第3話

 男と別れて自由になった時間を有意義に使おうと思った。音楽を聴く、新しいCDを買いに行ったりライブに行った。花を生けた。旅をした。映画を見た。カルチャーセンターにも行った。もしかしたら、カルチャーセンターは男と別れる前にも通っていたかもしれない。休日の昼間、食事の時間にはかからない時間だったからだ。でも、その時期に通っていたのか記憶が曖昧なのは、男とそんな話をしたことがないからだ。いけた花の写真をメールで送った記憶はある。でも、カルチャーセンターで聞いた話を男に話した記憶はないのだ。だから、男と過ごした時期と重なっていたのか曖昧なのだ。

 冬になった。今日は一歩も家から出ずに過ごそうと思う日が多くなった。本当はもっと前からそうしたかったのだ。家に引きこもっていたかったのだ。

 曖昧な約束が嫌だったのは、会いたかったからではないのかもしれない。冬の冷え込んだ夜に家から出るということがそもそも嫌だったのかもしれない。

 昼間のお出かけにこだわったのは、そんな理由だったのかもしれない。一度も実現はしなかった。お茶でもしたい、という男の希望と、お出かけしたい、という私の希望は多分すれ違っていたのだ。

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