第23工程 サインの練習をしなきゃいけないような気になってきました。
さぁ、始まりましたー! テスト第2ラウンド!
三琴君のクラスの教科は英語ですねぇ。さぁ、どんなドラマが待ち受けているのか。
「テストだから、ドラマがあっても静かだと思うよ」
「テストもいいけど、こっちも大事だと思うよー」
おっと、先輩方のツッコミが出てきましたねぇ。ありがとうございます。
そうですね、謎の物体の追跡もしていたのでした。僕ってばうっかりさんですねー。
「どうやら、夏水君が三琴君の様子をみている間に、相手方が校舎に侵入しちゃったみたいだよ。ほら」
副部長さんがとあるモニターを指さします。そのモニターの周りを飛んでいる妖精さんの背中が真っ赤になっています。
このモニターに映っているのは、理科室あたりですかね? それにしても、校舎に侵入されても大騒ぎしていないところがある意味奇跡的ですよねぇ。
「それだけ、皆、テストに必死ってことじゃないかなぁ? 茶山陣学園って結構成績重視っていうところがあるし。特Sクラスが典型的な例だけど」
副部長は監視カメラの切り替えボタンをカチカチと押しながら答えます。なるほど、そういう考え方もあるかもしれません。
それにしても、この謎の物体、一体目的はなんなんでしょうねぇ? 今のところ、何も攻撃するわけでもないですし。
「敵地視察とかじゃないかなぁ? 前例もあったりするし」
「もしかして、聖地巡礼だったりして」
副部長がいたって真面目な回答をしている中、山菊先輩はとんだ変化球を投げ込んできました。
聖地巡礼って、あの、アニメ・ゲームの舞台や背景等になったっていう場所を探して巡るっていう、オタクにはたまらないやつですか?
「そうそう、それだよ」
え、茶山陣学園って何かの舞台になったことあるんですか?
「私も知らないよー。でも、相手は宇宙人でしょ? 宇宙にはココを舞台にしている漫画とかあるんじゃないかなぁーって思って」
まぁ確かに、宇宙は広いですから、ココを舞台にした話は一つや二つくらいは出てきそうですねぇ。
……ハッ。もしかして、その話に語り部の僕も出ている可能性も。どうしよう、サインの練習をしなきゃいけないような気になってきました。
「私も、モデル並みに可愛いポーズをする練習をしなきゃ」
「お二人さーん。謎の物体が放送室に入ろうとしているよー、現実へ戻ってきてー」
副部長さんが僕と山菊先輩の二人を現実へと引き戻します。
現実へとかえった僕は、放送室付近が映ったモニターを注視します。あ、本当ですね。放送室の扉が勝手に開かれました。ど、どうしましょう。
「乗り込んじゃう?」
山菊先輩がノリノリで僕に言ってきます。
の、乗り込むのは流石に危険じゃないですかね? 三琴君にも相手を刺激させるような行動は慎めといわれていますし、それに、僕は最終手段のサイレンのスイッチ担当ですし。
「そうだね、行動は慎重にしないといけないよねぇ。でも……」
副部長さんは、首傾げます。
「放送室で何をするつもりなんだろう?」
「放送室で侵入者がすることって言えば、一つしかないじゃない!」
山菊先輩が得意げに言います。
「この学校は我々が乗っ取ったー、的なやつだよ」
ハイジャックならぬ、スクールジャックですか!? そんな事が起きてしまったら、一大事ですよ。
そんな事が起こってしまっては僕のモニタリング実況が破綻してしまいます。急いで、放送室の様子を……。
あれ? 放送室を映す監視カメラって無いんですか? どのボタンを切り替えても映らないんですけども。
「あー、放送室の監視カメラは確か故障していたんじゃないかなぁ? 特に緊急性が無いからって1年くらい放置されていたはず」
緊急性があるじゃないですかー! 今、とっても緊急性がありますよー。
これは、もしかすると、もしかするんじゃないですかー!
「放送室に……」
「殴りこみだね。嗚呼、殴りこむのが何処かの組の事務所で、ソコに乗り込む、若頭とその手下とかいうシチュがいいんだけどなぁ」
山菊先輩が悦に浸っていますね。そんなことより、放送室見に行ってみますか?
「そうだね。あ、そういえば、山吹君は今、英語のテスト中だったよね」
はい、そうですよ? それがどうしましたか?
「もしかしてさ、テスト問題にリスニング問題ってある?」
リスニング問題ですか? ちょっと待って下さい。探しますので……。
あ、ありました、リスニング問題。8問ほど出題されてますね。
「なら、ちょっと急いで放送室へ行ったほうがいいかもしれないね。茶山陣学園のテストでリスニング問題は、テスト開始からちょうど30分後に出題される。これは、各学年共通なんだけど、今、謎の物体が放送室を入ったということは、マイクとかの放送機材をいじられたらちょっとヤバイ状況になっちゃうかもね」
謎の声とか入ったらそれこそ学園が大騒ぎじゃないですか。現在、テストが始まって20分経過してますね。あと10分でリスニング問題の放送が始まってしまいます。
急ぎましょう。僕のモニタリング実況の未来のために。
でも、謎の物体に見つかった場合はどうしましょう?
「万が一のために、私のクレポンを持っていくよ。プラモデルサイズの可愛いロボちゃんを」
山菊先輩はそういって、作業部屋へと取りに行ってしまわれました。頼もしいですよ、お二人とも。
それでは、いざ行かん。放送室へ。
【次回予告】
僕は確かボタンを押す役割のはずなのに、どうしてこういうことになったのでしょうか?
細かいことは考えるなって? そんなの無茶に決まっているじゃないですか。僕はこう見えても繊細なんですよ!
それはともかく、放送室に向かう、僕ら三人に待ち受けるものとは。
次回もでりんぐ!!第24工程。お楽しみにー
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