第3部 テストクライシス!?もう頭いっぱい

第20工程 『俺、今から、警報が鳴るように祈っておこうかなぁ? 宇宙人様~ってね』

 さぁさぁ、学生の重大イベントである、テスト期間が始まりましたよー!

 皆さん、各々の頭脳を再結集させて頑張ってください!

 いえーい! テスト万歳!


「朝からテンション高いな」


 お、三琴君、おはようございます。今日から衣替え期間ですか? ブレザーから学園指定のニットカーディガンに変わっているみたいですが。水色と紺色のコントラストが綺麗ですねー。


 テンションが高いと仰っていましたが、そりゃ、テストですよ。皆さんがうんうんと唸っている姿を実況するのが楽しみで楽しみで。


「言っておくが、テスト中に喋ると、みんなの反感を買うぞ」


 三琴君の言葉に僕の全身に電気が走ります。

 そ、そうだったー!


「いや、普通に考えれば分かることだろ」


 確かに。嗚呼、僕は語り部の使命を全うしようとする余り、世間の常識まで疎かになってしまったというのか!

 三琴君、僕は、僕は、一体どうすればいいのでしょうか!


「普通に黙っていればいいんじゃないか?」


 つまり、僕に死ねというわけですか。


「どうしてそうなる」


 僕が喋らなくなる、それは語り部が必要ないって言うことじゃないですか。つまり、僕は、仕事を干されてしまい、最終的に、あの輝かしかった思い出に包まれて餓死してしまうということですよ!


「だーかーら、話が飛躍し過ぎだ。何処か別室でモニタリング実況すればいいんじゃないか?」


 三琴君……。君っていう人は、


「あ、ゴメン。変なことを言ったなら謝る」


 グッドアイディアじゃないですか! なんですか、三琴君は天才なんですか。別室でモニタリング実況だなんて、誰にも反感を買われないから素敵じゃないですか!

 もう、アイディアの師匠と呼ばせてください! 三琴師匠!


「それはなんか嫌だ」


 えー、ノリが悪いですねぇ。こういう時は、素直にノッておけば幸せになりますよ。


「そんな幸せの掴み方はやりたくない」


 ちぇっ。



『テストなんてダルイよなぁ』

『そうだよなぁ。こういう日こそ、襲来警報鳴って欲しいよな』

『だよな。そしたら、今日のテスト潰れるし』

『それな。しかも、俺達はシェルターでぬくぬくとしておけばいいんだし』

『俺、今から、警報が鳴るように祈っておこうかなぁ? 宇宙人様~ってね』

『あ、俺も』



 おやぁ? 僕達の近くを歩いている男子高校生が、何やら穏便じゃない話をしているみたいですねぇ。


 そこの方。もし、警報が鳴ったら、夏休みが下手すると少なくなるのかもしれないのですよー。そこに気づいてください。


「放っておけ。あんなことを言う奴に何を言っても無駄だよ」


 でも、三琴君。彼らが言っていることは、ちょっと僕でもカチンをきますよ。


「注意しても後々面倒だから、放置だ放置。それに、あーいう奴らこそ、襲撃されたときに泣きを見るって相場が決まっているのだよ」


 三琴君は、自信たっぷりのドヤ顔で弁説します。

 あー、なるほど。三琴君はそこら辺の事情にも詳しいのですね。勉強になります。だから、師匠と……、


「呼ぶなよ、絶対に」


 まだ引っかかりませんか、ぐぬぬ。どうしたら、三琴君をその気にさせることが出来るのでしょうか?

 パンダグッズをあげたら簡単に釣られそうな気もしますが。


「……それは否定しない」


 あはは、そこは否定して欲しかったですねぇー。


 そんなことより、今日からテストですけど、手ごたえのほどは如何ですか?


「こういうものって、日頃の成果を発揮すればいいんじゃないか?」


 三琴君、気づいてないかもしれませんが、その発言は秀才しか言ってはいけない台詞なのですよ。普通の人は決して口にはしません。


「あー、だから、渉のやつも、テスト毎に泣きながら俺のことをポカポカ殴っていたのか。馬鹿馬鹿言いながら……」


 こんなハイスペック人間に言われたら、そりゃ渉少年も泣いてしまうでしょうねぇ。僕も多分聞かされたら泣いてしまうでしょう、絶対。


「いやいや、夏水は普通じゃないだろ?」


 え? 僕は何処からどうみても普通じゃないですか。何処が普通じゃないというんですか。


「その、あれだ。


 ガーン。僕が必死に普通だということを説明しているというのに、ソレが逆に仇となっていただなんて! 不覚です。

 でも、普通な人なんですよ。


「怪しいなぁ……」


 ううっ、三琴君から刺さる疑惑の視線が痛いです。

 まぁまぁ、僕のことなんてお気になさらず、宇宙人に襲来されない内に、テストを乗り切ってくださいね。


「そうだなぁー……ん?」


 そろそろ校門にたどり着きそうなその時、三琴君は校門の方をじっと見ます。

 まさか、また、亀山先生が仁王立ちしていますか?


「いや、アレを見ろ」


 ん? どれのことを言っていますか?

 僕がキョロキョロを見回しますが、三琴君がどのことを言っているのか、わかりません。


「アレだ、アレ」


 三琴君は校門の入り口辺りを指差します。

 その箇所だけ、何故か背景が虫眼鏡で見たかのように、ぼやけているではありませんか! まるで、何かが擬態や光学迷彩で隠れているかのようですね。


 三琴君、アレは……、


「あぁ、今日のテストは中止かもしれないな。とりあえず、見知らぬフリをして校門に入るぞ」


 はい、そうしましょう。

 僕達は空間が歪んで揺れる物体を見て見ぬフリをして、校舎へと入り、急いで、亀山先生のもとへと報告しに行くのでありました。




【次回予告】

突如学園の校門に現れた謎の物体。

一体正体は何者なのか、そして、その目的とは。

三琴君は無事、テストを受けることが出来るのか。

次回、もでりんぐ!!第21工程。

貴方はこの出来事の証言者となる。

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