第6工程 「そんな武器ごときで、クレポンが倒れるものか」

 モデリング部の部室の中にある司令室。サイレンが鳴ると、モデリング部の部員達はここに集められ、危機管理対策室から送られて来る襲来宇宙人に対する対策を練ります。

 そこへとやってくる、亀山先生ご一行。副部長を始め、残りの部員達はすでに集まっていました。


「さて、ミーティング始めっぞー」


 亀山先生は、三琴君の入っている袋をやや乱暴に下ろし、硬く結ばれていた結び目を強引に解きます。すると、半目で伸びている三琴君の表情を伺うことができました。


「山吹、いつまで伸びているんだ。起きろ」


 亀山先生が三琴君の頭を、なんと、足で踏みつけたー!

 とある界隈の方達にとっては、涎が出そうなくらいのご褒美ですね。


「痛ってぇ……」

「痛いことは生きているということだな。コレで一安心だな」

「何処が一安心ですか。あー、首が取れるかと思った」


 大丈夫ですよ、三琴君。もし首が取れたら、僕がくっつけてあげますよ、瞬間接着剤で。


「夏水、それは謹んで遠慮する。先生の方は、強引に連れ出すのは止めて下さい。俺の体がいくつあっても足りません」


 接着剤を持ってニッコリと笑う僕に嫌な顔で応対する三琴君。


「じゃあ、大人しく入部届けにサインすることだな」


 先生は、またまた入部届けを三琴君に突き出します。


「先生も懲りませんね」

「しつこさだけは、誰にも負けないのでね。さ、ミーティングするぞ。山吹は此処に居る限りは安全だからゆっくりと考えることだな。絶対に逃げようとは考えるなよ。此処を出ると危険だからな」


 先生は三琴君に釘を刺し、作戦会議へと入りました。


 この司令室は、学校に設置されているシェルターよりも強固な作りなのです。本丸に襲来されて潰されても困りますからねー。だから、先生の言うとおり、ここに居る限りは、死ぬってことは無いので、そこの所は安心してくださいね。ただし、外に出たら命の保障は出来かねますけど。


「チッ。分かったよ。居ればいいんだろ? 居れば」


 そういうことです。あ、どうせなら、作戦会議とか戦闘とか見学しませんか?


「え、なんで」


 三琴くんは訝しげに僕に問います。僕、こういうの見るの、とてもウズウズしちゃうんですよねー。


「それは、語り部の性っていう奴か?」


 それもあるかもしれないですけど、男として、熱い戦闘シーンとかワクワクしません?


「俺は別に?」


 三琴君って本当にクールですよねぇ。男の子は、友情・努力・勝利の3つの要素があれば、誰だってワクワクするって、授業で習いませんでした?


「どんな授業だよソレ。そんなに言うなら、夏水が1人だけで行けばいいだろ」


 ……え。そんな事言わないで、三琴君も一緒に行きましょうよ。僕は、主人公である、三琴君の活躍を逐一語らなければならないという使命があるのです。語り部として!


 それをさせてくれないのだなんて、僕に仕事をするなというのと一緒なのです。ここで、仕事をさせろ、と抗議の意味を込めて駄々をこねますよ。今から実演しましょうか?


「見ているコッチが恥ずかしくなりそうだから、止めておけ。分かったよ、見るだけだからな。戦闘には参加しないからな」


 はいはい、分かっていますって。それでは、レッツゴー!



「わざわざ、モデリング部が設置されているこの学校を直接攻めてくるとは。なかなか頭のキレる奴が相手方に居るみたいだな」


 司令室。設置された大画面モニターを見て、先生は口角を上げました。


 モニターには、茶山陣学園の校舎の様子が映し出されておりました。


 映像を見ると、ギラギラと輝く、半透明の人型っぽい物体が、何やら長い棒状のようなものを銃のように持っている様子。

 おっと、その棒状から、何やら光線が放たれ、命中したブロック塀が溶けちゃいましたねー。あれは、一体。


「高圧縮のレーザーだな。アレに当たったら、人間は一瞬でジュワって蒸発もんだ。というか、お前ら居たのか。もしかしたら、参加したくなったのか。歓迎だぞ?」


 いえ、僕と三琴君は見学なので悪しからず。それより、何やら高度な技術を持ち合わせいる襲来者さんですねぇ。僕達では敵いそうになさそうなんですが。


「奴らはクラップス星人というらしい。結構高度な文明を持っていて、その技術力で多数の威力の強い武器を製造。その武器で攻めてくるものだから、彼らにすでに侵略されている地域が海外では出ているらしいぞ」


 えぇ! そんなに強い襲来者なのですか。だ、大丈夫なんですか?

 僕の心配を余所に、先生はドヤ顔でこう答えます。


「そんな武器ごときで、クレポンが倒れるものか。これは、あいつ等の技術を遥かに上回るシロモノだ。それに、こっちには、造形のエキスパート達もいるからな」


 おー! 先生から凄い自信が溢れています。


 でも、戦うのって、モデリング部の生徒達ですよね?


「……。さて、そろそろ出撃するぞ。準備はいいか!」


 あ、今、目線を逸らしましたね。大人はキチンと発言に責任を持ってくださいね。

 それはともかく、そろそろ出撃のようです。


 今回、戦闘に参加するのは、楓原君・山菊さん・宮前兄の三人。

 この、三人という少人数で、果たして大丈夫なのでしょうか?


「一気に出撃すると、力が分散するだけだからな。時間差で残りのメンバーを投入するのさ」


 アタシの戦略は完璧なのさ、と先生は鼻高々にいいます。


「さぁ、出撃だ!」

 先生の合図で、ドン!と大砲が発射されたかのような轟音とともに、校舎へと、直径およそ2メートルのカプセル状のものが、5個投げ込まれます。

 クラップス星人はぞろぞろと集結し、カプセル状の物体を興味津々に取り囲みます。すると、その1つのカプセルが真っ二つに割れ、中から、萌え系の美少女が出てきたではありませんか。




【次回予告!】

カプセルからいきなり出てきた美少女。

その美しさと可愛さにクラップス星人は果たしてどんな態度を示すのか!?

そして、残りのカプセルからはどんなモノが登場するのかっ!

次回、もでりんぐ!!第7工程。刮目せよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る