第2話
その人から突然、謝罪と感謝を告げるメールが届いた。けれど、素直に受け容れることができない。別れるとき、その人の本音と本性が見えたと思った。時間が経って謝罪と感謝を伝えたいと思うようになったと書かれていたが、なぜそのような気持ちを持つようになったのか理由はわからなかった。仕事のピークが過ぎたから、そんなことを考える時間ができたのだろう。
仕事していただけなのに何がいけないんだ、どこかにその人の本音が透けて見えるような気がした。
別れ際、自分が優位に立ちたいという相手の気持ちが許せなかった。どこか冷静に相手の言動や自分の言動を見ていたような気がする。ただ、自分勝手と言われたことは許せないことだけれど、心が折れてしまって、怒ることもできなかった。私は別れ際、丁寧に言葉を選んでメールをしていたと思う。
ただ、あまりにもひどいメールを続けて寄越したあげく最後に、「読んでください」というメールが届いたときには、思い切り罵倒するようなメールを送った。
何かの情報番組で相手から良く思われたいというような別れは下手な別れ方なのだ、相手の気持ちを断ち切ることが必要なのだと見たことにも影響されたのかもしれない。
それから半年ぐらいして、謝罪と感謝のメールが届いたのだ。不愉快にさせたこと時間を無駄にしたことを詫びていた。約束を破ったことや自分の具体的な行動ではなく、こちらの感情に対して謝りの言葉を言ってきたことが受け容れられない原因だと思う。どことなく、世間をお騒がせしたことを謝っている企業の謝罪会見を思い出した。
許す気持ちにはなれなかった。許すということが、相手に対してだけではなく、自分にとっての救いになることは、どこかで読んだことがある。女性が、謝罪や感謝の言葉を述べるとき具体的な事柄を上げるのに対して、男性は謝るときは全面降伏なのだ、ということも何処かで聞いたことがある。それでも、謝罪の言葉を受け容れる気にはなれなかった。間違った人にメールを送っていますよ、そんな返事しかできなかった。
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