第2部 騒がしすぎて目が回る!?

第10工程 「これがパンダの魔力か、フッ、恐ろしいな」

「今回の作戦はまぁまぁの出来だったな」

『はい、彼らの戦闘データもかなり収集することが出来ました』

「特に、彼の能力は素晴らしい」

『はい。彼らの中だけに留まらせておくのが勿体無いくらいです』

「彼の今後次第で、例の作戦を早めるのも得策だな」

『その時は手配いたします』

「あとは、例の研究者の行方だが……」

『未だ行方が掴めておりませんが、そのうち、良い知らせがお届けできるようにいたします』

「期待しているぞ。この二人が居れば、我らの勝利も近い」

『はい』



***


 三琴君の見事な初陣から三日が経ちました。


 三琴君が司令室へと避難した後の話をお話しなければなりませんね。

 あの後、怒涛の埴輪のレーザー攻撃やロケットパンチなどが炸裂し、それはそれは熱い戦いだったみたいです。間近で観戦してみたかったものです。


 しかし、クラップス星人もなかなか手強く、戦いは互角でしたが、突然ホイッスルの音が鳴ったかと思うと、彼らは一斉に退散してしまったそうです。

 まるで、サッカーの試合終了の合図みたいですねぇ。

 そんなこんなでクラップス星人は光のように現れ、光のように去っていったのでありました。


 敵が去った後、国防機関が学校の被害調査と修繕へと駆けつけ、戦闘の跡形は丸一日ですっきりとキレイになりました。


 機関の関係者筋によると、先の戦闘で被害を受けたのは、茶山陣学園の高等部のみらしく、他はまったくと言ってもいいほど襲撃を受けなかったそうです。

 しかも、被害の状況が一番重いのは、モデリング部の部室近くとのこと。


 これは、もしかすると、モデリング部を狙ってのことでしょうか?


「おい。また、長い語りに入ってんぞ」


 お。これはこれは、三琴君じゃないですか。おはようございます。

 語り中という入りづらい雰囲気にも関わらず、割り込んでくるというその根性、さすがです。


「嫌なら、スルーしていく」


 あぁ! ごめんなさい。僕は構ってくれないと死んでしまう、弱い人間なんですよ。


「お前は、ウサギか」


 フフフ。脆いガラスのハートの持ち主なんですよ。こう見えても。


 それにしても、三琴君。初陣の活躍は、見事でしたね。

 あの後、帰宅してから、疲れからか直ぐに熟睡していたようですし。

 寝顔、可愛かったですよ。


「なっ。お前、見ていたのか!?」


 はい。パンダのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて、スヤスヤと眠っている三琴君。

 コレが、ギャップ萌えと言うものなんですかねぇ。僕でも少しドキッとしてしまいましたよ。


「えっ」


 あ。そんなに引かないで下さいよ。そういう気は無いですから。


「どういう気だよ。話は変わるが、今回の狙いがモデリング部ということは本当か?」


 あくまで僕の憶測ですけどね。そんな気がしてならないんです。

 まぁ、ただの語り部である僕の予感なんで、外れているとは思いますけどね。


「ふーん……。げ」


 三琴君は聞いているような、聞いていないような生返事をした後、校門を見てギョッとします。


 なんとそこには、亀山先生が仁王立ちをしているではありませんか。

 なんだか、デジャヴですね。


「よう。山吹に夏水。朝から元気そうじゃないか。元気ついでに、ちょっと、部室まで来てもらおうか?」


 亀山先生、おはようございます。先生も朝から三琴君を拉致しようだなんて元気ですね。


「先生、緊急事態でもないのなら、別に朝じゃなくて、放課後でもいい……」

「おやぁ? 例の作業スペース、通称パンダルームが完成したというのに、放課後でもいいのか?」

「……!! 行きます。今すぐ行きます」


 おっと、パンダの話題をふられると、目の輝き方が違いますね。

 三琴君の目はまるで、夢見る少年のように爛々と輝いています。

 ……、ってアレ? 僕が解説をしている間に、三琴君の姿が消えたっ!?


 まさか、見ていない間に、宇宙人によって三琴君が連れ去キャトられた!


「いや。山吹なら、一目散に部室へ向かって走っていったぞ?」


 なんと! パンダのことになると、本当に進行までも無視するんですから。三琴君には困ったものです。




「あー、幸せ」


 モデリング部部室にある作業スペース。そこに新たに作られた三琴君の作業用スペース。


 そこは、パンダ型のデスク、パンダがぶら下がっているライト、パンダがあしらわれたモデリング用の道具、ありとあらゆるものがパンダで埋め尽くされた、まさに異空間。

 トロけた表情で、パンダのぬいぐるみに頬ずりをしている三琴君の姿がそこに居ました。

 うわぁ……、この顔を写真に収めて、三琴君のファンに見せたら、一体、何人が彼に幻滅してしまうのでしょうねぇ。それくらい、三琴君のクールさが一切感じられません。


「何もかもがどうでもよくなりそう。パンダ天国ヘブンは此処にあったんだ。いや、パンダオアシスか。あぁー、パンダァ……」


 魔性のパンダの力で、三琴君がなんだかよく分からない単語を発し始めましたよ。

 パンダ恐るべし、三琴君、現実に帰ってきてくださいー。


「もう俺、ここに住むー」


 おぉっと、あんなに嫌いだったモデリング部に住むという、大胆発言が飛び出してきました。

 これでいいのか、主人公!


「これがパンダの魔力か、フッ、恐ろしいな」


 そんな光景を冷静に分析する先生。


「住むのは大いに結構だが、部活動はちゃんとしろよ。今日は放課後、ミーティングするからな」

「分かっていますってぇ。嗚呼、パンダ可愛いよ、パンダ」


 分かっているのかさえ曖昧な返事を聞いた後、亀山先生は、部室を出ていきました。

 さて、このパンダしか見えてない人、どうしましょうか?




【次回予告?】

三琴君、授業始まっちゃいますよ?

いいんですか?学生は勉学に勤しむべきと昔、おばあちゃんが言ってましたよ。

え?今、パンダに忙しいからってクラスに帰らない?

いやいや、それじゃダメですよ。

って、三琴君の足元が黒く……、

ま、まさか、パンダと同化する気じゃ、えっ、ちょっ、待ってください!

三琴くーーーーーーん!!!

えっと、三琴君が元に戻ることを祈りつつ、次号へ続きます。

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