第2工程 「うっせぇ、黙れパシリ」
私立茶山陣学園。茶山陣町にある、幼稚部から大学まである国内最大級の広さで有名な学校、三琴君が通う学校です。
茶山陣町で暮らす人たちはもちろん、寮も完備しているので、他県からの生徒も受け入れています。
三琴君の通う高等部には、どこの高校にもある普通科を初め、絵画専門第一美術科、造形専門第二美術科という変わった学科もあり、さらに、入学試験で高得点を叩き出した生徒や能力が著しく高い生徒のみが集まる特進SPクラスがあります。
美術科の生徒達の技術力は、全国的にとても高く、政府は彼らの技術の高さに目をつけ、この茶山陣学園にプロジェクトチームを送り込むことにしたのであります。
「よぉ、山吹。時間ギリギリに登校とは、お前にしては度胸あるじゃねぇか」
茶山陣学園の正門。ダッシュで登校する三琴君の前に、竹刀を持って口にはアタリメを加えた黒髪の女性が立ちはだかります。
あの姿は確か、第二美術科教師の
「亀山先生、
三琴君は、先生に睨むように見つめます。
「退けないって言ったら?」
亀山先生はそんな三琴君の睨みなんて屁とも思っていない様子で、ドヤ顔で三琴君を見ます。
おぉっと、こんなところで戦いの火蓋が切って落とされるのか!
「アタシに戦いを挑もうなんて百万年早いんだよ!」
先生は、三琴君の襟首を目にも留まらぬ早業で掴み、ズリズリと三琴君を学園の中へと引き摺りながら連れて行きます。
「ちょっ。何処へ連れて行く気ですか!」
三琴君は解放されたい一心で暴れますが、いくら暴れても襟首を掴んでいる先生の手はびくともしません。
「何処って、分かっているじゃないか。モデリング部だよ」
「まだ、俺は正式に入るとは言ってない!」
「何を言っている。期待のホープ君は強制入部が定説だろ?」
そんな亀山先生の表情は、ゲスここに極まれりな顔。
「そ、そんなの横暴だ!」
三琴君はそう叫んで、亀山先生と一緒に校舎の奥へと消えていきました。
さて、どうして三琴君がこんなことになったのか、語り部の僕としては説明しなければなりません。
三琴君は学園の中等部時代、美術部に所属しており、彫刻や粘土でオブジェを主に作っていたのです。その作品が県の作品展に出品されていたり、それはそれは、大変良い成績を叩き出していました。
そんな人材を、国が見過ごすわけがありません。
三琴君が高等部に入学して直ぐ、プロジェクトチームが総動員で、三琴君のスカウトにかかりましたが、三琴君はことごとくそのスカウトを断ります。
そんなスカウトを断り続けたある日、先ほどの亀山先生が三琴君をモデリング部へと勧誘したのです。別名、拉致と言う名の勧誘ですが。
そして、仮入部という形で、亀山先生が三琴君に用事がある時だけ彼を強引に連れて行く、という生活が始まったのでありました。
高等部にある隠し通路を通ると見えてくる地下施設。そこはモデリング部と政府のプロジェクトチームが管理している、秘密施設なのであーる。
ぶっちゃけ、モデリング部の部室なんですけどね。
ここには、茶山陣学園の精鋭達が集まっているのであります。
「おーい。皆の衆、山吹連れてきたぞー」
部室の扉が勢いよく開き、三琴君を引き摺ったまま亀山先生が入ってきます。
「あ、来た来た」
「来た来たね」
部室のど真ん中にある机に仲良く座っている顔の良く似た二人が、ケラケラと笑いながら、三琴君を指差します。
この二人の名前は、
双子の兄である桔梗君は普通科、花梨さんは第二美術科所属で、いつもは個々に勉学に励んでいますが、モデリング部の時は二人で結託して、ここぞとばかり暴れまわるのが趣味な悪ガ……、失礼、遊び盛りの兄妹さんです。
「先生、毎回強引過ぎるんですよ。だから山吹君も嫌がるのです」
「うっせぇ、黙れパシリ」
「ヒィッ」
先生にドスの効いた声を聞かされて、震え上がっているのは、モデリング部の部長で第二美術科首席という、頭の良さで有名な、
頭の良さは誇れるところなんですが、悲しき運命かな、亀山先生のパシリとして良い様に使われているのです。なので、部長の威厳が全くありません。
そう、全く。
「お茶美味しいねぇ」
「じゃあ、茶菓子程度の私の萌え話聞いちゃう?」
そんな震え上がっている部長を余所に、お茶を飲みながらホッコリしている二人が、
清流君は第二美術科の次席で、楓原君とはライバル関係にあるかと思いきや、清流君曰く、『テストの点数が離れすぎているから、競うにしても無理』とのことで、楓原君と清流君は大が付くほどの仲良しさん。二人で良くラーメンを食べに行く仲だそうです。
そんな仲良しな二人を邪な目で見ているのが、山菊さん。第一美術科の首席で著名なコンペにも多数出品していて、賞を総なめしているとメディアでも有名なんですが、彼女は俗に言う“腐女子”さんで、第二美術科三年生の仲良しコンビを妄想の餌食にしていることが多く、いつも二人の絡みをニヤニヤと見つめています。
「そこの語り部さんとルーキー君の掛け合いも妄想してもいいんだよ?」
そうニッコリと笑う彼女に僕は血の気が引いていくのが分かります。
いや、僕、唯の平凡な語り部ですし、そういうのは是非とも遠慮したいと思いますが。
「あら、それは残念。でも、勝手に妄想しておくからね」
ヒィッ。や、止めてください。
気を取り直して、これでモデリング部全員集合というところですかね?
「ちょっとまった! 俺を忘れちゃ困るぜ!」
【次回予告!】
僕の語りの間を割り込む謎の男。
え、こんな人居たっけ? 台本には何も書いてないぞ!
一体、この男の正体とはっ!
次回、もでりんぐ!!第三工程をお楽しみにっ!
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