第41工程 「カモはっけーん」

「ところで、クラップス星人の本陣の場所はもちろん分かっているんだろうな?」


 いえ、分からないですよ。


「……また、転ばせるつもりかな?」


 み、三琴くん、突き刺さるような笑顔が怖いです。話は最後まで聞いてください。

 本陣の場所は分からないですが、簡単に本陣にたどり着ける方法なら知っています。


「ほう? その方法というと?」


 はい、クラップス星人は携帯端末の様な転送装置を持っています。それを奪って操作すれば、本陣に乗り込むことが出来るはずです。


「その端末をあの鬼のような作戦実行中に奪うっていう寸法か?」


 さっすが、三琴君! 察してくれるのが早いですね。題して、陽動している間に身包み剥がしちゃえ☆作戦です。


「え、えげつねぇ……」


 ノンノン。奴らがやっていることと比べたらこんなこと小さいことですよ。些細なことを気にしたら負けなのです。


「なんか言いくるめられているような気がするが、そろそろ時間だから行くぞ」


 はい。そうですね。

 僕たちは教室の扉をゆっくりと開け、キョロキョロと周囲を見回します。

 敵は居ないようですね。一気に走り抜けましょう。


「そうだな」


 僕と三琴君は互いに目を合わせ頷き、校舎の出入り口まで走り抜けます。

 ちらっと外の様子を伺ってみると、そろそろ敵サイドのクレポンの強さが衰えてきているのか、軍の方にも圧されているのが目で確認できました。

 さぁ、僕たちの反撃と行こうではありませんか!


「途端に元気になったな」


 それはそうですとも、やっぱりこういう物語には挫折を味わい、形勢逆転をもぎ取るというのがセオリーですよ。


「確かに。そういう話がアツいのは分かるが、やってるこっちの身としては凄くしんどい事この上ないぞ」


 それは確かにそうかもしれませんが、終わった後の達成感は半端ないですし、頑張りましょう。

 三琴君を励ましつつ、僕らは出入り口前へと到着しました。

 再び辺りを確認しますが、今すぐ飛び掛ってきそうな人影はありませんね。


「夏水、準備はいいか?」


 その“準備”というのは、ここから飛び出す準備のことですか? それとも、実況をする準備のことですか?


「……あのなぁ?」


 三琴君は困惑気味にため息をつきます。

 フフフ。最後の戦いになるかもしれないんですから、たまにはふざけさせて下さいよ。無論、両方とも準備は万全ですが。


「では、行くぞ!」


 校舎を意気揚々と飛び出した三琴君と僕。


 すると、その時でした。

 空から無数の飛来物がやって来るではありませんか。


「な、なんだ? クラップス星人の増援か!」


 三琴君はビックリして走り出した足を止め、空を見上げます。

 地面をベチャベチャと音を立てながら落下していく無数の物体。それは、ショッキングな程色とりどりなスライムみたいな物体でした。

 目はあちこちに散らばっており、虚ろな感じでキョロキョロと周囲を見回しており、見るだけで背中からゾワゾワと変な感じがします。


「クラップス星人だけでも大変だって言うのに、こんな時に限って、別の星からの襲来者か!?」


 ……三琴君。多分、この物体味方だと思いますよ。


「いや、おかしいだろ。こんな見た目危険な物体が味方な訳……あ」


 三琴君も理解して頂いたみたいですが、恐らく塩原君作成のクレポンですよ、コレ。

 正直、塩原君は造形に向いてないタイプとは聞いていましたが、コレほどまでの酷さとは予想していませんでしたねぇ。

 戦隊モノのカラーリングっぽいので、アメーバ戦隊アメバンとでも名付けましょうか?


「呑気に名付けている場合か。どうするんだよ」


 呑気に語りだす僕を三琴君がツッコみます。

 幸いにも奴らはアメバンの襲来に驚いてたじろいでいるみたいですし、アメバンの間を掻い潜って簡単に潰せそうなカモを探しましょう。


「カモって、まぁいいか。それにしても、あのウネウネした物体の間を通るのか? すげぇ、通りたくねぇ……」


 三琴君今頃になって何を言っているんですか、背に腹はかえられませんよ。さぁ、走り抜けますよ?


「うげぇ……、分かったよ」


 観念した三琴君は再び走り抜けます。アメバンの横を通る際、どうやらアメバンの一部を踏んでしまったらしく、グニュという鈍い音が響きました。


「わぁ……踏んでしまった……。というか、数が多すぎるんだよ、数が!」


 そう愚痴を零す三琴君。仕方ないですって、久々に頼られたのが嬉しくて恐らく塩原君なりの本気を出してしまったのだと思います。


「いやな本気を出さないで欲しい」


 ま、まぁ、お陰で敵も混乱していますし、そのままアメバンにはスケープゴートになって貰って、僕たちはこの場を走り抜けましょう。


「そうだな。お?」


 三琴君は何かを見つけたらしく、一目散に向かっていきます。僕もそれについていってみると、そこには気絶して伸びているクラップス星人の姿が。


「カモはっけーん」


 ですね。起きないうちに身包みを剥ぎましょうか。

 僕は慎重に気絶しているクラップス星人の体を調べ、端末を探します。


「こう見ていると、セクハラしているみたいだな」


 せ、セクハラとか不純ですよ、そんな事僕は出来ません。あ、あった。

 僕は端末を取り上げます。正真正銘、あの性悪女が使っていた端末と同タイプのもの。

 これで、敵の本陣へ瞬時に移動できますよ、三琴君。


「では、乗り込むか。というか、クラップス星人の端末だろ? 書いてある事分かるのかよ」


 あ、確かに。分からなかったら、何処を触ればいいのかも分かりませんよね。

 下手に触ったら自爆装置を作動させちゃっても困りますし、

 念のため、僕は端末の電源を入れて確認してみることにしました。すると……、あれ?


「どうした?」


 三琴君、コレ、僕にでも分かりますよ。ホラ。

 僕は三琴君に電源をいれて表示された画面を見せます。


「本当だ。コレ、英文を逆さまに並べただけだ」


 その画面には、英単語がアベコベに並べられた文字列が広がっているのでした。

 偶然の一致か、それとも……。


「考察なんて後だ。兎に角早く行かないと、いくら奴らでもそろそろ気づく頃だぞ」


 そ、そうでした。えーっと、転送する方法はココとココですかね。

 僕がたどたどしく端末を操作すると、校庭から何やら機械的なものが並ぶ場所へと早変わりしたのでありました。


「こ、ここがクラップス星人の本陣か?」


 端末が示したとおりだと、ここです。静かに進んでみましょう、三琴君。


「お、おう」


 少し姿勢を屈めて僕らは進みます。

 機械ばかり並べられている通路。本当に近未来に来たような感じがしますね。

 そんな事を考えながら僕らは進んでいると、


「貴方たち! なんで生きているの!?」


 なんと、通路で鉢合わせしたのは、あの性悪女じゃありませんか!



【次回予告】

いよいよ本陣に潜入した僕たち。

そんな時に限って遭遇したのは例の性悪女でした。

さて、これから始まるは三琴君と僕の頭脳を使っての戦闘。

一体どんな技が繰り出すのか!?

次回をおったのしみー。

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