、当面は現れないでしょう

レッド君とトールちゃんの空中戦は

青に染まる空と海の世界を舞台に

密やかに行われている


既に意味を持たないから

隠す事は特にしていない


『ここまで開放的なのは、久しぶりです・・・トールさんとの相性は本当に最高ですね~このままずっと干渉した状態でもいいくらいです』


『・・・そんな事言って、ラビリアさんにもラインさんんも同じ事言うのよね~』


満足そうにしているレッド君

そんな様子を壊すようにトールちゃんは、力む


『うっ!! 切るつもりですか?? 痛いじゃないですか~!!』


『ささやかな抵抗です、もう時間みたいなので最後にもう一回貰っておきました』


延長戦も終わり

駐屯地へ戻る二人

自動航行オートパイロットを使う


『レッド君、疲れたの・・・二十回くらいでトールを満足させようなんて、十分だったよ~ごめんなさい、無理させてしまって』


『何とも返しにくいですが、楽しんでくれたなら・・・僕も意味があったと』


明らかな疲れは、レッド君に見られるが

回復の早いのも若い証拠でしょう

数時間もすれば、もしくは仮眠でもすれば

急速な休息をする事ができる


相手は、僕でも苦労するのですよ・・・今日はもう寝ます』


トールちゃんのために全力で尽くしたレッド君だった

そんなトールちゃんに抱かれ眠る


『うふふ、可愛い寝顔ですよ~キスしちゃおう♪』


私欲ではあるが

ついでにレッド君に癒しの技法スキルを施した


『迎えに行った方がいいのではないだろうか、レッドでもトール相手だぞ』


再び司令室に戻ってきた

今度は残り全員揃っている


『流石にトールさんもこれ以上は、問題ないかと思います』


今にも飛び出していきそうになっているラインさんを

待つように諭すラビリアさん


電脳異空間アナザースペースは不便ね・・・ならレッド君をしっかりと管理できるのですけど、交換しましょうか??』


『順子~!! ここで亡き者にしてもいいのだぞ・・・今なら事故で済まされる』


レッド君に関しての話

トールちゃんが必要以上な独占をしている事に対して

焦り苛立つラインさん

そんな燃盛る所へ油を投入してくる順子さん


『ううっ!? 死ぬって・・・あぁぁ・・・』


背後に回り、首を絞めている

苦しそうに抵抗をする


『こちらにも少しだけ責任はありますが・・・お母さん、僕を悲しませるつもりですか??』


自動航行オートパイロットで帰還中だった

しかも、トールちゃんの中で寝ているはずのレッド君


『・・・レッド?? お前どうして、ここにいるんだ!!』


『トールさんの技能スキルで簡単に騙されるなんて・・・あれは幻です』


驚き腕を離す

地面に落ちた順子さんを介抱しているのは、トールちゃんだった


『順子さんは、このまま連れて行くね・・・』


白目の順子さん

青白い光に包まれている

トールちゃんの治療の術がその光である


『お母さんは一番最後です、これは最初に話しましたよね!!』


『急に何を言い出すんだ?? 私は順子が世界を交換しようと・・・あ~もういい、私が悪かった・・・衝動的に絞殺しようとしただけだ、必ず謝罪もする』


そう言うと、黙って出て行ってしまった・・・

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