第1部 その名もモデリング部!?
第1工程 「それは随分と忙しいんだな」
地球外生命体。通称、宇宙人が地球侵略をしてくるなんて映画や小説などのフィクションだと思っていたのは今や昔……。僕たちの住んでいる地球は、今となっては宇宙人たちの格好の標的となっているのであります。
嗚呼、昔は良かった。対宇宙人防衛法案なんて議員が議会に提出しようものなら、メディアが珍しがって取材してテレビで面白可笑しく放送していたものでした。
だが、しぃかぁしぃ! 現代では、対地球外生命の防衛問題が世界の重要課題となっていて、欧州各国では数千兆という莫大な予算まで決められていたりしちゃうのです。それほど、宇宙人による侵略の魔の手がそこまで迫りつつあります。日本も防衛策を講じることが急務となっています。
というか、ぶっちゃけ攻めて来ちゃった! 防衛法案が議会を通る前に攻めてくるなんて早すぎるだろうコノヤロウという、良くあるようなダメ展開。
あまりにも展開が速すぎて、焦った政府は急いで対策室を設置し、攻められている地域に自衛隊を派遣しましたが、宇宙人の攻撃がこれまた強い。結構な被害が出ちゃって、それにより政府への不平不満がドンドン積もってしまい、さぁ大変。
そんなブーイングを浴びる中、政府が打ち出した苦肉の策が、自動兵器を考案してそれで宇宙人に挑んでいくというものでした。
そして、その自動兵器として選ばれたのが、なんと粘土! コレには、何処かのお偉いさんがノリで『粘土で戦えばいいんじゃね?』と言った策が採用されたという噂ですが、真相は分かりません。
でも深くは考えてはいけません。でないと、この物語が全く進まないので。ツッコミをしたら負けなのです!
政府は、すぐに全国の粘土業者に製作を依頼しました。無理難題なこの依頼に名乗りを上げた粘土業者はたった一社。
そんな難問に立候補した粘土業者は、なんと一ヶ月というスピードで対宇宙人用モデリング粘土兵器【
このクレポン。凄いところは、付属のリモコン一つでどんな動きでも製作者の思い通りに動かせること。あと、粘土なので、好きなサイズで作れることが出来ちゃうスグレモノ。
その気になれば、口から光線だって発射出来ちゃうのです。
その気になればね。
そんなクレポンで大量に兵器を作り、いざ宇宙人との戦いに挑んでは見たものの、突貫工事で作った雑な作りのものでは、とてもじゃないけど太刀打ち出来なかったのです。
実はこのクレポン、造形が丁寧で綺麗なほど動きが軽く、強さが格段にアップするという専らの噂。
しかし、その噂が本当かどうかを、政府が業者に問い合わせることは出来ませんでした。
なぜならば! クレポンの生みの親である科学者の突然の失踪。一体、どうしてこうなってしまったのか、真相は闇の中だったりするのであります。
技術者が失踪して、真偽が分からないこの噂を実証するべく、とあるプロジェクトが発足されたのでありました。
そのプロジェクトの実行に抜擢されたのが、
茶山陣町とは、西日本の何処かの県にある、住民規模は中の下ほどの長閑な町。昔は海だったところを干拓し、町として形成。町の中に大きい紡績工場があって、それにより茶山陣町は発展していきました。
名物は鬼。その鬼を観光の目玉として鍋物とかまんじゅうとか作っています。
この物語はそんな茶山陣町が舞台なのである!
そして、この物語の主人公というのが……、
「おい」
おやぁ? 噂をすれば何とやらですね。ダークブラウンのサラサラ髪をポニーテールで纏めるという、男子学生に有るまじき校則違反を平然とやってのける君は、もしかして我らが主人公、
今日も、着て一ヶ月も経っていない茶山陣学園高等部の男子制服が輝いて見えますねぇ。時間的に今は学校へ向かっている途中というところですかね。
いやはや、学校指定鞄をリュックサックのように肩にかけて歩いているなんて、本当にいまどきの高校生そのものですよねぇ。羨ましい限りです。
「俺についてはどうでもいいだろ? それと、前置きというか説明が長すぎる。なんだよ『地球外生命体。通称、宇宙人が地球侵略をしてくるなんて映画や小説などのフィクションだと思っていたのは今や昔』って、どんな書き出しから始まっているんだと問いただしてやりたい気分だ」
うんうん、そこは同感でありますが、如何せん、そう書かれているので仕方ないのです。はい。僕にはどうすることも出来ませんので、そこはご了承ください。
「まぁ、前書きがこういう仕様ということにしておいてだ、いちいち説明してくるお前は誰だよ?」
おー、そこにツッコミをしちゃいますかー、流石です、三琴君!
ご説明が遅れましたが、僕の名前は
「ほぅ。それは随分と忙しいんだな」
歳はぁ、三琴っちと同じでピチピチの高校一年生でぇす。チャームポイントは黒ぶち眼鏡と無造作な黒髪でぇす。以後よろしこ!
という設定らしいので、以後お見知りおきを……。
『ドサッ』
嗚呼、僕の何気ない一言で三琴君が道に倒れてしまわれました。語り部の性分として、この状況は実況しないといけないじゃないですか!
ではさっそく……、
「いや、いい。実況しなくていいから。どうしても実況しないといけないというのなら、お前、夏水の自己紹介のカオス具合でこけたとだけ言えばいいから」
そう言って三琴君はゆっくりと起き上がって立ち上がり、ズボンの汚れを叩きます。
僕の役回りをちゃんと認識して頂いてありがとうございます。しかも、僕の名前も早速おぼえてくれたようで、感動のあまり涙がでます。
「泣かなくていい。寧ろ迷惑だから泣くな。夏水も高校生なら学校に行かなくていいのか? あと今気づいたのだが、俺とお前の間を隔てているこの線は一体なんだ?」
三琴君は、僕の前にある赤い点線を指差します。
さて、三琴君の質問にお答えしますと、僕は所詮語り部ですから、高校生活がどうだとか僕の私情は気になさらないで下さい。僕の私情まで語ってしまうと、唯でさえ設定をあまり考えない作者の頭がパンクしてしまいます。湯気が出てしまうくらいに。
言っておきますが、作者のことが別に嫌いなわけじゃありませんよ。少ない脳細胞をフルに活用してこの話を書いている作者には感服します。
「そこまで聞いて理解した。夏水、お前作者が嫌いだろ」
そこら辺のツッコミは置いておきまして、僕と三琴君の間を隔てている線はですね。説明するのが難しいのですが、簡単に言いますと、モニターの外と中の境界線と言っておきましょうか?
語り部と登場人物の双方は、この線から互いに干渉することが出来ないんですよ。言わば、二次元のキャラクター自ら、モニターの外へと出ることは出来ないし、三次元から二次元に入ることが出来ないのと同じ原理です。
「ふぅん。ま、俺は二次元に興味がないからイマイチ実感できないけどな」
実感できないのでしたら、体験してみます? さぁ、三琴君。僕の胸に向かって飛び込んできてください。受け止めて見せますので。
まぁ、飛び込んで来られるものなら、なんですけどね。
「体験したいのは山々なのだが……おっと、こんな時間か。俺は学校に急ぐから、ここらでさらばだ!」
両手を広げる僕のことは無視をして、三琴君は時計を見ました。どうやら時間に追われているらしいですね、三琴君は僕に別れを告げて、ご自身のポニーテールを揺らしながら学校へ向けて走り去ってしまいました。
【次回予告!】
いよいよ、舞台は、三琴君が通う茶山陣学園高等部へ――。
遅刻ギリギリに校門へ入る三琴君へと迫りくる黒い影。
その影とは一体……。
次回、もでりんぐ!!第2工程をお楽しみにっ!
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