第5話 赤い少年編 その5

司令室のメンバーが招集している

この二十二部隊は六名しかいない


当初予定されていた新体制のため

ここに配備されている三部隊が首都防衛で招集でしたが

ラインさんが単独での行動を希望したために

この地に留まることとなった


二十と二十一部隊は

予定通りに首都へ向かっていった


駐屯地のサポートメンバーは部隊所属ではない

予備軍的な感じで支援などを行っている

強力な存在であっても

この手のバックアップは重要な意味を持っている


司令室も常にメンバーが残っているわけではない

本来は数十名の部隊で

前線の無線班と司令室の待機班と連携で

戦況を把握していくのだが


細かい部分を確実に伝達して

の撃破を行う


周囲への被害を無視するなら

特にこの二十二部隊だったら

単独行動でも十分に撃破可能だろう


しかし、人的被害の出にくい郊外以降を戦地とするなら

問題は少ないが

基本的に強襲されることの多い市街地は

避難の段階や建物の損害を軽微させるための

緻密な計算が必要となってくる


連携には伝達は不可欠だ


『報告を受けた限り、二名の出撃が妥当と判断した・・・で、レッドと六花りっかが出てくれるか??』


ここから少し離れた保養地となっている地区に

が奇襲を仕掛けようと侵攻中らしい

避難が若干遅れているとの報告があり

単体で被害の出にくい攻撃を可能とする

レッド君と六花りっかさんが最も有効だとラインさんは判断した


単純なセオリーだったが

既に意図的な作戦は遂行されている


共謀したラインさんとラビリアさんは

特に六花りっかさんに注目している

今回はうまい具合にレッド君と六花りっかさんとで出撃する流れとなった


フラットだとしても

ランデブーでの出撃となれば

レッド君も意識するだろうし

六花りっかさんの反応も把握できる


思惑をどこまで悟られているかは

レッド君に関しては、全てだとラビリアさんはラインさんに伝え

それもラインさんも同感だと思っている


それに対し六花りっかさんが

どの程度の察知をしているか

もしくは、今回の流れで把握するか

を、試す意味もある


『僕と六花りっかさんとですね・・・了解です、お母さん』


普通な対応

やはり、ラインさんとラビリアさんの思惑を把握しているように思える


『・・・了承致しました』


こちらも普通に対応している

基本的に六花りっかさんは、どのような状況下でも冷静で

常に最良な行動をする

だから、隠し要素などがあったとしても

把握できない場合がある


ラインさんとラビリアさんにとっては

若干だが不利な状況とも思える


しかし、レッド君は

そんな二人に対して

瞬間的に察したようで


六花りっかさんと出撃できるなんて、嬉しいですね~♪』


わざとらしく、嬉しさをアピールしている

これは、ラインさんとラビリアさんが知りたがっている

レッド君への気持ちを確認する探りを入れた形のようです


『・・・そうですか、自分もレッド殿の勇姿を近くで拝見できるので楽しみです』


軽いジャブのようなもの

同じく軽く返している

自然体でこれをしてくるのは

単純に武人として、レッド君の戦いに興味を示す部分で

特に恋愛絡みではないようだ


世界の未曾有的な危機の最中

こんな連中がと思ってしまうでしょうが

この余裕がある意味で強さの秘訣と言っておきましょう


と呼ばれる

宝石を用いて戦う存在にとって

最も重要な条件は

色々な意味での心の余裕だったりする


特に体内に保有している場合は

より、この条件が左右してくるから


宝石と心の繋がりが強さに直結していると思って頂ければ


更に、最上位のへの覚醒を促す要因

心の官能的な高ぶり

愛のある行為


今回、レッド君がわざわざフラットだと言ったのは

メンバー全員との行為へと発展させようとしているから


この五名にへの覚醒をさせたいと思っているようです


本来は自然な流れで行われるのですが

既に強引な事象の繰り返しを無数にしているから

ある意味で自然な流れではない


イレギュラー的な事象を起こすことにより

新たなファクターを発生させることがある


どうやらレッド君は

それを狙っている?? のかもしれません


『現状で把握できるのは“”の私と“”であるお前だけだ!!』


横目でレッド君と六花りっかさんの準備を見ているラインさん

隣にいるラビリアさんへ語っているようだが


別の準備を行っているラビリアさんには伝わっていなかったようで

独り言のようになってしまった


ちなみに“ジオ”とは

幻想世界の中の次元を管理できる神の存在

クラスと言っていたのは

神に他の存在があるから


世界の中枢とラビリアさんに対しての発言ですが

惑星のデータ化を行ったのがラビリアさんで

その惑星を管理するネットワークシステムを構築している中枢としての意味合いで

ユニバースシステムのメインがラビリアさん自身を端末としている


『お母さん、僕と六花りっかさんの準備完了しましたよ』


『隊長殿、いつでも出撃可能です!!』


そんなラインさんの元へ歩み寄る二人

肩透かし感に若干反応が遅れ、少し焦っていたが


『・・・お、おう・・・すまんな、レッドと六花りっか、今ラビリアに詳細を転送してもらっている』


あくまでも自分の指示のようにしている

しかし、ラビリアさんは別の作業を行っているが


『二人共、調整終わったから・・・はい、新デバイスね』


結果的にラビリアさんがラインさんのとなった

レッド君と六花りっかさんへ小型の端末を手渡す

との戦いで最も重要なアイテムである


“ソウルデバイス”


導師用に改良されたネットワークツール

本来は手首に腕時計のように装着する形でしたが

より伝達能力を高めるため

ラビリアさんが“”タイプを開発した


左耳に端末を装着して

そこからを出力することにより使用する

(眼鏡型のウェアラブルだと思って頂ければわかりやすいかもしれません)


は、ランデブー用にリンク要素を強化しました』


戦闘で得た情報を常に生かしている

細かな調整は、ほぼ毎回行われる

わざわざと言ったのは

大幅な改良がなされたからで

基本的に個人用に調整がされていて

それを共同での戦闘を視野に入れ

二名での出撃で威力を発揮できるようにしている


『ランデブー用ですか・・・僕の意見を参考にしてくれたんですね、嬉しです』


『何を言うの!! 別にレッドさんの意見ではありませんから~!!』


すっと握手をしてくるレッド君

それを拒絶するように手を引っ込めるラビリアさん

若干だがツンデレ気質だったりするようですね


それに、本当にレッド君だけの意見ではないから

素直にでいい気もします

科学者で手先は器用でも、恋愛に対しては奥手で不器用なラビリアさんらしい


『ラビリア・・・お前はもう少し素直になった方がいいぞ、実際には私もレッドからの打診があったからな・・・ある意味レッドの意見そのものだと言ってもいい』


なんて、言われてしまったから

余計に困ってしまうラビリアさん

あまり責めても意味がないと判断して


『すまない、今のは忘れてくれ・・・私の意見だ!!』


無駄かもしれないが、一応発言を撤回する

義理ではあるが、親子で同じ発言をラビリアさんにしていて

それをラビリアさんもラインさんはレッド君から聞いたのだろうと

薄々はわかっていたが改まって聞かされると

顔を赤くしてなラビリアさん


『ラビリアさん、お母さんも悪気があっての発言ではないですから・・・』


『すまんラビリア、六花りっか同様に後でしよう・・・』


かばうレッド君

再び頭を下げるラインさん

それにしてもってなんでしょうね


『ラビリア殿の作られた品でしたら、信用できますし・・・過程は問いません』


話を別角度で切り込んでくる

戦いにおける大事な事を熟知している武人の発言

しかし、は意味深です


でもあるから・・・疑われても無理はないわよね』


俯き気味に項垂れるラビリアさん

罪滅ぼしではないが

自らが生み出した脅威に対しての強い意思がある


データ化に際し、不安材料だった

の使用

これを制御するために

独立したネットワークを新たに構築して

防衛用にと開発されたのが

である


安定装置や情報管理を担う中枢端末セントラルタワー

南北の極に塔として建設される

防衛システムとして

を配備することとなる


『この中にそれを疑う存在はもういないと思うぞ・・・もう十分に疑ってきたからな、飽きるくらいにな』


笑いながらラインさんがラビリアさんの頬を抓る

それに対し、ラビリアさんも仕返しのように

ラインさんの頬を抓る


『いあいああいえうあ~!!(痛いじゃないですか~!!)』


『おあえお・・・あいおうう~(お前も・・・何をする~)』


ラインさんとラビリアさんで両頬を抓り合いながら

言い合いをしている


少しして、お互いに抓られた頬をいたわりながら

ニコニコしている


『さて、六花りっかさん茶番も終わったようですし行きましょうか??』


『そのようですね、レッド殿・・・参りましょう!!』


何事も無かったかのように

颯爽と司令室を出る二人だった・・・

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